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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第9章 俺と母ちゃんの富士五湖修行
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俺と母ちゃんの富士五湖修行 12話

※100日チャレンジ19日目

俺たちは山中湖にある施設に着いた。


ここにはコテージやキャンプ場、バザーまである。

ハンモックカフェに行く予定だったがその前にバザーでお土産を探していた。


「へー、やっぱり山梨といえばほうとうが人気かな。」

「んー、色々あるわよ。例えばきな粉と黒蜜が美味しい信玄餅だったり、山梨の高原で取れたブドウから作られる甲州ワインだったりね!」


確かに、品ぞろえは多種多様だ。

これはみんなに持っていったら喜ぶかもしれない。

ワインは買えないけど…いつか欲しいものだ。


「それじゃあ…私はこのワインかな。」


母ちゃんが選んだのは、白ワインだった。

金額はそこまで高くない…というか、価値がよく分からなかった。


「母ちゃんワインなんて飲むんだね。」

「たまにね〜、悪酔いしちゃいがちだけど…少量なら体にいいのよ!たとえば…赤ワインの赤の色素のポリフェノールなんかは…かなり健康としての価値が高い色素なのよ!」


なんだろう、急に母ちゃんが頭良く見えてきた。

ワインと言っても、ブドウの品種が違う。

よく聞くシャルドネとか、ソーヴィニヨン・ブランなどの名前のブドウを使っている。


それをブレンドしたり、樽かステンレスで発酵する事で香りも変わるみたいだった。


「んー、なんとなくはわかったけど…やっぱ分からん。」

「あはは、難しいわよね〜。まだまだ未成年ですもん。」

「なんかムカつくな。」

「じゃあ…このワインは3年後に直輝が大人になった時に飲もうかしら。」


母ちゃんは少し高めのワインを手にした。


「そういえば、なんで何年も熟成するの?意味あるの、それ?」

「んー、難しいわね。時間を置くと…角が取れるというか、味わいがまろやかになるから、ブドウの良い味がより感じられるのよ。だから価値があったりする。これは3年後の楽しみよ!」


母ちゃんはルンルンと踊り出しそうな軽い足並みでワインをレジへ持っていく。


俺は今回悩んだあげく…吉田うどんにすることにした。

ほうとうは夏に食うには熱すぎる。

吉田うどんのこしのある麺を冷たいツユでチュルンとすすってもらうのだ。


そして、俺たちは一旦お土産を車へ置いていこうとする。


「いや〜いいワイン買ったわ〜。あ、次いでにワインセラー買おうかしら。」

「どんだけ金あるんだよ母ちゃん。」

「そんなにないわよ〜。」

「いやいや〜数千万の資産くらいはあるんでしょ。」

「あ、それよりはあるわよ。」


え…数千万よりあるの?

億…?いや母ちゃんどんだけ稼いでたんだよ。


「なあ母ちゃん?なんで今更ブログなんて始めてるんだ?一生遊んで暮らせるだけの金があるなら、遊んでもいいんじゃないか?」

「んーん、母ちゃんはそこそこ質素でいいわよ。それに…働かないのも、案外辛いものよ。」


俺は分からなかった。

将来働くというのがものすごく嫌だったからだ。


「俺は出来れば働きたくないね。出来れば一生ニートできたらどれだけ幸せなんだろうって思ったりする。だって、働いてる人で顔死んでない人なんてほとんど見ないもん。」


「あはは、確かにそうかも。私も働いてる時はいつも死にそうな顔してたな。でもね…幸せだった。私の作品で喜んでくれる人がいて、そんな作品をカメラマンやディレクター、編集の人たちと本気で作る。結局仕事って人を喜ばせるためにやるんだけど…喜ばせてるっていう気持ち…案外大事なものよ。逆に幸せになる。」


俺には、まだ早すぎる達観とした答えは俺をピンとくることは出来なかったけど、それだけでも母ちゃんがどれだけ必死に働いてたのか位はわかった。


「俺もバイトしようかな。」

「いいじゃない。受験に支障を来さない程度にはいいんじゃないかしら?」

「おっけー!じゃあ、ガンガン働くわ!」

「あ、でも103万超えると扶養外れちゃうからホント程々にね。控除結構でかいから。」


ちょっとその話をする時の母ちゃんは至って冷静だった。流石母ちゃん…女手1つで家庭を作れる訳だ。


俺たちはハンモックカフェについた。

森林の中、鳥のさえずりが聞こえて…空気が澄んでいるのを感じる。

体が自然と休まるような感じがしたので普段の都会の喧騒がどれだけ人体に負担をかけてるのか一目瞭然だ。


「直輝〜どれにするー?」

「んー、ベーグルバーガー?」

「はいはい!ベーグルバーガーね!」


母ちゃんは俺の代わりに注文してくれる。

飲み物は俺は桃ジュースで母ちゃんはブドウジュースにした。


「…ベーグルって普通のパンと何が違うの?」


ふと、気になってしまった。

ドーナツのような見た目だけど結構固いイメージがある。東京もそこそこベーグルの専門店があるので馴染み深いのだが、初めて舞衣と食べた時は思いの外固くてびっくりしていた。


「私もベーグル作ったことあるからわかるんだけど…実は焼く前にお湯で茹でてるの。」

「え!そうなの?」

「そうよ〜、それで表面に火が入ったらオーブンで焼くんだけど、表面は既に固まってるようなもんだから…詰まったパンができるの!」

「通りで固いわけだ。」


そんな話を5分ほどしていると、俺たちのテーブルにベーグルバーガーとジュースが出された。

パンはカリッと焼き上げられており、信玄鶏という鶏肉がジューシーに乗せられて、レタスとトマトがのっていた。


俺たちは口に運ぶと、パンのサクサクな食感と鶏肉の旨みと、野菜の新鮮さが合わさっていて絶品である。

俺は…人生で初めてベーグルを美味しいと思ってあっという間に平らげてしまった。


「美味い…美味すぎる。」

「さすが食べ盛り!食べるの早いわよ〜。」


俺はジュースをさっと飲み干し、ハンモックに身を委ねた。


「あ、母ちゃんはハンモック使わなくて大丈夫?」

「うん!ちょっとブログでも書いてるわ!」


俺はハンモックに乗り、紐に釣られて静かに揺れるのを感じる。普段炎天下と排気ガスに慣れた俺の体には…まるで天国のような森林のマイナスイオンが体に涼しさと癒しを与えてくれる。


食欲が満たされると…脳から急に眠気が襲ってきた。

母ちゃんは横でタブレットPCをカタカタと静かに音を立てて文字を打ち込んでいる。


その音さえも…ASMRのようで心地よく…気がついたら俺は眠りについていた。


意識が…どんどん…遠のいていく。

長旅の……疲れを……いや…す…よう…に。


「あはは、直輝…めっちゃ寝てる。大きくなっても寝顔は変わらないのね。」

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