シェルカー
とても安価な電気自動車。
卵の殻、あるいはラグビーボール……実際には回転楕円体のボディ。
一人乗り。普通の自動車に比べてかなり小さい。
不透明なFRP製の下六割。上の四割が透明なエンジニアリングプラスチックで、それが開閉する。
中で、安楽椅子のようにゆったりと座る。荷物は背もたれを開けて入れる。ゴルフバッグと小さめのデイパック程度しか入らない。
コントロールはそれこそ家庭用ゲーム機のようなものだ。
殻をやや下から支えるように、太めの金属のリングがついている。
リングに車輪が5つついている。均等に、正方形に支えているのは自由に動くキャスター。台車や買い物ワゴンに使われるような、支え軸と車輪の中心がずれて自由に回転するものだ。
その車輪もかなり小さめ、太めのオートバイ程度だ。
先端部に、ひとつ別の車輪がある。普通の電気自動車に使われるような、頑丈でホイール内にモーターがある車輪。
その車輪は制御されて動く。二輪のような操舵輪であり、駆動輪でもある。
だから、非常に製造が安価で単純になる。
リング内にバッテリーがあるので、航続距離もそれなり。
速度にリミッターがかかった原付免許で乗れるバージョンと、普通に自動車として動くものがある。それほど高速は出ない。
基本的には「屋根があるスクーター」と言っていいようなものだ。
オートバイに似た操作性は駐車が難しく見えるが、自由に動く残り四輪を車内操作でロックすることはできる。軸に沿って回らないようにロックすれば、バックどころか真横に走ることも可能。
透明なキャノピーは、ちょっとした専用道具があるガソリンスタンドで簡単に塗り替えられる。高速で動くはがす工具、水溶性の透明コーティング塗料、それを乾燥させるドライヤーの三つだけ。
それでほとんどの傷を落とし、透明を取り戻すことができる。