【100話&10000PV記念!】〜これまでと、これからの歩み
ポツポツ……
世間は記録的な雨である。
しかし、どこか既視感のある朝だった。
いつもの日常に……大きく切り離されてるような。
ただ、この朝は割と最近あったので、心底うんざりしていた。
「今日は……メタ回?」
嫌な予感がしつつ、自分の服装を見る。
服装はタキシードである。
また作者が外伝多すぎるとか、そんな事を俺たちに丸投げするのではと冷や冷やをする。
実はと言うとこの回は苦手だ、何をすればいいと言うか……まるでYouTubeの撮影中みたいに落ち着かない。
そんなネガティブな感情に右往左往してると、部屋は暗くなり、スポットライトが当てられた。
しかし、眩しすぎて母ちゃんの実態が見えなかった。
「うおっ、母ちゃんか!?」
「そうよ!」
どこか甘美で優しい安心感のある声が聞こえる。
今日は踊るような、明るい声だった。
「ねえ!直輝……?この紐引っ張ってみて!」
紐と言われ、あたりをさがすと紐が不気味に俺の横に垂れ下がっている。
やれやれ……とボヤいて引っ張ってみると……。
カパッと開く音がする。
紙吹雪がまい散らされて、紙の幕が落ちてきた。
なんだよ、と見てみると文字が書いてあった。
「祝!100話、10000PV!!」
「え……?100話?10000PV?これってまさか……。」
「皆さん!僕のお母さんは△▽女優を見ていただきありがとうございます!おかげさまで小説家になろうにて、100話、そして……10000PVが達成されました!!」
盛大な拍手とともに母ちゃんの姿が映し出される。
母ちゃんは、青いドレスを来ていて……いつもの少しくすんだ金髪を見たことない縛り方をしていた。
まるで……ひとつの花のような感じで後ろ髪を束ねていた。
「おお……母ちゃんがいつもに比べて少し豪華だ。」
「少し!は余計ね。作者いわく……今日の服装のコンセプトは青い薔薇なんだそうよ!」
「なんで青い薔薇?」
「元々現実に無い花だったから「叶わない夢」が花言葉だったんだけど、人間が世に生み出したから花言葉が変わって「奇跡、夢叶う」っていう意味らしいわよ!」
ほう、じゃあ作者の小さな夢が叶ったとでも言いたいんだな。
「えー!いつも通り作者より手紙を頂いております!」
「いや、本人連れてこいよ。5000PVの時と同じだし、読者飽きるだろ。」
「そう?じゃあ、呼ぶわね?」
そう言うと、母ちゃんが家の奥に歩き出すと……20代後半くらいの青年が引きずり出されていた。
「なに!?どうしたの急に!手紙渡したよね?」
「いや〜たまには作者の声も直に聞いた方がいいのかなと。」
「聞いてる!Xとかでめっちゃ喋ってるから!」
「いや、必ずしも読者様があなたのXなんか見てるとは限らないじゃないですか。」
確かに、母ちゃんの言い分にも納得がいく。
ハリー○ッター読んでるからと言って作者のX見たいとかはならない。
「ほら!シャキッと!」
「あ……えー、皆様今回僕のお母さんは△▽女優が100話、及び10000PVが突破しました。本当にありがとうございます。」
作者のお辞儀に合わせて俺達も拍手をする。
「私は一般サラリーマンとして働いているのですが、朝の決まった時間に小説を書こうと細々と初めて、しばらくしたある日従兄弟から「僕のお母さんはAV女優」というテーマで、家族愛や成長の感動ストーリー書いたら面白そうじゃね?というところから始まりました。」
「いや、そんなノリで生まれたのかよ俺たち。」
「まあ、きっかけなんて突然よ。」
「最初は他の人にこのタイトルを伝えるのも恥ずかしかったです。出落ちとか……卑猥とか言われるのではないかとヒヤヒヤしていました。」
まあ確かにエロい漫画のタイトルでありそうだからな。母ちゃんのエロい漫画……うん、息子視点だときついものがある。
「でも、直輝や遥香たちの成長を見る度に僕自身は彼らを愛するようになりました。自分なりの課題に取り組みながらも……成長を重ねるにつれ私も少しづつ成長をして、ある月は1000.2000とPVを重ねていきました。たまにXや他の小説媒体でも素敵な感想をいただけて……気がついたら10000PVという小さな夢が叶いました。最初は絶対無理だと思ってました。その目標を立てた時は1日20PVが限界でした。」
1日20PVが10000か……単純計算で500日はかかるKさんだけど、それだけでも作者は成長したんだな
「でも、私の力ではありません。毎日必死に生きる直輝たち、Xで拡散してくださるフォロワー様、そして……なによりもこの拙作を楽しんでくださる読者様のおかげです。私は驚愕しました。90話あまりを1日で読み上げてしまう方もいて、それだけで自分の作品って人に一気に90話見られる作品なんだな!と少し自信を持てるようになりました。」
作者は……最後に少し涙目で、大きく息を吸った。
「本当に!ありがとうございます!!!」
俺と母ちゃんは……この男に拍手をする。
俺の時系列だとまだ3ヶ月しか経ってない。
恐らくこの男も3ヶ月しか経ってないのだけれど、お互い少しづつだけど成長できた。
ある意味、この男とも二人三脚で生きてきたようなものだ。
あれ?この場合……三人だから三人五脚の方がいいのかな?
「ありがとうございます!そしたら、次に誕生秘話でも行きますか。」
どうやら、今回は母ちゃんは進行役のようだった。
もうアラフォーに行こうとしてるのにやはり母ちゃんは美人なので華がある。
「私たち親子は咄嗟に浮かんできたのかな?」
「うーん……直輝は俺よりのキャラにしてるな。ADHDとか、空手やってたとかね天野って苗字は昔好きだった漫画のヒロインから引用したよ!。」
「私のモデルはいるの?」
「ああ、それは……上原亜○さんだね。」
「いや、めっちゃメジャーなAV女優……。まあ確かにトータル2000本近く作品を出していたりしてるからそりゃあ仕方ないか。」
「俺にとっては遥香は母としても、AV女優としても最上級の人であって欲しかったからモデルはそうなったのよ。」
母ちゃんは深く頷く、まあ……自分のモデルがAV女優って話を聞く機会もないもんな。
「他のみんなも、モデルはいたりするの?」
「ああ、いるいる!酒飲み天才小説家の笛吹さやかなんかは……小説を書く自分の理想像と太宰治、あとは人気マンガの飲んべえのキャラクターを足してるし、ヘビースモーカーのメイド長の神宮寺ことねは、実際メイド喫茶で仲のいいメイドさんと……僕が読んだコンビニ人間という本の主人公と友達をあわせてる。」
なるほど……だから俺の周りはこんなにキャラが濃いのか。こうして見ると、みんなの過去やキャラがリアリティがあるのも納得である。
「登場人物が旅行が多いみたいだけど……。作者が行くのかい?」
「もちろん!伊豆とか江ノ島、浅草とかだって僕が実際にその地に行って食べたものや景色とかを見て書いてるんだよ。やっぱり、経験こそがリアリティだからね!しがないサラリーマンだから限られるけど……全国どこだって行ってみせるさ!」
「ほう、じゃあ年内に宮古島行ってくれ。」
「う……!き……機会があったら。」
「いや、書いてある以上は行ってくれ。きっと読者も喜ぶぞ。」
「わかったよ、行く、行きます!あ、ちなみにここ行ってきて欲しいってのがあったらコメントしてくれ!長野県から行ける範囲で行かしてもらいます!」
「言ったな。」
「男に二言は無い!」
この男は俺に似てると思うけど、少しいじりやすいそんな性格をしている。
どこか話してて心地よかった。
きっと、その素直さが100話書いてる秘訣なのかもしれない。
「いや〜、でも……俺は10000行けるなんて、もう思い残すことは無いよ。」
「「え?」」
「あ、でも夢が叶ったから。これからどうしようか。」
ちょっと作者が満足しすぎてる感じがする。
俺たちはバックヤードに隠れて緊急会議する。
「ねえ、直輝……?作者も満足しすぎてモチベごと蒸発してない?」
「やばいぞ、これ……俺たちの存続に関わりそうだ。」
お互いアイコンタクトをして、ひとつの事を決める。
そして、舞台に戻り作者に話しかける。
「おお……直輝達どこ行ってたの。俺が余韻に浸ってる間に。」
「作者よ、確かに10000言ったし、100話はあんたにとっては偉業だ。」
「せ……せやな。」
なぜ急に関西弁といえ無粋なツッコミを抑えつつ、話を続ける。
「あんたはそれで満足か!?」
「なに!?」
「あんたは登山で言うと長野県の小さな山を超えたに過ぎないんだよ!山はまだあるじゃねえか!富士山とかモンブランとか……エベレストとか。」
「そ……そうだな。」
まだピンと来ていない。
なんと脳天気な男なのだろうと呆れてしまう、
ひとまず、母ちゃんとアイコンタクトをする。
「あなたは夢を叶えたかもだけど、その先はあるわ。
2万PVとか200話とか!」
「おお!」
「それに、ただの趣味で満足してるの?イラストの挿入は?書籍化は?アニメ化は?あなたはどうしたい?」
ちょっとメタすぎる。
でも、小説である以上は避けては通れぬ通過点だ。
「全部やりたい!遥香の声を雨宮○さんとかが話してるの聞きてえ!」
「でしょ!」
俺も話を入る。いや……既に登場人物のキャスティングまで決めてるのはちょっと覚悟決まりすぎてる気もするのだけれど。
「俺もまだ夢を叶えられてない。大学に入って……何かをしたいって、まだそんなぼんやりとした目標しかないんだよ!母ちゃんにも親孝行できてないし……俺たちの夢を一緒に叶えてくれよ。」
作者は……目の色が変わった。
天国のような光に満ちた空から、燃えたぎる炎のように変わっていく。
「そっか、そうだよな。まだ俺たちは旅の途中……満足する理由なんてまだない。俺……浮かれてたかも。確かに10000PVをとっても俺の日常は変わらない。もっと君たちと夢を叶えていくよ!そのために……これからも一緒に走ってくれるかい?」
そんな……作者に対して俺たちの答えはひとつだった。
「「もちろん!任せて!」」
今日は……祝福とは裏腹に雨が鳴り止む気配はない1日だ。
しかし、雨が降るからこそ大地が潤って肥沃の地となり、自然か生い茂るのだ。
そう言う、一つ一つの意味を噛み締めるようにこの回は幕を閉じた。
次に太陽が昇るのを……密かに待ち望みながら。