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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第10章 俺の後輩は死にたがり
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俺の後輩は死にたがり 14話

※100日チャレンジ35日目

ぐるる……


腹が減った。あんなにグロッキーになるまで食ったのに人というのは腹が減るのが早い。


駒ヶ根市と言えばソースカツ丼と呼ばれているのだけれどどこがおいしいのだろうか?


そんなこんなで俺たちは少しだけ辺りの場所を調べていた。


「んー、有名人が来る頻度だと明治亭ってとこかな?信州サーモンとか馬刺しもあるっぽいし。」


口コミをみると明治亭が圧倒的に人気である。

写真を見ると有名人のサインも沢山あるのでそれだけでも信用性が高いように思えた。


「いや!先輩……ガロにしましょ!」

「ガロ〜?」


調べるとここから近くにもう1つ人気のソースカツ丼のお店があった。

こちらのお店の特徴としては……巨大ロースカツが4枚も乗っていたのだ。


「いや!お前なー、さっきフードファイトして負けたばっかだろうが。こちとら2000kcalの3分の2は食ったんだぞ!」

「イ……イヤダナーナンノコトダロー?」

「おい、ちゃんと目を見ていえ!アホ御坂!」

「あー!先輩私の事アホだっていった!」


確かにこのお店のソースカツ丼も美味そうだけど……正直食が細い御坂には相性が悪いように見える。


何より恐ろしいのは御坂は食が実は細いという事実を認識してないのがタチが悪い。


「先輩!提案があります。」

「だが断る。」

「早い!早いですって!」

「だって明治亭の方が絶対いいだろうが……馬刺し食いたいんじゃなかったのかー?」


すると、フェイスカバーの変態は両手を握りプルプルとしていた。

よっぽど聞き入れてくれないのが気に食わないのだろう。


「先輩、あっち向いてホイしましょ。」

「あ?あっち向いてホイ?」

「はい、勝負は1回だけの真っ向勝負です!私強いんですよ、いつも鏡でイメージトレーニングしてますから。」

「いや、それ意味あるのか?対人ゲーだぞ?」

「ふっふっふ……舐めてもらっちゃあ困りますよ。じゃあ行きますよ。」

「妙に自信ありげだな。」


というか、家で鏡とあっち向いてホイする御坂ってなんて闇の深い絵面なんでしょう。

妙に哀愁が漂っている。


「やりましょう、先輩。」

「しゃーない、1回きりなー。」


「「じゃんけんぽん!」」


龍:グー

御坂:チョキ


「あっち向いて、ホイ」


龍:右

御坂:右


「おつかれ、明治亭な〜。」

「あーん!先輩、なんでそんな強いんですかー!」

「しがみつくな、暑い、でかい、そして力が無駄に強い。」

「やだ〜、ガロでデカカツ丼食べたかったー。」

「てか、なんでそんなでかいものにこだわるんだよ。食えないのに。」

「え、でかい方が……なんか見栄え良くないですか?」


アホだ。

結局、俺たちは明治亭に行くことにした。


☆☆


カララン。


「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

「2人です。」

「かしこまりました!今大変混みあってますので少々待ちます!」


さすが明治亭、かなり人気店なので2組待ちの繁盛具合であった。

車も駐車場が停められるかわからないくらいにぎっしりと停めてある。


お店の中は和を基調とした昔ながらの食堂である。

所々に畳が敷かれていたりと個人的に好きな空間だった。


御坂はずっと不服そうなかんじだった。

どんだけあっち向いてホイ負けたことがショックなんだよ。


しばらくして俺達は席に案内される。

真夏だと言うのに厚着のフェイスカバーの変態をみるので少し視線が気になったがもう俺たちは慣れきっていた。


そして、比較的日光が少ない座席に座りメニューを出される。


もちろんカツ丼を頼むのだけれど、馬刺しと信州サーモンの刺身もお願いした。

なんという信州のフルコース……考えるだけでヨダレが出そうだ。


「すみません、カツ丼は大盛りでお願いします。」

「かしこまりました。」


御坂はとにかくおなかいっぱい食べたいようだった。

こいつ、とにかく沢山食べるな。


「なあ御坂よ。なんでそんなに食べたがるんだ?」


ずっと疑問だった。

明らかにこいつの頼みすぎには少々問題さえ感じる。

無駄があったらSDGs(持続可能な社会)についてしっかりと教える必要があるかもしれない。


「……私、体力が無いのをこの旅で知りました。食が細いから蓄えられるカロリーにも限界があるし、このままだと先輩に迷惑かけるのかなと思ってちょっと挑戦してるんです。」


意外だった、まさか俺のためだったとは。

御坂はかなり弱い。

実際明治亭まで15分ほどかけて歩いたがぜえぜえ行ってたし、ヘブンズ園原の時もたまに休んでいた。

俺は気にしなかったけど迷惑をかけたと劣等感を感じていたためカロリーを蓄えれば良いと考えたのかもしれない。


「あはははは!バカだな〜ほんと。」

「あーっ!もう、アホとかバカとか……先輩口悪すぎです。」

「すまんな、不良だもんで。だけどよ……飯くらい楽しく食おうぜ?俺は無理してるお前よりもありのままのお前が好きだぜ?」

「せ……先輩……。そうですね、ありがとうございます。せっかくの人気店なんですし、私も楽しみます。」


フェイスカバーの変態はそう言うとフェイスカバーを外し、中から純白の女神が現れた。

周りのフェイスカバーの変態を見る目から一気に美人を見る目に変わる。


「綺麗だわ……。」

「なあ、すげー美人いるぞ。」


しまった、これはこれで注目を浴びるのか。

なんとも生きづらいやつだろう。

そう思うと、やっとカツ丼と刺身、馬刺しが届いた。


カツ丼は丼ぶりを覆うほどの巨大なロースカツを使っており、米は長野県産の米をつかっている。

粒がしっかり炊かれていて甘みが最大限に引き出されていた。

肉はジューシーに仕上がり酸味と旨味のあるソースが見事に絡んでいて、ソースカツ丼と言えど隠されたこだわりがあり人気店である理由が簡単にわかった。


「んー!先輩、美味いですよこれ!」

「ああ、美味い!」


あっという間にカツ丼をたいらげそうだったので箸休めに馬刺しと信州サーモンの刺身にも口を入れる。


馬刺しは下準備がしっかりとされていて肉質は柔らかく、しょうがと醤油が馬肉の臭みをけして口の中でとろけた。


信州サーモンもサーモンとは違い塩気は少ないのだが上質な脂でとろけるようだった。


どの料理も負のつけ所がないほどのクオリティで俺たちは美味しさのあまり悶えていた。


俺たちのくだらない喧嘩はこれにて終焉を迎える。


「そういえば先輩……信州サーモンってなんなんでしょうね?」

「確かに……なんなんだろうな?」


言われてみると、確かにちょっと不明点が多い。

サーモンとは言ってるものの味そのものが違う。

調べてみると、ニジマスとブラウントラウトを掛け合わせた品種らしい。


要は……マスってことか。

どうやら外来種のブラウントラウトを商業化するように努力した結果こういうブランドが出来たようだった。


こうやって土地や特有の品種に触れるのも悪くない。

いつかなおっちと長野県きたらその話もしてやろう。


そうしていくとあっさりと全ての料理を食べ終わり、俺たちは満足して明治亭を後にした。


再び俺たちは駒ヶ根駅に戻り、次の出発に備える。


次の目的地は諏訪。

巨大な湖があり、神社や山々を祀る神秘と生活が共存する土地である。


暑さに耐えると列車がやっとの事で到着し、俺たちは再び座席に座る。


列車は北へ北へと進んでいく、レールから一定のリズムを刻みながら、ゆっくりゆっくりと。

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