やっぱりチートのようでしたー1
姿が見えなくなるまで手を振り、やがて
「ごめんなさい、砂ぼこり入っちゃったね。」
先に乗っていた少女の向かいに座り直した。
「んーん、しばらく会えないもの。私もずっと手を振っちゃてたわ。」
クスリ、と笑って
「フェル=ウィナよ。よろしくね!」
手を差し出した。
「あま……んんっ…、アレイ。アレイ=ホープスよ。よろしくね!」
思わず天宮と名乗りそうになった、気を付けないと。
「アレイね、よろしく。」
アレイとぎゅっと握手を交わす。
「良かった。一緒に行く人が女子で、まだまだ着くまでかかるもん。」
「ふふ、確かに。」
野宿に男子と一緒はさすがに気を使うし、何より送迎の御者や傭兵は皆男性だ。
「フェルはどこからなの?」
聞けば、二つ向こうの村らしい。
「休暇の時も帰りは一緒ね。」
アレイが何気無く言うと、
「う…うん、そうね。」
と、何か微妙な返事を返した。
「あー、そういえば王都ってどんな所かな?何美味しいかな?」
アレイは雰囲気を察して話題を変えた。
「そうねぇ~、王都は広いから食べ歩きとか楽しみよね!
それに村じゃあ、装備も実用過ぎて可愛くないけど、王都だと可愛いのありそう!」
フェルが目を輝かせて話すのでほっとした。
「そっかぁ、お菓子とかあるかな?楽しみだね!」
「うん!ねぇ、外出出来るようになったら薬草集めとか一緒にやろうよ。で、お買い物も行こっ!」
学園内の事ならある程度お金はかからないのだが、外食や装備の強化等は自分で稼がなきゃならない。
その事が自らのレベルの向上となるのだ。
もっとも朝陽がここでトレジャーハント化してしまった訳のだが……
「うん、楽しみだね!」
暫くいわゆる都会に思いを馳せ、お喋りに花を咲かせた。
「今日はここらで休もうか!」
夕暮れも過ぎ、少し開けた所で馬車隊はキャンプを張る事にした。
火を囲み持ってきた食料を開ける。
アレイは今朝母と祖母が焼いてくれたパンを食べる事にした。
「わ…!」
パンと一緒に油紙に包んだ硬めのチーズも入っていた。
チーズのパンを好きな事をちゃんと覚えていてくれたのだ。
「お母さん、おばぁちゃん、ありがとう……」
パを食べやすい厚さに切り、チーズを削り干し肉を裂いて乗せる。
きれいな木の枝にパンを刺して遠火の焚き火で軽く炙るとチーズがほんのり溶けだした。
「そろそろかな?」
チーズの匂いにお腹が鳴りそう。
「いただきます。」
合掌をして一口頬張る。
「うまぁ…」
口から湯気が溢れる。
「ふふ、幸せそうに食べるね。」
フェルがニコニコしながら見ていた。
「ん、美味しい物は人を幸せにするのっ!」
「確かに!」
お同じようにフェルもパンを枝に刺し、実家作だろうかオイル漬けの魚を乗せて炙った。
「フェル、」
その上にアレイは自分のチーズを削って乗せた。
「わぁっ!ありがとう!」
がぶり、フェルもパンをかぶり付いた。
「おいしー!」
ニコニコとパンを頬張る二人に、送迎の傭兵達も笑顔になり和やかな夕げとなった。
「あの、少しもらってもいいですか?」
アレイは傭兵が飲んでいた葡萄酒と思われる酒を分けてもらった。
その代わりに少し干し肉をお裾分けしてあげた。
「嬢ちゃんはまだ飲んじゃ駄目だろう?」
「飲まないですよっ!」
転生前にお酒で孤独死したというのに、さすがに飲む気にはならない。
葡萄酒はドライフルーツの瓶に入れ浸した。
「明日、楽しみにしてて下さいね!」
その日は傭兵達が建ててくれたテントに二人、毛布にくるまって休んだ。