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生徒会長

 放課後、僕は生徒会室に呼び出されている。

それはお姉ちゃんが朝、出掛けるときに放課後生徒会室に来ることを言われているからだ。

それにしてもお姉ちゃんという呼称はまだ慣れない。

お姉ちゃんの強要だから仕方の無い事だけど。


 時間厳守だというから約束の時間の10分前に僕は生徒会室の前に着いていた。

ただ、生徒会室には入れないでいた。

なぜなら、生徒会室の中でなんかのやりとりをしているみたいで入るのには躊躇とまどう状況だ。


 「いい、妹が来たらこの台本通りお芝居をしてくれたら良いから」

「でも妹さんを騙すみたいで気が引けるんだけど」

「あなたがそんなんだから妹がレベルアップできないの。

能力者としても女としても。

もっと厳しく接しなきゃ」

「でも、この寮の台本を短い時間で覚えるのは」

「そんなこと言っている余裕はないの。

いい、あなたは「あいすごおりふぁいぶ」の中で1番記憶力がいい。

そして、頭脳も飛び抜けている。

コミュ力や気配りも私の知る限りピカイチ。

だから、私の妹の面倒係に任命したの。

1年留年させたのは悪かったけれど」

「別にそれは気にしてないのだけど、だったらこんな直前に200ページ以上もある台本を渡さないでください。

もう約束の時間の5分もないじゃないですか」

「とにかく四の五の言わずに覚えなさい。

うろ覚えでもいいから。

流れだけでも分かればいいから」

「読むのだって大変なんですよ。

この量は」

「妹だったら1分で覚えられるんだけど」

「そりゃぁ,あおいさん(主人公)は瞬間記憶能力があるから。

私は普通の一般人ですよ。

能力者ではありますけど」


 生徒会室の前でそんな会話が丸聞こえだ。

入れる訳がない。

そうこうしているうちに予定時間に入った。

予定時間に入るとさっきまで騒がしかった生徒会室が嘘のように静まりかえった。

僕は生徒会室に入った。


 僕が入った瞬間にお芝居が始まったようだ。

姉が

「なんであなたが生徒会長なの?

私は妹を推薦したはずなんだけど」

「そりゃぁ,私の方が強いからに決まっているからじゃないですか。

確かに能力ちからあなたの妹さんの方が上かも知れませんけど実戦形式では負けない自信がありますから」

「喧嘩売ってんの?

それとも「チャイルズ」の実力を知らない馬鹿なの?

あなたが妹に勝てるわけがないじゃない。

一刻も早く妹に会長の座を譲りなさい」

「はぁ!?

何寝ぼけたことを言っているんですか。

そっちこそ顔洗って出直してください」


 どうやら僕に喧嘩の芝居を見せたかったようだ。

お姉ちゃんの迫力ある演技は見応えが充分ある。

それに比べて現会長でもある(僕の中では今でも委員長と呼んでいるが)冷泉れいぜんさんの演技はぎこちない。

ていうかほぼ棒読み。

見事なまでの棒読み。

流石、記憶力に定評のある委員長でもこんな短い時間で感情まで乗せるのは無理があったようだ。

そんな棒読みを打ち消すようにお姉ちゃんの演技は迫力を増している。


 「あなたは会長の器じゃないの。

大体、妹の面倒もろくに見れてないくせに」

「なんでそんなことまで言うんですか。

本当に酷い」

委員長は手で顔を覆った。

本来だったら涙の1つも出るくらいに酷い言葉だと僕も思うのだがいかんせん委員長の棒読みは酷い。

そして泣き真似もあまりにも棒過ぎて即演技だと分かるものだ。


 いつまで僕はこんな大根芝居を見せつけられるのだろうと思った。

そうしたら委員長が

「あおいさん、なぜここにいるのですか。

勝手に入ってきているのですか。

私の許可無く生徒会室に入ることは御法度のはずですが」


 そんな話は聞いたことがない。

ていうか僕は副会長なんだけど。

生徒会室に入るのに会長の許可がるはずもない。


 委員長は

「いいでしょう。

あなたが私の席を奪いに来たことは分かっています。

私はあなたより弱いとあなたのお姉さんに罵倒されていたところです。

生徒会長の座、どちらが相応ふさわしいか決着を付けましょう」


 ちょっと待って。

僕は委員長に生徒会長になってくれとお願いした立場のはずなんだけど。

その僕が生徒会長の座を狙うはずもない。

そして相変わらずの委員長の棒の演技が気になってしまう。


 お姉ちゃんもわざとらしく

「「チャイルズ」の力を見せつけてやりなさい。

思う存分叩きのめしてあげなさい」


 そう言うと委員長は初めて感情を顔に出した。

それは演技とは違うもの。

明らかに怯えている顔だ。

そしてお姉ちゃんに助けを求めている顔でもある。

その顔は明らかに僕に勝てるわけがないと訴えている顔に見えた。


 それを見たお姉ちゃんは委員長にそっと耳打ちをした。

おいおい、喧嘩している最中なんじゃないの。

あくまで芝居だけど。

そんなこともお構いなく長い耳打ちをしている。

そして耳打ちをしている内に委員長の生気が戻ってきた。

と言うか、かなり自信の溢れた顔になっている。


 「私に勝てるなんて百年早いと思いなさい。

あなたは私に勝てない。

大体、あなたの絶対防御の弱点を知っている。

あなたは私から本気で逃げ切れたことないでしょう。

特に1年の頃をよく思い出しなさい」


 確かに僕はその時、女子の着替えの場にいるのがいたたまれなくなり教室から出ようとするのをいつも委員長がブロックしてきた。

そして委員長のブロックから逃れられたことは一度も無い。

ただの一度も。


 委員長は

「いい、私と対決しなさい。

もし勝ったら会長の座を譲ってもいいわ。

絶対にあなたが勝つことはないけれど」


 相変わらずの棒読みの委員長だが目は本気で勝てると言う目をしていた。


 お姉ちゃんは

「とにかくあなたたちは闘いなさい。

今まで一度も闘ったことがないのでしょう。

勝った方が本当の生徒会長と言うことで」


 僕は別に生徒会長になりたいわけじゃない。

例え勝ったとしても委員長に差し上げるつもりだ。

まぁ、勝てる自信はあるけれど。

でも勝算有りの委員長の目は侮れない。

しかし、何を耳打ちされたらあそこまで自信が持てるのだろうか。


 そういえば、僕は委員長の戦闘スタイルを知らない。

興味が無かったからなのだが。

それ以前に自分のことで精一杯だったから。


 「ふん、驚きなさい。

りょうか(委員長)にあなたは勝てないわ。

絶対に。

何せ私が援護するんだから。

まぁ、修行だと思ってせいぜい頑張りなさい」


 喧嘩という設定がどこに行ったのだろう。

お姉ちゃんは自信満々に言ってのけた。


 と言うか今までのやりとりは僕に新たな修行をするための芝居だったということでいいのかな。

少し気楽になって僕は委員長と対決することになった。



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