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 今日もずっと雨が降っている。

梅雨に入ってしばらく経つが一向に晴れの日が来ない。

梅雨ってこんなに雨が降るものなのかと思うほど雨が降っている。


 そして、今日もとある教室に出向いていった。

教室に入ると僕の弟子でもある海城かいじょうさんとその師匠でもある海野さんさんがベタついていた。

表現が正しいかどうかは知らないけどまるでカップルのように甘い言葉を囁き合っている。

僕は彼女たちの邪魔をしないようにそろ〜と教室に入った。

それにしても本当にカップルのような感じだ。

2人の距離は物理的にもとても近く理想の男女のカップルに見える。

まるで王子様とお姫様のような。


 と言ってもここは女子校。

見た目は男女でも現実はスカートを履いた女子同士なのだ。

海野さんは男の格好をすれば間違いなく美男子。

女子にしとくにはもったいないぐらいのイケメン。

羨ましい限りだ。


 僕はと言うともう既に男装しても似合わない体だ。

本当に男だった頃が懐かしい。

スカートももう慣れて何も感じなくなってきた。

何せ休日でも素普通にスカートを履いてるぐらいだから。


 言っておくが男に戻りたいわけではない。

と言っても戻れるなら戻りたいが実際戻ったとしても今度は男子として振る舞うことに困ってしまう。

そのぐらい女の子の生活に慣れてしまった。

そしてこれからも女子として生きていくことに何の迷いもない。

幸い、恋人も出来て今私生活も充実している。


 あ、言い忘れていたけど僕の恋人も女子。

女子同士のカップルに何の抵抗も無いことは言っておくね。

何せ自分もそうだから。


 話を戻すと先ほどの2人、とてもアツアツ。

それでいて付き合っていないというのだから本当にどういう関係なのか。

僕はふたりのイチャイチャぶりをしばらく見ていた。


 しばらくすると海野さんが

「は、もう教室に入ってきてたのかい。

教室に入るときに一言かけてくれても良かったのに」

と慌てて言い繕った。

「僕はただ単に弟子である彼女に指導をしていたわけで決してそれ以上のことはしていないから」

と聞いてもいない言い訳を彼女はし始めた。


 突然、パンパンと手を叩く音がした。

教室の窓側に視線をやるとそこに三条橋先生がいた。

「どうでもいいけど修行始めるわよ」

海野さんの言い訳を遮るように三条橋先生が話し始めた。


 それにしてもいつ教室に入ってきたのか気づかなかった。

僕は先ほどのいちゃつきぶりに集中しながらも教室の出入り口の警戒も怠っていなかった。

それなのに三条橋先生の動きを認識することが出来なかった。

流石「チャイルズ」と言ったところか。


 そんなことを考えていると

三条橋先生は

「今日は外での実戦よ。

みんな、外に出なさい」

海野さんは

「外と言っても今、雨が降っているじゃない。

しかもザーザー。

こんな状態で外に出るのかい。

全くお子様は。

こんな日は教室でまったりと過ごした方が良いと思うよ。

毎日、修行じゃ疲れちゃうからね。

君は天才キッズかも知れないけどこんな雨の中、初めての実戦。

風邪ひいちゃうよ。

わがままはダメだよ」


 怖いもの知らずとはこのことである。

三条橋先生を子供扱いするとは。

おそろしい、おそろしい。


三条橋先生は

「何寝ぼけたこと言っているの。

私はこれでもここの教員よ。

こんな見た目でもね。

年だってあなたよりもずっと上。

敬いなさいよ」


海野さんは

「頭では分かっているんだけど、僕さぁ、子供好きじゃん。

どうしても見た目に引っ張られるんだよね」

僕は心の中で「知らんわ」とツッコんだ。


 三条橋先生は

「コホン、気を取り戻して説明するわ。

これからの訓練を。

あなたたちのミッションは濡れないこと。

水の能力を使ってどんな方法でもいいから雨の中濡れないでいる事ね。

そして私が鬼になってあげるわ。

まぁ、鬼ごっこって所ね。

あなたたちはそのウォーターガンだっけそれで私を狙い撃ちにしてね。

私は攻撃をせず避け続けるから。

私に一発でも当てたら修行は終了ね。

ちなみに私からは攻撃を仕掛けないから。

よっぽどのことが無い限りね」


 僕たちは彼女の説明を黙って聞いていた。

「一応、注意事項ね。

海城かいじょうさんは・・・、特にないわ。

葵唯あおい(僕)は髪の毛での攻撃は禁止ね。

海野はカラフルな弾だっけ、色つきは禁止。

それを破ったら容赦なく攻撃するから」

僕たちはこくりと頷いた。

海野さんは「髪の毛って、まぁいいか。あんまり深いことは考えない(深く考えない)ようにしよう」

と独り言のように呟いていた。


 僕たちは取りあえず外に出た。

この土砂降りの中だ。

三条橋先生は

「一応結界は敷いて置いたから。

ここで行われていることの視覚、聴覚は外部からは阻害されている。

わかりやすく言えば、ここは現実であって現実には存在しない異空間だと思ってくれればいい。

ここでいくら暴れても現実世界には何の影響も与えないから思う存分頑張ってね」

と言うと彼女はゆっくりと逃げ始めた。

僕たちは指鉄砲を構え彼女に標準を合わせる。

彼女は上手いこと避けまくる。

寸前で避けるものだからそれはもう美技としか言いようのない避け方だ。

三人がかりでもなかなか仕留めることが出来ない。

かれこれ1時間経つか。

僕たちは疲労に満ちていた。

ただでさえ濡れないように能力を使っている。

その上、指鉄砲。

二重に能力を使っているのだ。

疲労がたまるのは仕方が無い。


 僕たちの疲れがマックスになってい頃、突然事件が起きた。

事件を起こしたのは海野さんだった。

彼女は最初こそ余裕の顔つきだったが、段々と余裕を無くしていた。

そして事件が起きた。

彼女は黄色の弾を撃ち出したのだ。

先生が注意事項として禁止していた行為をしたのだ。

三条橋先生は急に顔つきを変えた。

そしてその黄色い弾を手で受け止めたのだった。

僕たちは呆気にとられていると

「いったいわね。」

とひとこと言い、そして僕たちの数倍の威力の弾を指先から放った。

「てめぇ、殺されてぇのか。

約束は守るためにあるんだろうが。

言ったことぐらい守りやがれ」

ドスのきいた低い声で言い放った。

明らかに今までと違った態度。

一瞬ゾクッとした。

海野さんは地面に転ぶような感じで座ってそこから腰を抜かしたように動かない。

そして三条橋先生は一転ニコリとして

「もうそろそろ終わろうかなと思っていたけど1時間延長ね。

罰として。

連帯責任だからね。

約束は守ってね。

私も攻撃しないから」

と言い修行は再開した。


 それから2,3時間修行が続いた。

僕たちはヘトヘトになり,そして結局びしょ濡れになり修行は終わった。


 ちなみに僕は三条橋先生の裏の顔を知っている。

マジで怖いのを。

だから海野さんの馴れ馴れしさにずっとドギマギしていた。

でも海野さんも図太い。

修行が終わるとやはり三条橋先生を子供扱いしていた。

あの性格は見習いたいものである。


 それにしても今は下着までびしょ濡れだ。

制服のまま外に出たものだからジャージに着替える必要がある。

僕はあるお願いをした。

「頼むから着替えは別室でさせて下さい。

せめてものお願いです」

海野さんは

「同性同士なのに何で別々に着替える必要性があるのかい。

僕も大概だけど君も変わっているね」

僕は自覚あるのかいと心の中で小さくツッコんだ。




 


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