貴方様は王太子ではありませんことよ?
初投稿です
n番煎じの婚約破棄物
「パトリシア嬢!お前との婚約関係は今この場で破棄させてもらう!!」
ここは主に貴族達が通う学園
それも今は卒業パーティーの真っ只中ですわ
そんな中失礼にも私を指差しながら下品にも声を荒げるのは
わたくし達が三年間通って来た学園のあるヘルドナート王国の王子、
リチャード・クスリプト・ヘルドナート様
そして今しがた破棄宣言をされましたが
まだ私の婚約者でもありますわ
「そしてマリア嬢にした数々の仕打ちに対し謝ってもらう!」
「リチャード様?いきなり何をおっしゃっているのかしら
わたくし、話の流れが読めませんわ?」
マリアさんって半年ほど前に編入してきた男爵令嬢だったかしら?
リチャード様と一緒に出席したパーティーでこっちをものすごい顔で睨んできてた子
それで、その子がなんなのかしら
「しらばっくれる気か!
私とマリア嬢の仲に嫉妬し、取り巻きを使い教材を隠したり影からコソコソといじめて居たそうではないか!」
「取り巻きだなんて……私はそのような事を命じたおぼえはありません」
「嘘をつくな!挙げ句の果てには先日マリアを階段の上から突き飛ばしたそうだな、落ちた際の怪我が対したことがなかったから良かったものの、そのような野蛮な女をこの国の王太子である私の妻として迎え入れることはできない!」
突然の婚約破棄にあっけにとられていた周りも
徐々にザワザワと騒ぎ出してしまっていますわ
リチャード様はそんな周りの反応に、わたくしがいじめていたからという事に対してざわついているのかと思っているのでしょうか
得意げにこちらをご覧になさっています
周りはわたしがマリア嬢をいじめていたなんてそんな些細なことでざわついているんではないというのにねぇ
「そんな…わたしは周りの方々を使ってそこの、マリアさん?をいじめる事などはしておりません!」
「そんなはずはない!私はたしかにこの目で見たぞ!
ボロボロになったマリア嬢の教材やドレスの数々を!」
私はこちらに向かって来ようとする騎士たちや関係者たちを手で制しつつ、話を続けさせてもらいます
「それを私のお友達がやったという証拠はありますのでしょうか?お友達の誰でしょう?いつの事ですか?それを私が指示したという証拠は?」
「証拠か!それはお前が私の婚約者だったからだ
大方嫉妬に狂いそのような指示をしたのだろう
性格の悪いお前の事だ、自分で手を下す事はしなかったのだろう?」
わたくしが聞いたのは証拠だけではないのいうのに…
リチャード様は再び得意げな顔でおっしゃりました
まさか自分の言っていることなど何も間違ってないとおもっているのでしょうか
「嫉妬で、ございますか?人の気持ちは本人にしか計りかねないもの
それは推測であり証拠とは言いませんのよ?おわかりになられますか?」
ついに私をお前呼ばわりしてきたリチャード様に対抗し、
こちらもバカにしたように子供に諭すような口調で煽る。
「っ!お前はいつもそれだな!そうやって私をバカにしてくる!
今まで言ってなかったが、私はお前の事が大嫌いなんだ!」
「……そうですね、それは存じ上げていましたよ?」
「なっ!知っていてあんな……」
性格が悪いのもリチャード様に嫌われているのも自他共に認めているですが……
「ですが、面と向かって言われると結構傷付きますのね」
「パ、パトリシア嬢?」
柄にもなく私がしおらしくなった為か動揺するリチャード様
するとそこに横槍を入れてくる令嬢が1人
その令嬢はこちらの様子を伺っている周りの人々の間を割って出てくる
「そんな演技したって私は騙されないわよ!
リチャード様、惑わされないでくださぁい
私はこの女にどんなに辛い目にあわされたか!」
とても上品だとは言えない子供っぽいピンク色の、言うなれば安くてバカっぽいドレスをきた一人の令嬢がキッと睨んでくる
でもまぁその顔つきは可愛らしい顔をしていますわねぇ
「そう、だな、そうだよな」
「そうですよ!リチャード様は幼い頃からこの女に振り回されてるって言ってたじゃないですかぁ
本心を伝えてあげてぇ離れるのがいちばんですよぉー?」
このタイミングで出て来た上
リチャード様に親しげに抱きついたということは
彼女がマリアさんで間違い無いでしょう
話した事はなかったけれど
随分とその、お間抜けな喋り方をなさるようで…
頭も舌も足りてない男爵令嬢はそのまま話しつづけてます
「それにぃー、リチャード様はこの国の王様になるんですよぉ
こんな女さっさと追い出して仕舞いましょうよ
だいたい貴族でもない人がなんでこの学園にいるんですかぁ?」
「それは……」
「…リチャード様、ついでにまりあさん?も
何か勘違いしてらっしゃるようなのですが」
「私達がなにを勘違いしてるって言うのよ!」
キーキーとうるさい男爵令嬢は放っておいて話を続ける
「リチャード様、
この国はすでに第一王子のマンサム様がいらっしゃいます、いえマンサム様だけではありませんね
第二王子や第三王子、お兄様が3人ほどいらっしゃいますわ」
「そうだな、それがどうしたというんだ」
「リチャード様はこの国の第四王子でございます
それがなぜ王太子という発言や
そこのマリアさんもおっしゃっていたこの国の王様になるという風に考えられるのでございましょうか?」
リチャード様はこの国の第四王子
上に3人もお兄様がいらっしゃるのにどうしてそんな考えになってしまうのかわたくしには理解できません
「マンサム兄上は病弱で立つのも辛そうにしていた、
そんな状態では王位は継げないだろう?
今も出歩けず部屋に閉じこもっているではないか!」
「いつの話をしてらっしゃるんですか?
マンサム様がお身体が優れなかったのはもう昔の話です
お部屋から出てきていないのは病床に臥ているのではなく、王太子、として執務の代行をしているからですよ」
その事をきいたリチャード様は出だしの覇気はどこへいったのやら、戸惑いつつ話を続けてくる
「なんだと!だが、私は……」
「まだ他のご兄弟の理由を聞いていませんが?」
「…あとの兄上は、王位は継がないと言っているではないか、二人とも軍事や研究に熱心である」
「この国の次王は現王による嫡出子の中からの指名制です。そこに本人の意思は関係ありませんわ。お兄様方のわがままが通るとでもお思いなのですか…」
「な、ならば!私はなぜ、周りから次期王だと言われているのだ!!」
「え、本気でおっしゃってます?それ?」
「幼い頃から!それこそお前と婚約した頃からずっと言われていた!」
「…そうでしたか、たしかに貴方様はそう周りから言われてもおかしくないでしょう
そこを勘違いしておられたのですね 理解できました」
「どうゆうことだ?こちらは何も理解できていない
お前の言っていることは矛盾している
お前は私が王太子ではないと言うが次の王だというのはおかしくないだと?どうゆうことだ!」
「では先ほどのマリアさんの質問にも一緒に答えましょうか、貴族でも無いわたしがこの学園に通っていた理由
それは私が隣国、アルヴァーナ王国の女王だからです」
「は?」
私の発言にあっけにとられていますわね
婚約の挨拶でも私がアルヴァーナの女王だと伝えてますがそれもリチャード様が幼い頃のこと
自国や他国の情勢についての勉学もあまり熱心ではなかった
ようですし、忘れていたのでしょう…
いや、忘れていては困りますが、それはおいおい我がアルヴァーナに連れて帰ってからまた勉強させれば良いのですわ
「その婚約者である貴方は女王の婿として、王という立場になられるからですの
決して貴方がこの国の王になるからそう言われていたのではありません」
「ならば……わたしは、」
「…そう、貴方様は王太子じゃありませんことよ?」
あの卒業パーティーでの一悶着。
あのあと途中から入ってきたヘルドナート王には頭を下げられ、その王の指示でマリアさんは不敬罪として連れて行かれましたわ
リチャード様もあの場ではマリアさんと一緒に連れて行かれましたが、一定期間謹慎という名の再教育をされるようです
婚約の件はというと、あらゆる条約が我が国へ少しだけ有利な物に代わり、相手が第三王子となりました。
確か第三王子はヘルドナート王国の騎士団長を凌ぐほどの武力があると言われているお方、第三王子の希望と聞きましたが第四王子の尻拭いとは言えそんな方を他国に差し出してよかったのでしょうか?
それに第三王子はわたくしの好みではないというのに
わたくしの好みは、もっとこう…それこそリチャード様のような線の細いスマートな方がいいのですが…
自国に戻り、好みではないはずの第3王子に溺愛され絆されていくわがまま女王お話は、また別の物語で…。
読んでいただきありがとうございます。
最後の方は会話分だけになってしまいましたが、
中途半端をなんとかしようと思い書き直しました。
(第三王子×パトリシアの物語は私が読みたい。)