合理マンション
5~18階程度の、ある程度規格化されたマンション。
特徴は、冷暖房・換気・風呂・調理熱源がすべてセントラルであること。
セントラルヒーティングは海外では一般的だが、さらに進めてほとんど船舶の域に達している。
マンションの中央に、予備・メンテナンスを含めて二つずつ大きな換気扇・冷房機・ボイラーがある。
他にも、風呂・洗面台からの下水の、毛髪遮断網も一つにまとめている。
無論全体は外断熱されている。
冷房・乾燥は中央の大型エアコンから冷え乾燥した空気を各部屋に送る。各部屋の入り口で冷気を遮断したり入れたり操作できる。
暖房は床を走る何度か曲がるパイプに、中央に二つあるボイラーから熱蒸気を供給する。二つなのは一方をメンテナンスしているときにもう一方を動かすためだ。
浴室に乾燥した空気を流すこともできる。
換気扇は、各戸のトイレやキッチンなどで「吸気」「圧気」を強弱入りで選ぶだけ。ダクトのシャッターが開き、空気を吸い出したり押しこんだりする。
摂氏100度を超える熱蒸気は、調理にも使われる。
専用の炊飯器が各戸にビルトインされており、炊飯時には内釜に米と水を入れて外釜の中に入れて密封、栓をひねるだけで内部が高温蒸気で満たされ、短期間で炊飯される。台湾の蒸気鍋と似ている。
別の箱状のビルトイン設備に、オーブンにホーロー鍋を入れるように全金属鍋を入れて、蒸し料理や煮物・汁物を作ることもできる。
電子技術が高まれば、ヨーグルト発酵温度・パンだね発酵温度・60度前後という肉を最良に加熱できる温度をキープすることもできる。
危険はあるにせよ、それはガスでも電気でも同じことだ。
それだけの設備があればガス・電熱を使わずに生活することは可能だ。料理の幅がやや狭くなるかわりに。
風呂も水をためて、専用のパイプから熱蒸気を水中に吹きこめばあっという間に湧く。船舶と同じだ。安全のため、水圧があること、蓋がロックされていることの両方がなければ蒸気が出ないようにはなっている。
訓練を受けた業者は、蒸気を清掃にも使う。
無論普通の湯も各戸に給湯されている。
また下水も、今の日本人の多くのライフスタイルの欠点を潰している。
ある程度以上新しい集合住宅のユニットバスには、重大な欠点がある。
チョウバエ養殖器だ。
浴槽の、洗い場方面の壁は外せる。だが、気軽に作業するには隙間が狭すぎる。柄付きブラシすら入らない。
そのくせ、髪の毛を一本たりとも下水には流させん、とばかりに網などがある。
たまった髪の毛は腐り、詰まらせ、そしてチョウバエのごちそうになる。
ならば集合住宅全部、好きなだけ流してしまえばいい。下水本管に入る前に髪の毛を防げばそれでいいはずだ。
管理人が汚れ仕事をするのはきついだろう。だが毎日、自動機械で濾し分けられ乾燥されビニール袋に密封された毛髪の集まりを捨てるシステムは難しくないはずだ。