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家庭用重運動ゲーム機

 今日も在宅リモートワーク。朝、通勤時間分の時間が空く、でも雨。

 今朝の通勤時間分の時間も運動する。雨だけど、強い味方がある。

《フィットネスソーズオンライン ホーム5.3》


 屋根のある車庫、一軒家の玄関先など、床が丈夫なコンクリートであり、かつ屋根があることが推奨される。スペースは四畳もいらない。

 集合住宅の室内でも使える《マンション》シリーズもある。


 顔の前にスマホを、汗で困らないよう固定できるヘッドバンドがある。穴が多く水を吸わないものだ。それをつけて、スマホをはめて専用アプリをつける。

 ヘッドバンドから、防水イヤホンを耳に突っ込む。口の近くにマイクもある。

 首と手首に、動きを検出するための、時計部が大きいステンレス腕時計のようなバンドをつける。

 両手で持てて頭がバレーボールぐらいあるハンマーを台に立てかけて出す。

 床の隅に、大きめの炊飯器程度の本体を置き、本体のカメラを覆っていないことを確認し、スマホや無線インターネットとの無線接続を確認する。

 床の後ろに、背筋力計から円目盛りをなくしたような、取っ手のついた板を置く。

 板も本体と通信している。内蔵のバッテリーも充電しておかなければならない。

 付属の、動く幅が普通の階段の1.4倍ぐらいある大きめのステッパーも充電し連動させて置く。ほかにもいくつかのオプションが売られている。

 もちろん、運動靴と動きやすい服装も必要だ。



 それで準備完了、ゲームスタート。

 まず準備運動を指導される。

 ストーリーとしては『ギルド』で、先輩冒険者に友好的に絡まれ、少し稽古をする、というものだ。

 そこで、冒険者仲間とともに軽い体操をする。屈伸、巨大な剣を大きく振るなど。

 巨大な剣。実物は頭が大きいハンマー、それもぶつけても被害が少ないように分厚いクッションに覆われた、先端のねじでウェイトを増減できる片側だけのバーベルに近いものだが、目の前に固定されたスマホの画面では巨大な剣に見える。画面の中だけに刀身が見えている。

 実際に、最大12キロまでウェイトを増すことができる。標準には、現実の歴史で使われたと同様の4キロが推薦されている。

 動きはコンピュータで追跡され、ちゃんとやっていないと冒険者仲間に文句を言われる。


 武器は『吹き矢』などをオプションで選ぶこともできる。


 それから旅に出る。大型の、動きの幅が大きい……踏み台昇降級の負担になるステッパーで、10分少々歩く。その間は定評のあるBGMをじっくり聞くこともできる。

 ゲームそのものがどうしても単調になる分、《フィットネスソーズ》システムに参加するソフトメーカーは、BGMで妍を競う。


 歩いていて少し汗が出て、そこで敵の気配が画面に出る。

 ステッパーから降りて運動靴で立つ。

 何匹も出てくる犬サイズの空飛ぶサソリに、重い剣を次々と振るう。剣からは光の魔刃も放たれ、遠くの敵も切り落としている。現実では、大きな丸いハンマーを振り回し、加速度を検出し本体のコンピュータに流している。

 振り方は、ゲームを買って最初のプレイで選択できる『ギルド』の初心者研修で習うこともできる。現実のあちこちの都市にある、提携ジムで予約して習うこともできる。習うのは示現流などをスポーツ科学者が監修してアレンジしたという『王国流基礎』だ。

 経験者なら剣道でも、フェンシングでも、野球バットでもかまわない。いや、『ナックル』を選んでボクシングや空手でもいい。

 ただし、『ギルド』での試験に合格しなければ……オンラインの向こうのインストラクターに見られている状態である程度動く標的を打てると認定されなければ、冒険シナリオには出られない。

 剣で切り結ぶ間、何度も「ジャンプ」「右に跳べ」「左に跳べ」「しゃがめ」の指示が入る。敵の矢や毒針が飛んできたりする。

 その動きが強烈な運動負担になる。縄跳びやスクワットを混ぜているようなものだ。


『弩』に切り替えろ、という指示があり、剣を置く。

 まず、さっき近くに置いた背筋力計に似たものの板を踏み、鎖を引く。ウェイトトレーニングのデッドリフトと同じ。

 それでクロスボウが装填される。

 そうしたら、ライフルのようなクロスボウを手にし、画面の敵を狙って放つ。画面ではクロスボウを撃っているように見える。

 繰り返す。

 デッドリフトは最高の運動だ。きついなんてもんじゃない。

 ほかにも『弓』もオプションで売っている。やや複雑な構造になるが。


 終わったらまた歩く。

 また剣を振るい、クロスボウを引く。

 冒険が続く。謎解きなどの要素もある。


 オプションの、「呼気検出器」を買ってヘッドバンドに追加すれば、魔法を使うこともできる。強い息を腹式呼吸でぶちこんで詠唱のかわりにする。

 吹き矢がいいスポーツになるように、呼吸そのものもいい運動だ。

 吹き矢そのものも、オプションとして買ってゲームで使うこともできる。



 別のメーカーから、似たようなシステムも出ている。こちらは『双剣』『ナックル』限定で、自動車ガレージ程度のスペースを要求し、テニスのように高速の左右運動を中心にする。

 あるゾーンを守り、多数のゴブリンや大きいスズメバチのような敵を後ろの護衛対象に通さないことが主な目的になる。

 千本ノック同様きわめて運動量が大きく、短時間ですぐシャワーを浴びられる環境でのプレイに向く。

 両手武器や弓に比べ学習コストが低い。


 その変形として、両足を印から動かさずに、両手にそれぞれ軽めのダンベルを握るシステムもある。床下に響かないので安めの集合住宅で売れている。下や横に限界まで手を伸ばせばそれなりに運動になる。



 また、射出器具から紐がつきセンサーを内蔵するボールを射出することで、普通とは少し違うしコートも狭いがテニスもプレイできる。




「小説家になろう」でも、世間のライトノベルでも、圧倒的に売れるのは剣と魔法ファンタジー。

 だからこそそれを楽しむのが、最高の運動になる。


 あの疫病以前もゲームセンターが衰退していたそうだが、なぜもっと早くフィットネスジムと統合しなかったのか。またテーマパークとしても、重い剣を振り回せるものを作らなかったか。

 まああの疫病があった以上、やっていたら潰れていただろうが……



 ついでに《マンション 2.4》の構成も紹介しておこうか。

 同じように顔の前にスマホを、汗で困らないよう解放された形で固定できるヘッドバンドがある。またはテレビやパソコンのモニターに出力できる。

 足回りはボート漕ぎ運動器具のみ。ルームランナーと違い、階下に騒音や振動がいかない。

 剣はなく、クロスボウのみ。

 漕いで、立ってクロスボウを引き、狙い撃つ。それだけなら下の階に足音が響くことはない。

 それでも十分運動はできる。


 ほかにもサンドバッグを殴る蹴る、エアロバイクから弓を引くなど、いろいろなメーカーがいろいろなフィットネスゲームを作っている。

理想は「剣と盾を装備し、群がるゴブリンを斬りまくる」を、室内で下に足音響かせずにやることです。

それに近くするにはどうすればいいか。

足音・衝撃のない剣術はあり得るのか。何ができるのか。

スクワット素振りやワンツーなら足音なしでできますが…

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