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ありすに笑う  作者: めあり
一章 宗教神の傷と
14/24

拾肆 怪物荒まり給うて。

 月曜日。


 一昨日──つまり、土曜日、えりなとのデートも終わり、悠々と家に帰ってきたら悠莉から問いただされたという、ある意味であの何でもなかったような夏休み以上の地獄を体験してしまったような僕である。


 そうして翌日の日曜日は、何だか外に出る気がまったくもって起きなかったわけで、かと言っても、家で何か(その何かが思いつけば日曜日は暇じゃなかったのかもしれないけれど)をやる気分でもなかったので、結局、究極的に言えば、家でごろごろ惰眠やらなんやらを貪っていた。ぶっちゃけ、僕の休日はデートする日以外は大概こんなものなので、別に、驚くことはないだろうけれど。


「──」


 いやいやまあまあ。


 こんな無駄でしかない思考を巡らせたところで、憂鬱で陰鬱な月曜日への思いは消えないので、さっさと準備をして学校に行くことにしよう。

 やってきてしまった月曜日はもう戻すことも帰らせることもできないので、ここはむしろ、潔く諦めるしかない。


 いや、違うな。


『やってきてしまった』とは言ってしまったが、しかし、それはちょっとばかし違うような気がする。やってきたと言えば、何だかかんだか月曜日が自らこちらに向かってきたみたいな言い方だが、けれど僕の場合、日曜日をだらだらと怠惰に時間を費やしたわけなので、逆に、僕が月曜日に向かっていったほうが正しいのだろう。


 無駄なことはもう考えず、本能の赴くままに階段を降りることにした。もちろん、もちのろん、スマホに来ていた通知を確認しながらである。ながらスマホはたしかに危ないが、それでも慣れてしまえばなんてことはない──と、今年で既に十六回階段から落ちた僕が言うのはいささか説得力に欠けるのは事実である。ちなみに昨日落ちた。腰痛い。


 さて。

 話を取り戻して、奪い返して、僕は階段を降りた先にある、リビングへと続くドアをがちゃりと開ける──瞬間、バターのこんがり焼けたにおいが一瞬僕の鼻腔を蕩かし、消えた。


「あ。おはよ、おにぃちゃん」


 エプロンをあざとく着た悠莉は、その甘い色の髪をふわりと踊らせながら、僕を向いた。にかっと笑うその表情は、何とも微笑ましい限りである。


「あぁ。おはよう」


 もちろん、そんな表情に見惚れるしまうようでは、兄失格なのではないかとも思うけれど、しかし。


 しかし、だ。


 美少女に見惚れないでどうする、と僕は言いたい。たしかに、兄妹という壁はあれど、それでも、彼女はれっきとした(と言う表現もおかしいのかもしれないが)美少女なのだ、これを可愛いと思わないのなら、そいつは男失格と言ってもいいだろう。兄失格以前に、男失格である。


 ともかくとして、彼女が可愛いとか見惚れちゃうとかそんなこと関係なく、僕は、単純に彼女のことを尊敬している。

 急に、本当に突拍子のないような話かもしれないけれど、しかしそれさえも恐れることなく言ってしまえば、彼女をこころから尊敬していた。


 尊敬、と言うのはつまり『憧れ』という意味では決してなくって、どちらかと言えば『彼女には頭が下がらない』と言ったほうの尊敬であろう。

 毎日毎日、文句のひとつも吐かずに僕の身の回りの世話や、家事全般、そして見えないところでもサポートしてくれている彼女──結梛悠莉は、やはり尊敬に値する人物だ。


『憧れ』という意味合いの尊敬では、そりゃあ阿須舌マキヤをそれなりに尊敬しているけれど、なんて言うか──『感謝』という意味合いでは、専門家の阿須舌さえも到底及ばないくらいには、悠莉を尊敬していた。していた、と言うか、今も現在進行形でしている。


 と、まあ。

 ぐだぐだこころの中でぼやいていたら、ことっ、と僕の前にお皿が置かれた。上にはフレンチトーストが乗っている。


「今日は、フレンチにしてみようかと思って」


 いや。

 たしかにフレンチと名前に入ってはいるものの、決してフランス料理ではないということをどうやら彼女は知らないようだった。けれど、何だかそれを指摘するのも憚られてしまったので、やんわりと、「おー、おいしそー」と言っておくことにした。まあ、まるでそれでは本当においしそうと思っていないように聞こえるけれど、そういうわけでもなく、本当に、わりと本気の方で、それはおいしそうである。


「いただきまーす」


 悠莉も僕の向かいに座ったところで、ふたり一緒に手を合わせる。



 こんな時間が、いつまでも続けばいいと思っていた──




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夏果ての僕、きっと世界は救えない。
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