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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第10章 俺の後輩は死にたがり
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俺の後輩は死にたがり 4話

※100日チャレンジ25日目

御坂と出会ってから1日がたった。


俺は久々にゆっくり寝た気がする。

御坂と始まった交際という名の共存関係、今日も俺たちは御坂の家で集まることになった。


ピンポーン。


「はいはーい!御坂です!」

「……俺だ。開けてくれ。」


ガチャン。


御坂の家はオートロックマンションなので地味に入るのがめんどくさい。それに加えて3階建てなのでエレベーターが設置してないので便利なのか不便なのか分からない家だった。


そして、彼女の部屋に入る。

そうすると、太陽のないシャッターで締め切り、尚且つクーラーが恐ろしいほど効いていて外界との温度差に俺は驚いた。


「寒!?この部屋何度だよ。」

「せんぱーい……今日も暑いですね。」

「いや、クーラー効かせすぎだろうが!?何℃に設定してるんだよ。」

「18℃です。いつもこれくらいですよ。」

「いや、人類の適温より低いじゃねえか!電気代ももったいないだろ!」


すると、御坂は疑問顔をこちらに向けた。

何か変なこと言ったのかな?


「いや、何言ってるんですか先輩。クーラーはつけたり消したりしないでつけっぱなしの方が節約になるんですよ?ジョーシキですよジョーシキ!」

「なんだと……この……!ずっと家にいないでたまには……この……外に出ろ!」

「いや〜!溶ける!やめてください!妊娠してしまいます!」

「いや、外に出たくらいで妊娠しないだろ!?」


こんな感じで俺と御坂はまだ出会って日も浅いのにそこそこ仲が良かった。

多分変人同士惹かれるものがあるのかもしれない。


「やっぱり太陽は嫌いか?」

「嫌いです!メラニン色素ができない私には皮膚ガンの元になるので百害あって一利なしですよ。覚えといてください。」


こんな環境になるのも無理がない。

俺は彼女のためになんとなくアルビノについて幾つか書籍を読んだのだ。

アルビノの人間がこんな炎天下の中日光を浴びてしまったら全身火傷のようになってしまう。


それに、視力も弱いので彼女にとっては人一倍世界は危険なのだ。

俺はそんな彼女を何とかするためにここにいる。それだけだ。


「先輩、今日のお家デートはなにします?」

「んー、つっても少しはここで勉強させてもらうからな……。あれ、そういえばお前サブスクとかみないのか?」

「サブスク?」


彼女の家のリモコンは、サブスクも見れる機能がついていて、よく見ると親の名義で見れるっぽかった。

なるほど、家を出ない想定で楽しみも用意してくれてたんだな。

本人は全くもって使いこなせてないっぽいけど。


「ほれ、こうやって映画もみれるんだぞ?結構楽しいぜ。」

「なんですと!こんなに便利な機能がなぜ気づかなかったのか……。」

「親は説明してくれなかったのか?」

「あ、いえ……そういえば一人暮らし始めた時に教えてくれてた気がします。」

「なんやねん!とりあえず適当に映画流しとくな。」


俺はなんとなく彼女SFとか好きそうなのでE・Tを流してみる。

たまたま流れ着いた宇宙人と子どものストーリーだ。


家族から離れて孤独を感じる宇宙人の子どもはE・Tと呼ばれ宇宙に返してあげるストーリー。


どこか懐かしく、俺も久しぶりにみるとそのワクワクぶりには心が踊るようだった。


特に少年と宇宙人が力を合わせて空を自転車で漕ぐところなんかは目を見張る名シーンである。


御坂は、珍しく静かにずっと見ていた。

本ばかり読んでる彼女にとってはその映像が物珍しいようでただ一点を眺めていた。


「……面白い、面白いです!先輩!ねね、先輩……これやってください!」


御坂は人差し指をピンと俺に向けるので俺も人差し指を合わせる。


「「E・T!」」


俺たちは指を合わせそう声を合わせると面白くて笑ってしまった。


「なんか、先輩はこのエリオットのようです。孤独の私に色んなものを教えてくれて……。」

「そうだろ、だからお前は俺のチャリを空中に浮かべさせてくれ。」

「ふざけてるんですか?」

「うるせえよ!比喩、比喩表現だよ。」


すると、彼女はE・Tをみながら少し考えていた。

どうしたのだろう、やはり彼女の考えはこれでもと言うほど読み取るのは困難だった。


「先輩は……どうして医者になりたいんですか?」


どうやら俺の事を考えていたみたいだった。

まあ、そりゃあ言ってなかったし、この機会に教えてやろう。


「昔な……母ちゃんがガンで死んじまってさ。その時すごく自分の無力さを痛感したんだ。対応してくれた人にもヤブ医者!なんて叫んでたっけ。今思うとめっちゃ失礼だけど。」

「………………。」

「だからさ、俺も立派な内科の医者になって俺みたいに大切な人を失わせたくない。どうしようもない俺に出来た夢だったんだ。それだけ。」


「……。」

「いや、めっちゃ静かだな。」


御坂を見ると……普段の妙に明るい彼女のにやけ顔がなく、とても悲しそうな顔をしていた。

純白の表情からの悲しそうな顔は……さながらギリシャの絵画のようだった。


「先輩、親が亡くなって寂しい……ですか……?悲しい……ですか……?私は親はいるけど、亡くなるのは想像できません。」

「だろ〜?喧嘩ばっかしてていつも一緒に謝ってくれてたな。だからさ……お前も、いつか親御さんと分かり合えるといいな。永遠……なんてことは無いんだからさ。」

「先輩……えい!」


すると、急に御坂は俺を強く抱き締めた。

180cmの大きな体で俺を覆い被さるように。

白銀の髪色は……絹糸のようで俺は見とれそうになっていた。


そして、ハッと冷静に戻る。


「ちょ、何するんだ!御坂……!お前力強いんだから……!」

「寂しいけど、頑張ってる先輩にご褒美……!」


最初は苦しかったんだけど慣れると少し落ち着いてくる。そういえば誰かの体温なんて久しぶりである。

御坂を見ると……何故か泣いていた。


「よしよし、寂しかったんだよね……だから先輩頑張るのか。きっといい医者になるよ。」


多分、おふくろに言って欲しかったような言葉をくれて、少しその温かさに身を委ねてしまう。


「じゃあ、もう死のうとするのやめろよな。俺の倫理観に反するから俺の目の黒いうちは死なせないから。」

「んー、それはどうしよっかな。先輩は……人は死んだらどうなると思う?」


死……死についてか。

考えたこともなかった。

おふくろはもうこの世にいないってのに、案外まだ若さがそれについてを触れないようにしてるのかピンと来ない。


「私は、今の私より素敵な私に生まれ変われるのだと思ってるんだ。」


いわゆる、輪廻転生論である。

死んだら違う人になる。それはまるで救済のようでもあるが、一定数前世の記憶を持つ人間なんているくらいだから、もしかしたらそういう仕組みや理が判明されてないだけであるのかもしれない。


「そういう考えもある。だけど……俺は死んだら終わりだと思う。だからこそ、今を全力で生きるんだ。死んだ時に後悔しないようにな。」


俺は、御坂の体温を惜しみつつゆっくりと離れさせる。

御坂は少し寂しそうだったのでゆっくりと言葉を紡いだ。


「俺は、お前に生きたいとさせるまでは死ねない。それが今俺が死んだ時に出る後悔だ。」

「先輩……、ちゃらんぽらんの癖にたまに芯が通ってますね。」

「癖に、は余計だばーか。」

「ねえ、先輩?私太陽はちゃんと見れないけどさ……星空は好きなんだ。夜景も好き。夜は寂しいけど、夜しか見えない美しさもあるの。綺麗な夜を私に見せてくれない?」


初めての彼女の提案……というか、願いをきいた。

俺はそれを聞いてどこか言葉にならない気持ちが込み上げてきた。


「おう!任せろ!日本一綺麗な夜景……見せてやるよ!」


俺たちは小さな約束をこの小さなホコリ被った書斎で交わすことになる。

この外に出ることに怯える純白の吸血鬼を外界に解き放つために。

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