やっぱりチートのようでしたー3
日も暮れ、二夜目の野営となった。
アレイは夕べ、ドライフルーツを葡萄酒で浸し柔らかく戻した物を火にかけてアルコールを飛ばした。
それをパンに乗せてチーズも乗せ炙る。
甘酸っぱい香りが漂う。
「フェル、アルコールは飛んでるはずだから。」
「ありがと。美味しそう!」
フェルにもご馳走する。
「…ねぇ、アレイ。お昼に魔物を倒した魔法って……?」
うわぁ、スルーしてくれないのね。
「うーん、なんだったんだろうね。あんなの初めてだよ!」
実戦は初めてだが、あんなに威力が出るとは思わなかった。
力の加減を誤らないようにしないと、高威力の魔法とか使ったらどうなる事か……
想像してゾッとした。
「アレイ。ごめんね、怖かったよね?でも大丈夫!」
ゾッとするアレイの表情に、フェルはぎゅっとアレイの手を両手で包み握った。
「へっ…?!」
「アレイの中にもしかしたら凄い魔力があるのかも知れない。でも、私達はその魔力の使い方を習うため学園に行くのだもの!私もきっと力になるわ!」
「フェル……」
フェルの優しさに思わずグッとくると同時に、
『ごめん、ただのチート野郎なのに。いい娘や…』
と、ほろりとした。
「有り難う、フェル。
私もあなたの力になるから!」
アレイもぎゅっとフェルの手を握り返した。
拝啓
家族の皆様。
16歳となって初めての友達ができました。
敬具
次の日、開けた草原地帯に入ると魔物からも発見されやすいのか、襲撃されるようになった。
「炎よ矢となり貫け!」
フェルも傭兵達の援護を出来るようになっていた。
「凍てつく息吹き。」
アレイも魔力を絞って同じく魔法で援護した。
魔法の威力を弱めるなんて、どんなに大きな魔法を使うよりかえって疲れる。
「ふぅ、」
「凄いね、実戦って。」
フェルにも疲れが見えるが、実戦によりレベルが上がり、魔力や魔法の威力が上がった事で元々のステータスとの差が離れたことによる反動もあるのだろう。
「嬢ちゃん達、もうすぐ草原地帯を抜けるから。王都もすぐそこさ。」
御者が安堵したように振り返り笑顔を見せたその時……
『キィィィ―――ッ!!』
「うわぁぁっっ!!」
突然、空から怪鳥が御者を襲った。
「!!!」
「ア、アレイ?!」
「―――ハァァッ!!」
アレイは父から貰った長剣を迷う事なく抜いた。
「ギャァァァ!!」
飛び出したアレイが地面にふわりと降り立つと同時に怪鳥の羽根が舞い散り、怪鳥だったモノがバラバラになり落ちた。
「しっかり!!」
御者に回復魔法をかける。
「ううっ……、あ……?おおっ?もう大丈夫だ。凄いな、嬢ちゃん……」
「よかった……あれ…?」
アレイがホッとして我に返っても既に遅し。
皆あんぐりと開いた口のままポカンとしている。
「え。」
パラッパー♪
頭の中でファンファーレが鳴った。
「え?」
「アレイ!!」
ぐらり、アレイの身体が揺らぎ、そのままブラックアウトした。