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「そろそろ掃除、再開しよっか」

「あ、そうだね。長々話しちゃって、ごめん」


 そうだった。僕たちは今、休憩中だった。

 つい長々話してしまった。


 僕たちは、春から結婚を視野に入れた同棲をスタートする予定だ。それに先駆け、今日は一緒に住む予定のあきらちゃんの実家の片付けをしていた。


 あきらちゃんの両親は二人とも亡くなっているそうだ。なので、あきらちゃんは地元に帰ってきてからは実家(ここ)に、一人で暮らしている。

 三年前、あきらちゃんが地元に戻ってきた理由をハッキリとは聞いていないが、御両親が亡くなったことが関係しているのではないかなと思っている。


「次はどこを片付けるの?」

「あとは……屋根裏で最後、かな?」

「ん、了解」


 あきらちゃんがカップを持ち、席を立つ。


「お茶片付けてくるから、先に屋根裏に行ってて」

「分かった。ありがとう」


 台所に行こうとしたあきらちゃんが、思い出したように振り返る。


「あ、そうそう――」

「はいはい。分かったよ」


 あきらちゃんから言われた言葉に、フフッと笑いながら返事をし、席を立つ。


 ダイニングを出て、屋根裏に通じる部屋からはしごを使い、屋根裏に上がる。

 少しホコリっぽいが、物も少なく、掃除も早く終わりそうだ。


「ん?」


 部屋を見渡しているときに、一つ気になるモノが視界に入った。

 黒い段ボールが一つだけ、他の物とは別にポツンと部屋の隅に置かれている。


「あの黒い段ボールは確か、さっきあきらちゃんが……」


(『あ、そうそう――屋根裏に置いてある黒色の段ボールの中、恥ずかしいものが入ってるから絶対に見ないでね!』て、言ってたっけ?)


 先ほどのあきらちゃんの様子を思い出して、またフフッと笑う。


 あきらちゃんがあんな風に言うなんて、なんなんだろ? アルバムとか? すこーしだけなら、見てもバレないかな……。


 好奇心が抑えられず、僕は黒い段ボールを開いた。


「えっ」


 段ボールの中は、写真だらけだった。


 あきらちゃんちゃんの御両親の写真だろうか、五十代くらいの男女の写真が一枚。

 あとは僕と、なぜか彼女とキホさんの写真が大量にある。しかも、どの写真も目線がカメラを向いていない。盗撮された写真みたいだ。

 段ボールをひっくり返し、中身を出す。


 やはり、僕たちの写真しかない。


 もう一度段ボールの中を見ると、一枚の写真付履歴書が底に挟まっていた。


 履歴書を手に取り読んで、驚く。


 僕がまだ大学生だったときに、あきらちゃんも同じ大学に通っていたことが書いてあったからだ。

 しかも、僕が中退してからすぐに中退している。


 なんで同じ大学だって言わなかったんだろう。

 それに、この写真……。


 手に持った履歴書を見てから、言い知れない恐怖感で寒気が止まらない。

 



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