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僕のお母さんは△▽女優  作者: kyonkyon
第1章 僕のお母さんはAV女優
12/253

僕のお母さんはAV女優 12話

キーンコーンカーンコーン……


俺は1限目に遅刻をして数学の前半があまり頭に入らなかったが、無事に昼までを乗り切ることが出来た。

朝は近い学校に徒歩から行けるので満員電車に揺られるのはとても心地の悪いものだった。


昼飯はないのだけれど……そこは購買で買おうとしよう。

すると、俺の机の上に誰かがポンっと焼きそばパンを置いた。


「飯田か……。」

「おう、おつかれさん!元気な顔が見れて安心したぜ!」


飯田はいつもの無邪気な笑顔でにっこりと笑う。

きっと朝ごはんがないところまでお見通しだったのだろう。

俺たちは、屋上へと足を運ぶことにした。

そして、いつものところで腰をかける。

いつもより少し無言の時間があるのは連絡を無視した気まずさを俺が出しているのと、飯田が自分のせいで家族が揉めたという罪悪感から来るものだと気がつくのにはほとんど時間はかからなかった。


「あのさ、飯田。」

「大丈夫だ……お前の目を見ればわかる。」


その一言で少し安堵をする、やはり飯田は良い奴だった。そして、飯田は続ける。


「もし、事が落ち着いたらまたゆっくり話してくれよ!そんなことより……お前昨日どこ行ってたんだよ〜!家はここからそんなに遠くないから1限目に遅刻なんて有り得ねえぜ!」

「本厚木ってとこ行ってた。」

「どこだぁ?そこ。」

「んー、小田急線のとこなんだけど新宿から小田原のちょうど真ん中辺りにいたよ。」

「いやめちゃくちゃ遠くじゃねえか……。」


飯田はツッコミを入れる。

あ、やっぱり遠すぎたよね?


「つか、お金大丈夫だったのかよ?お前まさか食い逃げかホームレスのような生活を……。」

「いや、そこも大丈夫だったよ。」


西出さんには本当に世話になった。

次はあの人を探しに本厚木を探してみよう。

そういえば、新学期が始まってから佐倉さんも俺たちに混ざっているのが日課だったのに今日は珍しく居なかった。


「ねえ、飯田……そういえば佐倉さんはどこに行ったのかな?」

「佐倉?あー、あいつ今日はバイト先の英会話研修入れちまったから参加することにしたんだって。」

「なんだそりゃ?」


学校よりバイトを優先してるとは……また今度彼女にあった時には注意してあげないといけないな。

俺たちは簡素な購買のパンをあっさり食切ると……飯田はすぐに立ち上がった。


「どうしたの?」

「ああ、今日は水泳部のトレーニングメニューの改定の為のミーティングを控えてるんだ。お前も自分との対話の時間が必要だろ?いつも通りで安心したわ、じゃーなー!」


そう言って飯田はこの場を立ち去り、軽く手を振った。

そういった所も飯田は気を使うのが上手だなと関心をする。

さて、俺もこの後の化学の授業の準備と母親に何を話すか整理をする事にした。


☆☆


キーンコーンカーンコーン……


「はい、今日の授業は終了です。皆さん気をつけて帰ってくださいね。」


諏訪先生が午後のホームルームを終え、終わりの号令をすると俺たちは解放をされる。

結局授業は頭に入ることは無かった。

しかし、俺の中でひとつの言葉が確立されていた。


「人を許すとは、囚人を解放すること。そして、その囚人が自分自身であったと気が付くこと。」


名前も知らないアメリカの作家の言葉であった。

なんというか、ホームルームで許すというワードでググッてみたらたまたまそんな言葉が見つかったのだけれど……この言葉がグッと心に刺さった。


そう、未熟だった俺の精神こそが今の家族との関係を引き裂いている1番の要因だ。西出さんの教えてくれたように……俺は前に進まなければいけなかった。


俺は真っ先にケーキ屋に行った。

昨日の宿題で受け入れるためにはケーキが必要だったのだ。

俺はケーキ屋さんに入り、2人分のケーキを注文をする。

俺はショートケーキ、母ちゃんのはガトーショコラだった。

そして、保冷剤抜きで箱に入れてもらい……自宅へと丸一日ぶりに帰宅をした。


「おかえり!」


母ちゃんはいつも通りの笑顔で迎えてくれた。

そう、まるで何事も無かったかのように。


「ただいま、ケーキ……買ってきたよ。」

「え!嬉しい〜!すぐ食べる?」

「うん、出来れば……きちんと話もしたいな。」

「わかったわ!カモミールティー入れるわね。」


俺たちはリビングに腰をかけて、母親がカモミールティーをいれてくれた。

少しミントも入っているのでとても爽やかな香りがする。


俺は少し緊張もしていたので、ケーキの味が分からない俺に対して……母ちゃんは頬に手を当てとても美味しそうに食べていた。


「んー、美味しい!たまらないわ!」

「そうだね、おいしいね。」


母ちゃんはやはり子どもっぽい。どこか年齢を感じないほど天真爛漫であった。


「……ねえ、母ちゃん。昨日の件なんだけどさ。」

「うん。どうしたの?」


母ちゃんは目をしっかりと見て食べるのを止める。

しっかりと俺の言葉に傾聴をしてるようであった。


「あれから考えて……きっと母ちゃんはいつも俺を守るために母ちゃんは何かを捨てて頑張ってるんじゃないかと思ったんだ。青柳と一緒にいる時の母ちゃんは……すごく死んだ目をしていた。」

「あはは……よく見てるね。」

「だからね、俺は少しでも母ちゃんと向き合えるように……とにかく毎日学校に行く努力はしようと思う。

1年の頃は少し休み気味だったけど、母ちゃんがもう無理をしなくていいように前を進もうと思うんだ!」


すると、母ちゃんは俺の頬に手を当てた。

すごく暖かくて……優しくて、落ち着く感触だった。


「ねえ、直輝……私からもいい?」

「うん。」

「いつも直輝のことをちゃんと見れなくて……ごめんね。」


まさかの母ちゃんからの謝罪もあり……俺は少し目頭が熱くなった。


「私はね……直輝を守ることに必死で、直輝のことをちゃんと見てあげれなかったな。私もねすごく不器用だから目の前のことでいっぱいいっぱいになって頑張りすぎちゃうの。最初なんかはネグレクトそのものだったし、そこで反省をして習い事とか行かせてみたけど……知らないうちに負担をかけて…………私はすごくダメな女よ。」


母ちゃんも泣いていた。

お互いが不器用なのだ、お互いが馬鹿だったのだ。

しかし、俺はそんな母ちゃんをそのままで終わらしたくはなかった。


「母ちゃん!……そんな悲しいこと言わないでくれよ。過去なんて関係ないんだ、これから変わろうよ。過去は変えられなくても未来は変えられることが出来るんだ。」


俺は口が止まらなかった、こんなに饒舌に喋ったのは実に久しぶりだった。


「俺は……母ちゃんを、俺自身を許すよ。それが家族ってもんでしょ。だからもう俺のために身を削りすぎることは……辞めてくれ!俺にとっては母ちゃんが最高の母ちゃんなんだよ!」

「直輝……直輝ーーー!う……うう。」


うわあああと母ちゃんは声を上げて泣いた。

俺も一緒に母ちゃんの肩に手を当て地面に向けて子供らしく泣いた。


どんな形であれ、どんな過去があれ……どんな溝があっても俺たちは誇れることが出来る家族であった。


☆☆


「おきー!おきなさい!」

「ん……。」


朝の小鳥のさえずりがひびき……朝6時だと言うのにもう朝焼けも終わり空模様は青くなっていた。


春というのは少し寒く……少し暖かく他の国には無い花咲かせる絶妙な季節であり桜が数日ながら咲き誇り花をまい散らせるのはまさに圧巻の景色である。


俺は、まだその景色を見るにはカーテンが塞いでいて気づくことは無かった。


「直輝ー!起きてー!」

「へーい!」


俺はそろそろ飯田が来ると体内時計がアラームを鳴らしてたので何とか目を覚ました。


「おはよー、母ちゃん。」

「おはよー。もう〜朝起きるの遅いわよ。」


母ちゃんは慌ただしく朝食を用意してる姿を見ると……母ちゃんも少し寝坊気味であることが伺えた。

それにしても、今日は母ちゃんはスーツを着てなかった。


「母ちゃん……今日はスーツ気ないんだね。」

「辞めたわ。」

「へ?」

「だって、貯金はたんまりあるもの!それに私……AV女優の女王だったからね!」

「普通……それ息子に自慢することでは無いよ。」


俺たちの関係は……少し明るくはなっていた。

まだ俺の疑問は全ては解消はされてなかったけど、少し母ちゃんの事が知るとどこか距離感を近く感じられて……安堵していた。


ピンポーン


インターホンがなる。

やべえ、もう飯田が来てる時間じゃあねえか!


「入りますよー!」

「飯田君〜!ごめんなさいね、ちょっと直輝まだ寝起きで。」

「いいっすよいいっすよ!それにしても遥香さん今日も綺麗ですね!」

「やだー、飯田くんったら!」

「おい、母ちゃんナンパするな。ホモ野郎。」


今日もそんな春の景色はお構い無しと俺たちの朝は慌ただしく始まる……桜の花言葉は始まり。


俺たちの物語は……はじまった。

1章を最後まで見て頂きありがとうございます!


今後のモチベーションになりますので宜しければブックマークや高評価……お願いします。

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