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あれからすぐ、大学を中退した。
アルバイトで貯めたお金を使って、僕を知っている人が居ない町に引っ越した。
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「大学も辞めたの?」
じっと静かに僕の話を聞いていた目の前の人物が、そこまでしたのかと言うような顔で聞いてきた。
「……彼女の両親に言われたようなことを、友達とか大学の人にも言われたんだ。それで、大学を辞めて引っ越した」
五年経った今でもあの頃を思い出すのは、ちょっとつらいな。
「僕は、彼女が浮気していたことを本当に知らなかったんだ。なのにみんな、僕が悪いように言ってきて――。本当に知らなかったと言っても、誰も信じてくれなかった」
手元のお茶が入った五百ミリリットルのペットボトルをイジりながら話す。
今思い出しても、ひどい話だったな。
中には、三年の付き合いの友人だって居たのに。誰も信じてくれなかったんだから。
「……ひどい。どうして誰も信じてくれなかったんだろう」
「……多分、SNSのせいかな。当時、彼女たちのことがネットニュースになったんだ。それでSNSに『彼氏(僕)が本当は知っていて、彼女を追い詰めたんだろう』とか、結構あることないこと書かれちゃって」
彼女のご両親、友人、知り合い、SNS。
全部が全部、僕を責めていたわけではなかったんだろうと今では思う。けれど当時の僕には、そんな風に思う余裕はなかった。
みんなから責められ、だんだん彼女が死んでしまったことを悲しめなくなっていた。
そんな自分が嫌で、全てから逃げ出した。