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メガフロート

 メガフロート。要するに陸地レベルに大きい、多数の船をつなげたもの。

 日本では、要するに造船か建設かなど、縦割り省庁の権限争いから禁断技術と化した。

 海外でもそれほど利用されていない。似たようなことがあったのだろうか。


 東日本大震災で、汚染水を受ける桶となり、そして釣り場などになって消えて行ったことも覚えている人はいるだろう。

 動かせる。膨大な収容力を持つ。十分大きければ波に揺れることもない。津波も地震も関係ない。


 メガフロートを封じた、これほどばかげていることもない。

 これさえ解禁すれば、……そして政治の発想をわずかに変えれば、社会問題の大半は解決すると言ってさえいい。かつての日本の。今のアメリカの。今の世界の。今の日本の。

 ……だからこそ封じた、とすれば人類全体から見れば愚かの極みだ。政治上まずいからと壊血病対策、電気、ワクチン、化学肥料などを完封した世界を想像すればわかるだろう。


 たとえば。

 戦後の日本の、いくつかの問題はメガフロートひとつで解決した……それを例にしてみよう。

 成田空港闘争。

 沖縄米軍基地。

 原発。

 過密。

 新幹線や高速道路。

 港湾。

 湿地の破壊。

 水質汚染。

 築地~豊洲の市場。

 全部メガフロートで解決できた。


 九十九里沖でも平塚沖でも東京湾でも、大阪湾でも、メガフロートで好きなだけ大きな空港を作れる。そこから鉄道と道路の両方があり、下には上下水道やガス電気の配管がある橋で陸地につなげればいい。


 沖縄から少し離れた海にメガフロートで基地を作り、その隣に売春つきカジノ船をつけておけば、沖縄県民の故郷が奪われることはない。県民が米軍兵士に強姦されることもない。小学校のすぐそばで夜間発着訓練をすることもない。

 また地図で沖縄を中心とした円を描いてだから沖縄に基地が必要だ、という要求を問題なく満たせる。


 海の上に原発があれば、地震も津波もまったく無関係。津波の前に多くの船が沖に出て助かったことを思い出すといい。電力は海底ケーブルで運べばいい。

 どうせ福島から東京までの長い距離を高圧送電線が走っている。


 過密都市……要するに巨大豪華客船の、豪華を少し減らし巨大を超巨大にしたのをいくつも浮かべ、道路や鉄道でつなげばいい。ついでに上下水道管も。

 今の世界最大級客船は一隻、客5400・乗員2000人前後。パナマもスエズもマックスを無視、場所に応じた喫水だけ注意して、一隻何万人も住める船は容易だろう。実際ある巨大客船のように、二重ドーナツ構造……十数階ある建造物の、右舷・左舷、海側・吹き抜け側の四種類の部屋である必要もない。とてつもなく細長い船を何隻も水面下でつなげば、南向き部屋だけでいい。

 森を切り倒し、権利を持つ人から地上げし、斜面を削り、田畑を潰し、上下水道を整備し、基礎を工事して建築する大型マンションより高価だとは思えない。


 鉄道や道路も用地買収で常に苦しむ。メガフロートならごくごく安い。海水で錆びやすくなるのが少し厄介なぐらいだ。

 それこそ今からでも、東京から大阪まで海の上だけを走る、最低時速100キロ・上限なしの巨大高速道路を作れば日本経済はかなり変わるだろう。時速250キロが標準の大型トラックや長距離バスが多数できれば、それは自動車業界も変えるはずだ。超高速自動車が多数売れることも経済に大きい影響をもたらすだろう。


 港湾……特に日本には、世界にはいくつもある、超巨大なコンテナ船がつき超巨大なクレーンで超効率で荷役する巨大港が不足している。

 それで世界に遅れているという批判も絶えない。

 本質的には、日本は遠浅の海が多く、超巨大船が入れない。巨大な船は海から下の喫水も深く、深い海でなければ事故になる。また海岸近くまで深い良港もすでに開発され、利権だらけで再開発できない。埋め立ての余地も事実上ない。

 なら、メガフロート。沖ならいくらでも深い海で、喫水は無制限。

 メガフロートの巨大な港に巨大なクレーンを据えて、太い鉄道と道路を備える浮き橋・吊り橋で陸とつなぎ、膨大なコンテナを高速で詰み降ろす。

 それができれば、日本の経済力は爆発的に増す。


 日本は湿地を埋め立てて都市とした。特に干潟には多くの環境面の有用性があるし、また湿地を埋め立てた地は常に液状化のリスクがある。

 沖合にメガフロートを作り、陸地の基地部からメガフロートまで吊り橋を作って鉄道と道路と配管でつなげれば、干潟のほとんどはそのままでいい。

 埋め立てはごみにせよ土砂にせよ、膨大な資材を必要とする。それがなくてすめば、多少高級な鋼材とコンクリートを使うとしても、むしろ安いのではないか?


 水質汚染。日本はちゃんとした下水を作る余裕がなく川に、ひいては海に垂れ流した。

 パイプだけ作って、かなり陸から離れた沖合のメガフロートまで運ぶ。大半が浅く沈み外海の波だけ防ぐ巨大人工干潟を作ってそこに汚水を流せば、干潟同様高効率の生物処理になる。


 市場……日本での、築地から豊洲への移転問題。土地の確保や地下水など膨大な問題になった。

 メガフロートにし、陸地の大きい線路・道路網に太い鉄道・道路橋でつなげば、全く問題はなかっただろう。



 世界全体でも、メガフロートや、居住用・超巨大・低豪華・客船で解決できる問題は多い。

 たとえばアメリカでの社会問題……ニューヨークの家賃・マンション価格のすさまじい高価さ。カリフォルニアなどの都市ではかなりの収入があってもホームレスになり、道路に糞尿が散乱しているという。

 ニューヨークもロサンゼルスも海に面している。豪華度を下げた、パナマックス無視で波を無視できる規模の超々巨大客船をいくつか永久係留し、浮き橋の道路と上下水道・電気ガス、余裕があれば都市鉄道を整備すれば、事実上無限に家は供給できる。


 そして、世界の膨大な極貧国、内戦国。豊かなイスラエルでも争いは絶えない。

「そこで食えない人はこっちにこい」と、いくつも豪華度をさらに下げ住むだけの超巨大船を係留し、人々を招く。

 殺し合ってしまうほど対立する民族は別々に。

 故郷さえ捨てればいい。

 仕事がなく、衣食住費用を先進国が持つとしても、内戦と飢餓の国々に与えている援助や軍事の費用よりは絶対安い。

 そして遠隔で見張る仕事、それはある程度でも電波で映像音声を送れるようになってからならできただろう。

 今の技術水準なら、工場の検品や、介護施設を監視し必要が出たら人に知らせる仕事が、地球の反対側の公海上からでも可能だろう。

 さらに技術が進めば、ロボットを遠隔操作して地球の反対であらゆる仕事ができるようになる。


 海上原発、海上養殖漁業プラットホームなどの価値も大きいはずだ。

 メガフロート軍事基地も、国籍を問わず巨大な価値を持つだろう。


 今の時点でも、海底原油採掘のための海上リグは巨大なものが多数ある。



「合理日本」がメガフロートで発展していく……それを考えると、日本の東京・名古屋・京阪神の三大都市圏がどれも不利なのがわかる。

 東京も名古屋も湾の奥。京都は海がなく、大阪神戸も瀬戸内海という狭い海。

 それは多くのプラス面もあるが、メガフロートで拡大するには不利だ。


 例えば東京からは?

 平塚から相模湾。九十九里や香取から太平洋。

 どちらであっても、東京からはかなりの距離になる。香取はともかく、平塚や九十九里は真水の確保にも不安がある。

 東京湾の、房総半島沿いにメガフロートを多数連ね、中枢に太い鉄道と道路を通しつつ延長し続ける。時々陸地に連絡できる、鉄道・道路・水道ガス電気パイプの浮き橋も作り、それにつながった沿岸のやや内陸も都市化していく。

 それを繰り返すことで、最終的には東京湾を出る……

 どの程度の面積になるだろう。「現実」の、八王子埼玉方面に広がった巨大東京と同様の人口収容力にはどれぐらいで追いつくだろう。費用を比べたらどうなのだろう。


 たとえば、今の千葉駅周辺から、最短距離で九十九里まで新幹線級の鉄道・複々線の在来線・六車線以上の高速道路・六車線以上の通常道路をぶち抜くには、どの程度の費用とエネルギーが必要だろう。

 その途上も都市化していくだろう。

 東京から千葉駅までの鉄道や道路は、陸上か、湾岸か、それともメガフロート上かも問題となる。


 名古屋も同じように、湾から出るまで、また外洋への近道を開くことも考えなければならない。

 また、京阪神をどうするかも大きい課題となる。


 外洋に面した、現実の日本では比較的小さいが、メガフロートが中心となる世界では超巨大都市圏になれる地域もあるだろう。

 広い外洋に面し、ある程度の平野部があり、何よりも真水の供給力が圧倒的に高い。できれば東京から容易に太い新幹線でつながる。

 どこがあるだろう?

 そこから、膨大なメガフロート都市が広がっていく。


 発想を変えてもいい。

 日本の大都市は夏暑く冬寒い。なら、都市ごと夏は北海道沖、冬は鹿児島沖に移動すれば、冷暖房費用はかからない。



 このようなことに使うには、メガフロートの製造面でも革新が必要だろう。鉄に塗料ではあまりに多すぎる。

 薄い鉄板の両面にやや薄くコンクリート、それを超大量生産できる……一部分ずつ作り、つなげていく技術も必須だろう。


 それを絶対に考えることも許さない。絶対にできないと決めつける。


 メガフロートを考えてはならない……それは地球人全体の法なのか?

 どれほどばかげていることか。

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