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ありすに笑う  作者: めあり
一章 宗教神の傷と
20/24

貮拾 愛すじゃなくてありす。

 ◇


「…………はぁああああああああああっ!!」


 僕は咆哮する。


 咆哮しながら、紅く濡らされたその刀身を、悪魔のようにいかる神に叩きつけた。


 瞬時に振り翳したそのやいばは、やはり対神と言うだけあって、右腕を蒸発と比喩しても過言ではないくらいに、一瞬で消滅させた……さながら灰のように。

 その、既に消えてしまった腕があった場所からは、代わりにどっと血が溢れ、ありすを紅で濡らす。あたりには、血が飛び散った。


 続けて二発、三発と刀を思いっきり叩きつけ、左腕左足がこれまた消滅。血が吹き出す。


 あくまで斬るのではなく、叩きつける。


 単純に斬るよりも、刀身を神に叩きつけたほうが効率がいい──とありす本人は言っていたけれど、でもそれが本当のことなのかはさて置き。


《────!?》


 神は、右腕左腕左足を失ったことによって、さらに顔を怒りで歪めた。相変わらず、そのことばはわからないけれど。


「…………ッ!」


 しかし。


 しかし、神のことばがわからなくたって、ヤツが何をしようとしているかくらいは、一目でわかった。


 ──肉体再生。


 消滅したと思われていた両腕片足は──僕が一瞬眼を離した隙に、それら全てを再生していたのだった……いやむしろ、再生と言うよりも元に戻ったと言ってもいいくらいに。


 そう。


 神様は当然のごとく、治癒能力を持っていた……あの神に限らずとも、どの神だって、当たり前に持っている。


 迂闊だった。


 いや、たしかに神には治癒能力があると言うのは知っていたのだけれど──それでも、こんなに早いとは思わなかった。

 これはこの眼の前の神に限る話なのだけれど、ごく稀に、治癒のスピードがとてつもなく早い神がいる。


 それがまさか、こいつだったとは……。


「くっそ……!」


 その事実を確認しながら、僕は一旦間合いを取る。

 そして、ふぅ、とひとつ息を吐いた。

 息を吐いて、気持ちを落ち着かせて、上がった息を整えていた──直後。


 やられっぱなしだった神は、いつの間に手に入れたのか、西洋風の剣を僕に向かって振り下ろす。

 その攻撃を間一髪のところで避ける僕。けれど髪の毛が掠れていくばくか切れてしまった。


 神の攻撃はそれだけに収まらず、二度、三度とその馬鹿でかい剣を振り回す。僕はそれを避けるので精一杯で、とてもじゃないが反撃できる隙もない。


 そうして。


「いいっ…………たぁああああああああっ!?」


 ただ乱雑に振り回されていた西洋風のサーベルは──ついに僕の脇腹に直撃した……同時に、脇腹の肉が抉り取られる。


「か…………はっ!」


 思わず、その場に座り込んでしまったが、しかし神の攻撃はまだ止まらない。


 僕にサーベルの切っ先を突きつけた神は──「これでトドメ」と言うような顔をしていた。


 ……いや実際、これがトドメなのだ。





 僕が──『普通の』専門家擬きならば。





《────!?》


 神は、その剣で僕の躰を貫く──!


 貫く──その寸前で。


 僕は。




 ありすいんざありすで、神のサーベルをへし折った。




「治癒能力が使えるのは、何もお前だけじゃないんだぜっ!」


 異能力【回死治療アレナ・リザレクション】。

 それが僕の──アイデンティティ!


 ともかく、ヤツの剣をへし折った今がチャンスである。

 絶好のチャンスだ。


「ふぅ……」


 一度息を吐いて──


「…………うぉおおおおおおおおおっ!!」



 ──僕は弾丸ごとく飛び掛った。



 足がはち切れそうなくらいに思いっきり走り出す。


 そうして、神を眼の前にするくらいに間合いを詰めて──僕は烈火の剣を力の限り、思いっきり叩き込んでいった。


 腕がもげて千切れんばかりの速度で、僕は何度も、何度も何度も、神の全身に刀を叩きつける。


 右手。

 左手。

 右足。

 左足。

 胴。


 闇雲に。ただ思うがままに。本能の赴くままに──僕は次々と神の身体を灰のように蒸発させて往く。



 全身は血で溢れかえり……。



 そして。



 トドメは……!




 頭を──貫く!




《────!!》


 頭に刀を突き刺したところで、ようやく神はその存在を全て消した……跡形も無く、雪躪(ゆきにじむ)紀色きいろの神様は、この世──どころかあの世からさえも、消え去った。



 これが神狩り。



 僕の専門で、そしてありすいんざありすの大好物でもある──



「…………かはっ」


 宿り主だったユキニジムは、そんなことばにならない声を上げて、それから気絶した。





 こうして、今回の『事故』は解決したのだった──

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夏果ての僕、きっと世界は救えない。
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