仕分け
僕たちは三条橋先生に呼び出された。
放課後、担任から直々に呼び出されたのだ。
そして、久しぶりの三条橋先生の部屋はとても大きく感じた。
先ほど、「僕たちは」という表現を使ったのは呼び出されたのが僕だけではないということ。
メンバーは
遠山 葵唯(僕)
遠山 聖雪
灰庭 忍葉
神居 天巫
信桜 雨音
の5人だ。
三条橋先生は机の上に登り偉そうに口上を立てた。
「この学校に5人もの「チャイルズ」が揃うのはとても貴重なことなの。
全員で5属性全て揃うしね」
そういうと僕らはお互いの顔を見合わせた。
そこにはなぜか教育実習が終わったはずの姉がいることを不思議に思い、咄嗟に
「お姉ちゃんは何でここに・・・」
と言いかけた途端に担任は
「おっと、私語は禁止ね。
それぞれに事情を抱えているのだから。
深追いはしない。
あえて言うとあなたのお姉さんがいる理由は補習よ。
うちの教育実習は非常に厳しいの。
特定の点数に達しないとうちの学校に残って補習を受けてもらっているの」
と慌てていらないフォローした。
姉は余計なことをという目で担任を睨んでいた。
「ここに雁首揃えて集まるのは去年以来ね
今日は仕分けをするためにここに集まってもらったの。
つまり、今年の課題ね。
まずは遠山 聖雪(姉)
あなたは氷の能力を高めなさい。
具体的には今の倍の威力が出せるぐらいにね。
次に灰庭 忍葉
あなたは炎の能力を高めなさい。
あなたたちは創造系の能力者。
でも、今行ったことは自然系の能力のこと。
これから一年間、能力で武器を作ることは禁止。
分かった!!」
2人は元気よく「ハイ」と同時に答えた。
「次に信桜 雨音
あなたは雷の能力を高めなさい。
この中で最年少なんだから今の3倍ぐらいに高めなさい。
イイわね」
言われた彼女はコクリと頷いた。
と同時に僕を睨みつけた。
彼女は僕の恋人だ。
そういえば最近、忙しくてデートにすら行けてないすれ違いの生活をしていた。
ここに入室する時に僕にそっぽを向いていたのもその怒りの現れだったのだろう。
僕はその彼女の様子を見て早く埋め合わせをしなければと頭の中で混乱していた。
「そこ、上の空にならない!!
恋人のことを考えるより自分のことを考えなさい」
なぜか担任は僕の考えを見透かしていた。
担任は
「あまねは私の弟子だからね。
しょっちゅう、あなたの愚痴を聞かされているわ。
最近、忙しいからって構ってくれないとか。
彼女の機嫌をとるのは私の話の後でしてね」
勝手にプライベートな話をしないでほしい。
僕と彼女は赤面した。
「さて、問題は残りの2人。
ちなみに私は水、風、雷の3つの能力を持っている。
本来複数持ちの能力者は等しくそれぞれの能力を伸ばさなければならない。
でも、ここに5人もいる。
そして5属性揃っている。
それぞれ1つずつ能力を伸ばす方が効率的
そこで神居 天巫、
あなたは風と水の両方の能力を持っている。
でも、先に身についたのは風の能力。
そういうことであなたは今の風の能力を1年で倍に伸ばしなさい」
彼女もコクリと頷いた。
「さて、最後に遠山 葵唯。
あなたは規格外なのよ。
5属性全て持っているなんて。
色々と考えたわ。
全ての能力を同時に鍛える術なんて持ってないし
ということで余った水の能力を強化しなさい。
これは絶対命令よ。
異論は認めません」
僕は仕方なく頷いた。
「と言ってもあなたたちはどう訓練すすべきかわからないと思うわ。
私も全員見られないし。
そこで今のあなたたちよりレベルが1つ違う人たちを紹介する。
その人の下について1年間みっちり修行してね。
それでは解散」
僕たちはそれぞれメモを渡されて解散した。
・・・・・・。
忘れていた。
僕の彼女の事を。
僕は部屋を出る途端に彼女に謝った。
彼女は特定の教室を指名しそこに来るように誘って来た。
その時、僕は機嫌を直してくれたと甘い考えを抱いていた。
(やっとイチャイチャできると)
でも、その考えは甘かった。
教室に入った途端に彼女は僕に攻撃をして来た。
「避けないでよ。
寂しかったんだから。
そのストレスを真摯に受け止めなさいよ」
彼女の気持ちはわかるけれど避けなければ死んでしまう。
彼女の怒りは凄まじいものだった。
全身からみなぎる電流。
威力も半端ない。
そして攻撃する彼女は泣いていた。
とても寂しかったんだと思う。
最近は修行に明け暮れて彼女に会いにすら行けていなかった。
寂しい思いをさせたんだなと反省しつつ僕は彼女の攻撃を避け続けた。
大事なのは僕からは決して攻撃しない事。
彼女の気が済むまで僕は避け続けた。
小一時間が過ぎ、やっと彼女の怒りが収まった。
教室は焼け野原状態になってしまったが。
僕はその状態にに困惑していた。
そしてやっと彼女は僕に甘えて来た。
というよりも僕のほうが早かったかも。
そして初めてキスをした。
イチャイチャもした。
しかし、この教室の状態、どうしたものか。
一連のイチャイチャが終わって正気に戻った時にそう思った。
彼女は
「あ〜、大丈夫よ。
この教室自体存在しない教室だから。
簡単にいうと異空間にある教室。
師匠(三条橋先生)に行って作ってもらったの。
だからいくら荒れても、ほら一瞬で元通り」
それは魔法のようだった。
一瞬で元の教室に戻ったのだから。
「これから約束して。
いくら忙しくても週に1回はデート。
学内でいいから。
これだけは約束よ」
僕は頷くしか無かった。
これから厳しい修行が始まる。
そして週1のデート(義務)。
とにかく忙しくなりそうだ。




