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6.元カノVS今カノ?

サヤカさんが俺の方へスタスタと歩いてくる。


「……どうも。お久しぶりです……」


俺は一応の挨拶をした。


サヤカさんは俺たちの正面で止まると、落ち着いた様子で口を開いた。


「半年ぶりぐらいかしらね……。えっと……その子は?」


俺の腕に巻き付いている美穂の方に目をやる。


俺が、どう紹介すべきか……と考えを巡らせていると──


「どうも初めまして〜。愛名あいな美穂みほと言います〜。センパイの『今カノ』やってま〜す」


美穂が、わざとぶりっこぶった口調で自分で名乗り、さらにぎゅっと俺の腕にしがみつく。


(お、おい……今カノって……)


美穂と視線で会話をする。


(いいから! センパイは話しを合わせて下さい!)


(あ、ああ……)


……とりあえず、この場は美穂に任せてみよう。


サヤカさんは俺と美穂を値踏みするように見ていた。


「ふう〜ん……。信幸くんって、そういうキャピキャピした娘がタイプだったの?」


「ちょっと〜、キャピキャピじゃなくて、若くてカワイイ娘って言って下さいよ〜」


──ピクリ、とサヤカさんの眉がつり上がる。


「……なんだかおバカっぽいし。意外だな。もっと知的なタイプが好きなのかと思ってたけれど?」


「え〜、いやだなぁ、サヤカさん……でしたっけ? 私に嫉妬してるんですか?」


美穂は、にやりと相手を小馬鹿にするような顔をしている。

それを見て徐々にサヤカさんの冷静さが失わなれていく。


「……はぁ!? 何言ってんのアンタ? なんで私が、振った男の今カノに嫉妬しなきゃなんないのよ!」


「どうだかなぁ〜? なんか未練たらたらに見えますけど〜? ラブラブな私たちの邪魔をしないで頂けないですかね〜?」


「……アンタねぇ……! 私の方が彼と遊んであげてただけなんだから!」


「ふ〜ん、それはどうですかねぇ〜? センパイは、『最初の彼女はつまんなかったんだよな、体も貧相でさ〜』って言ってましたけど〜?」


「──なっ!?──」


サヤカさんの顔が怒りで染まっていく。

俺の方にも鋭い視線が投げつけられている。


(……俺、そ、そんな事言ってないけどぉ!?……)


──確かに、スタイルという意味では美穂は豊満でサヤカさんはスレンダーだ。

美穂の発言が、彼女のコンプレックスを刺激する部分もあったのかもしれない。


(……おいおい、大丈夫かよ……)


流石に言い過ぎなんじゃと心配する俺をよそに、二人の口喧嘩はさらにヒートアップしていった。


「い、いい加減にしなさい! 私と彼は『そういう事』はしてないんだから! 体も何もないでしょうが!」


それを聞いた美穂はさらににやりと笑って──


「ふふっ……『そういう事』ってえっちの事ですか? そりゃそうですよ〜。そんな体、センパイだって抱きたくなかったんですよ〜。私とするときはいつも『美穂の体は気持ちいいな』って、そりゃもう激しく求められて──」


「はぁ!?」


「あ〜あ〜、求められなかった人って可哀想だなぁ〜」


「くっ!? アンタねぇ!! 調子に乗ってるんじゃないよ!」


サヤカさんは既に完全に怒りに我を忘れている。

こんなに取り乱す彼女を見たのは初めてだ。


「サヤカさんの方こそ、調子に乗らないで下さいよ〜。たかが元カノの分際で、私たちに話しかけてこないでくれますか? そんなヒステリックだと今の彼氏にも捨てられちゃいますよ? あっ、もしかしてもう浮気されてるかも?」


「──っっ!!!!──」


サヤカさんが完全にブチギレて、右の拳を美穂に向かって振り回す。


「きゃあっ!?」


美穂が反射的に悲鳴を上げて顔を背ける。


──さすがに彼女を殴らせるわけには行かない。


────ガシッ────


俺は自分の手でサヤカさんの拳を受け止めた。

さすがに大学生の女性のパンチであれば、造作もないことだ。


「──信幸くん!──」


「……すいません、サヤカさん。こいつの失礼な発言は謝りますから……この辺で……。人も集まってきましたし……」


俺たちの騒ぎを聞きつけて、周りに軽い人だかりが出来ていた。

サヤカさんもそれを確認して、引き下がる様子を見せる。


「……ふんっ……。バカバカしい。あなたもちゃんと彼女の教育をしておくことね!」


「……後でよく言って聞かせます……」


「え〜? センパーイ、説教ならベッドの上でお願いしますね〜?」


美穂はまったく悪びれる様子も見せない。


そんな彼女を見て、サヤカさんは「……ちっ……」と舌打ちしてから去って行く。


サヤカさんの背中が見えなくなった頃、俺は美穂に尋ねた。


「……おいおい、なんであんなケンカ売るような真似したんだよ?」


「センパイ、これは布石なんですよっ」


彼女はまた俺の腕に、ぎゅっとつかまりながら説明してくる。

俺と二人でいるときは常にこの姿勢でいるつもりだろうか。


「布石?」


「ええ。あの手のタイプはプライドが高いですからね〜。自分から振ったと思った彼氏が、実は大して自分のこと好きじゃなかったって思うと、プライドが傷つくんですよ」


「ふぅん……」


「マスコミの彼氏ってブランドを欲しがったりするのはその典型だし、『最初から好きじゃなかった』なんて言葉をセンパイに吐いたことからも分かります」


「マスコミ云々はまぁ分かるけど、別れ際の言葉なんて関係あるのか?」


「ありますよぉ。だって普通は全く好きじゃない男に声かけたり、付き合ったりはしないですよね? 自分のプライドが傷つくのが嫌だから、そんな言い方をしたんです」


「……そうなのかなぁ……」


俺には女心は難しすぎる。

女は宇宙だ──なんて言った人が昔いたっけなぁ。


「そうですよ。昔の彼氏が新しい彼女に夢中なんて思ったら、取り返したくなっちゃうタイプですね!」


「ふうむ……」


「サヤカさんにも今の彼氏──つまり大和やまとさんがいるわけですけど、そこと別れたら、きっとセンパイを取り返しに来ますよ! さっきのケンカで私に負けたくないって気持ちも強くなってるでしょうし」


「……ううむ……」


「そこが復讐のチャンス……そう思いませんか?」


「……なるほど……」


「……あとは煮るなり焼くなり……くひひ」


美穂が邪悪な笑顔で笑う。

それを見て俺は小さくつぶやいた。


「……女ってこわい……」


「あら? 安心して下さい、私はセンパイの味方ですからね! 味方でいるうちは心強いですよ!」


「う、裏切ったら?」


「殺します!」


「ひっ……」


背筋に大量の冷や汗が流れているのを感じたまま、目的の場所に到着した。


【あとがき】

タイトルでウザ甘後輩と書きましたけど、美穂はヤンデレの資質ありです。

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