有名人
僕には気になる人がいる。
恋愛の話ではない。
だいたい今の僕に恋愛をする余裕なんてない。
初めての女子校生活、慣れるのに精一杯なのだ。
その上、委員長から女友達を5人作るように命令されている。
もちろん拒否権などない。
幸い、4人まで作ることが出来た。
あと1人なのだ。
話を戻すと僕の気になる女の子とは神居 天巫さんだ。
初めて目にしたときからかなり気になっているのだ。
見た目が美少女だからではない。
確かに美人なのだが、どこかで観たことがある。
出来たばかりの友達に聞いてみるとその中の1人の芸林さんが
「あぁ〜、あの娘昔テレビに出ていたらしいよ。超能力美少女として。一時、テレビに出ずっぱりだったから。」
さすが噂好きの芸林さん。
どうりで観たことあるはずだ。
でも今の神井さんはあることがきっかけで人と関わることを極端に拒否しているように見える。
事実、僕が何回も話しかけてもずっと無視するばかり。
もちろん、僕だけではなくいろんな人が声をかけては撃沈をしている。
そんなある日、偶然僕は神居さんと2人きりになることがあった。
僕は何か話しかけたいが何も話題が思いつかない。
沈黙の時間が非常に気まずかった
そうこうしていると意外にも彼女の方から話しかけてきた。
「あなた、なんなの。私に話しかけたいオーラがうざいんだけど。」
僕はビックリした。
言葉はきついが、彼女から話しかけられたことなどないからだ。
僕は会話を途切らせないように慌てて
「ねぇ、君も能力者なの?何か能力をを持っているの?」
と聞いてみた。
彼女はあきれたようにしばらく黙っていた。
僕も質問がまずかったかなと思った。
そこで僕は自分の身の上話を話すようにした。
「僕は小、中と男子として育ってきたんだ。それがある日、変な女子高生が家にやってきて実はあなたは女子で能力者なんだと告げられた。今の男子の姿は魔法で変えられていただけなんだと。とんでもない話だよね。そしてそれから魔法は解除され僕は女子として生きざるを得なくなったんだ。学校だってせめて共学を希望したんだけどこの学校しか能力者を受け入れていないんだと言うことで無理矢理入れられたんだ。本当、僕の人生無茶苦茶だよね。」
僕の話を聞き終わった彼女は少し笑っているように見えた。
そして彼女は
「ごめんなさいね。笑うつもりはなかったの。でも、あなたも私と同じぐらい苦労しているんだと分かっちゃったから。」
そう言い終わると彼女は深呼吸をしてから話の続きをした。
「あなたがつらい身の上話をしてくれたからいいわ。私も自分のことを少しだけ話すわ。私は小学生の頃不思議な力に目覚めたの。私が目覚めた力はものに触れずものを動かす力、つまり念動力よ。実家が神社だったから超能力巫女少女として一躍有名になったわ。それこそテレビにも出てたしね。ところがしばらく経つと私の力がインチキだと週刊誌が連載し始めたの。それから、世間の風向きは一気に変わったわ。それこそバッシングの嵐。外にも出れないような状況がしばらく続いたわ。そして、しばらくして国の機関が私の家に来て能力者の保護の名目で施設に入れられたの。施設に入れられてからしばらくしてからのことだけど、私はとんでもないことを偶然知ってしまったの。私みたいな能力者は公に出来ない存在らしいの。だから、この学校に集まっている能力者は秘密裏に国に集められてきた人たちらしいの。え〜と、だから何が言いたいのかというと、あのときの私へのバッシングは実は国が主導してやったことらしいの。それを知ってショックだったわ。それから全ての人を信用できなくなったの。でも、あなたも相当苦労しているみたいね。あなたとだったら打ち解けられるような気がするわ。」
僕は彼女が話しかけてくれてほっとしたすると共に彼女の身の上に同情もした。
その後、いろいろなおしゃべりをした。
たわいもない話だ。
しばらく時間が過ぎた頃に僕は彼女の能力を観たくなった。
ただ、お願いをするだけじゃ失礼なので僕が先に能力を見せた。
彼女は非常に驚いてくれた。
次は彼女の番だ。
彼女は
「私の持っている力は念動力、サイコキネシスとも言うわ。と言っても私の力は横に動かすだけの単調な動きしか出来ないの。つまり上下の動き、持ち上げることは出来ないの。」
と言って近くの机を動かし始めた。
ズズーッと音を鳴らし机がゆっくり動き始めた。
すると彼女は「あ、やばい。」と発した。
その瞬間、その机はいきなり急加速し壁に激突、その勢いで窓ガラスを破り外へと落ちていった。
僕は思わず割れた窓ガラスの先を覗き込んだ。
幸い人がいなくて良かった。
彼女の方を観るとかなりおどおどとしていた。
まぁ当然のことなのだが。
そして彼女は
「久しぶりに力を使ったから、制御が出来なくて。でも、私にこんなパワーがあるとは思わなかった。ついこの間までは机を数センチ動かすのがやっとだったのに。」
恐らく短期間で急激に能力が上昇したのだろう。
思春期の能力者にはままあることなのだそうだ。
そこで僕はある提案をした。
「君の能力の制御の仕方を僕は知っている。性を捨てた代わりに僕は能力を授かった。それもチートなぐらいにね。その能力のすごさはさっき観てもらったとおり。だから、僕はその能力の制御の仕方を教えたいと思う。今は無理だから、後日にね。その前に僕と友達になって欲しい。」
彼女はこくりと頷いた。
ようやく友達5人集めることが出来ました。
でも、これからの女子校生活、どうなることやら。
希望と不安でいっぱいです。