AR彼女
◆作品名
AR彼女
◆作品属性
新技術、恋愛
◆説明
スマホにはカメラとGPSと傾きセンサーが付いている。 ARとはこれらの機能を使って、カメラで写した映像にリアルタイムで3Dキャラを重ねあわせて表示する技術である。 ARを使えば、現実世界の特定の場所にメッセージを残したり、空間にお絵かきをしたりできる。 そして誰でもスマホのカメラを通すことでメッセージやお絵かきを見ることができるのだ。 AR技術は進化して、誰でも仮想世界にプログラムを設置できるアプリが登場した。
◆プロット
第一章 〜アプリの説明〜
[オーバーレイワールド ver0.2]
これがスマホ向けARアプリの名前だ。
この物語の世界ではスマホに入れていない人を見つけるのが難しいほど流行っている。
このアプリは自分がプログラムした物体を仮想世界に設置することができる。
定型文を喋るキャラクターを設置したり、情報交換するための掲示板を設置したり、砂漠にひたすら植物のオブジェクトを設置するなど、設置するものはそれぞれのユーザーのアイディアに委ねられている。
ドッキリ系のプログラムもある。
地面の絵を設置して、人がその上に乗ると地面に穴が開いたような絵に変化するというものは、初めての人を驚かせるだろう。
ver0.1では安全のために設置したプログラムの移動は許可されていなかった。
現在のバージョンであるver0.2では、プログラムが自分で仮想世界の中を移動することができるようになったのだ。これによって表現の幅が広がった。
ユーザーがカメラで写した空間は、自動的に3Dデータに変換されてサーバーに地図データとして蓄積される。
そのため設置したプログラムは地図データを照合しながら移動することで、現実の物体を避けて移動することができるようになった。
今までのARにあったような、現実にある物体を透き通ってしまったり、物体の手前に表示されてしまうなどの不自然さが無くなった。
オーバーレイワールドは初めは広告に利用された。
何もない場所に広告看板を設置することができて、しかも停止画ではなくて動画を設置することもできる。しかも看板の設置費用や撤去費用はいらないのだ。
オーバーレイワールドアプリを提供するオーバーレイワールド社は、この広告収入を運営費とした。
次にオーバーレイワールドはオタクのオモチャにされた。
仮想世界には精巧に作られた怪獣や2次元美少女などのオブジェクトが設置されて、仮想世界は博覧会となった。
とある場所では仮想物体の積み木で30mほどの高さのタワーが作られた。
仮想物体の積み木には物理計算が適用されていて、スマホの操作で積み木を持ち上げたり、積み木の上に積み木を載せたり、崩すことができる。
しかし30mは前例がなかった。ARユーザーは無茶をするのが好きだった。
公園でユーザー主催のARファッションショーが行われた。
仮想物体で作られたリアルな服を被写体の体に着ることができるのだ。
着せたら写真撮影をして記録を残せる。
現実の服と違って着替える手間がなく、お手軽に着せ替えを遊びをすることができた。
とあるユーザーが剣と魔法のプログラムを作った。
範囲を決めてプログラムを設置すると、その仮想世界エリアではモンスターが徘徊するようになった。
モンスターと戦ってレベル上げができた。
ファンタジー世界が満喫できた。
剣と魔法のプログラムは好評で、各地に専用ダンジョンが作られた。パーティを結成して巨大迷路ダンジョン攻略が楽しめた。
生物学者は本物の猫と間違えるほどリアルな挙動をする猫プログラムを作った。
猫プログラムは本物と同じような動きで仮想世界で生活をした。
この猫プログラムは飼っても家が汚れることはないし、金がかからないし、実際に猫が死んでしまうこともないので人気になった。
猫プログラムはオープンソースだったためにコピーして設置する人が増えて、仮想世界は猫まみれになった。
しかしいくらAR技術が発達しても、AI技術は発達しなかった。
現実世界と仮想世界が混ざりつつある世界であっても、今だに言葉の意味を理解しない人工無脳レベルのAIしか実現していなかった。
そんな現実味のある世界で主人公の物語は始まる。
第2章 〜公園で美少女オブジェクトに出会った〜
男主人公はボッチだった。
一人でオーバーレイワールドアプリを起動しながら町中を歩いて、見つけた仮想物体を写真にとってコレクションすることを趣味としていた。
ある日夜の公園で美少女オブジェクトを見つけた。
精巧に作られたオブジェクトだと感心しながら写真をとっていると、彼女は話しかけてきた。
「盗撮は感心しないわね」
しばらく会話をして、なんやかんやあって仲良くなった。
第3章 〜デート〜
何度か公園で会ったのち、公園以外の場所にも行くことになった。
動物園や水族館、遊園地や博物館や映画館、カラオケやショッピングなど、様々な場所に一緒に行った。
現実では一人だったけど、実際は一人ではなかった。
仮想物体は現実世界を見ることができない。
仮想物体が現実世界を見るにはスマホで見たい方角を撮影する必要があった。
主人公は彼女のために様々な方向を撮影した。
そして彼女の反応を楽しんだ。
ここでオーバーレイワールドアプリの仕組みを説明しておこう。
アプリの運営会社は、アプリを起動しているスマホの場所と、仮想物体の場所しか管理していない。
スマホの場所が仮想物体のいる場所に近づくと、その仮想物体を管理するユーザーのサーバーに接近を知らせるのだ。
すると仮想物体を管理するサーバーからプログラムが配信されて、ユーザーのスマホ上でARの状態で実行されるのだ。
運営会社は仮想世界という場所を提供してユーザーと仮想物体の橋渡しをしているが、それ以上のことはしていないのである。
なので仮想物体は比較的自由にプログラミングすることができた。
スマホで写した映像をサーバー側で認識できるようにすることも可能というわけだ。
今までの仮想物体が風景撮影を必要としなかったのは、仮想物体は風景に関係なくユーザーに対してのみアクションを起こせば良かったからだ。
第4章 〜AR彼女の正体〜
とあるデートのあとに彼女から伝えられた。
AR彼女はプログラムで動くAIではなくて、人間が操作をする仮想物体だった。
ベッドの上でパソコンで仮想物体を操っていたらしい。
仮想物体の中の人は女性だった。
病気で外を満足に歩けないので、仮想物体を操作して屋外の人とコミュニケーションをとっていたらしい。
そこで主人公と出会って付き合うようになったとのこと。
色々な場所にデートに出かけて、会話ができて嬉しかったと伝えられた。
正体を知った主人公は困惑した。
今までAIだと思っていたので気軽に話せていたのだ。プログラム相手なら何も心配する必要はなかったのだ。
それが急に女性だと判明したのだ。
生身の女性はボッチにはきつかった。
しかし現実の彼女に会いに行きたいと思った。
主人公は彼女にその気持ちを伝えた。
彼女は承諾した。
ちなみに彼女の診断結果はグリオーマ グレード4。
主人公は彼女が病院で亡くなった時に悲しむのだった。