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姉妹

 僕と姉は年齢は一緒だ。

訳あって僕は1年遅れて入学したので姉は既に卒業し僕は3年生。

言っておくけど留年ではない。

誕生日も一緒。

顔もじっくり見ると瓜二つだ。

いわゆる一卵性の双子だ。

訳あって僕はほんの少し前まで男だったけど姉は生まれてからずっと女だったらしい。

そして僕の本当の性別が女だとわかったのはこの学校に入る少し前だった。


 でも僕は姉の存在をこの学校に来るまで知らなかった。

僕は高校に入るまで父と一緒に暮らしてきた。

いわゆる父子家庭だ。

父親から姉の存在など聞いたことがない。

それどころか母親のことを聞くこともできなかった。

無口な父だったから特に家庭内でも会話などは無く静かに暮らしていた。

と言っても仲が悪かったという訳でもない。

僕自身も無口なほうだったからかえってそっちの方が気が楽だった。

僕自身、父の愛情をたくさんもらって育ってきたと自負している。


 性転換してから父とは会っていないが、父は僕が性転換することを知っていたような気がする。

根拠もなくなんとなくだが。

僕の運命のあの日から父の姿は消えた。

あ、でも言っておくけど電話で連絡はとっているから。

最初、電話をした時、父は僕の声に驚きはしたがそれ以上は聞かれなかった。

それからも定期的に連絡はしている。


 話はれたが、これから本題に入ろうと思う。

僕の部屋に初めて姉が来たのだ。

学校にいた頃の姉はポニーテールで裸眼だった。

でも今の姉は僕と同じ眼鏡をかけロングストレートの髪だ。

僕の格好をまるで真似をしてるようだ。

違いと言えばなぜか髪が白く染まっている。

理由は分からないが。


 「何をじっと見つめているの?

双子なんだから同じ顔なのは当たり前でしょ。

それに本来の私はこっちの方なの。

区別をするためにあえて違う格好をしていたんだから」


 そう言うと姉は僕の部屋を隅々と観察し始めた。

そして

「思ったより女の子らしい部屋じゃない。

もっと男の子らしい部屋を想像していたけど」


 当たり前だ。

ここは見せ部屋。

週に一度、大家さんが僕の部屋をチェックする。

大家さんは僕がちゃんと女の子としての生活が出来ているかチェックする管理人でもある。

だからこの部屋だけは必要以上に女の子らしい部屋にしてある。


 姉は

「ぬいぐるみなんて趣味があるんだ。

もしかしてぬいぐるみを抱いて寝るなんて趣味があったりして」

と笑いながら僕に話しかけた。

実はもう既にぬいぐるみがないと寝れない体になっている。

男の時はそんな趣味は無かったんだけど。

姉の問いは当たっているだけに僕は無視を試みた。

ちなみに僕のベッドには犬、猫、兎、虎、獅子、麒麟、象の7種類。

毎日気分によってベッドに入れる動物は変えている。

そんなことは口が裂けても言えないけど。


「あなた、服には興味が無いくせにワンピースだけはたくさんあるのね。

それもいろんな種類の。

いろんな色、いろんな柄、まるでワンピースの博物館みたい。

こんなにいっぱいあるなら1着借りるわね」

そう言うと姉は僕の目の前で着替え始めた。

僕は思わず目を背けると姉は

「まだ女の子の体に慣れないの?

いい加減、慣れなさいよ。

双子なんだから同じ体でしょ」

僕は「でも」と口答えすると

「自分が女の子だと言う自覚を持ちなさいよ。

いい加減に」

と怒られてしまった。


 そして、姉は

「私が何にも知らないと思っているの?

この少女コミックがいっぱい詰まった本棚。

偽物でしょ。

コミックのカバーだけ本棚に貼っつけてあるだけ。

実際にこの本棚めちゃくちゃ軽いんだから」

そう言うと本棚を横に動かし始めた。

そして秘密にしてある扉を見つけてしまった。

「この部屋、最初から違和感があったのよ。

なんか飾られているみたいな感じ。

使われているって言う感じが何一つない」

そう言うと姉は秘密の扉を開けた。


 そこは僕の趣味部屋だった。

僕は何も言い返すことができなかった。

「やっぱり少年コミックがたくさんある。

でも運動がそもそも苦手だからそれ系のものはなし。

プラモデルも苦手だったわね。

でもミニカーやロボット(のおもちゃ)は置いてある。

いかにも男の子の部屋っていう感じ。

ここで大半の時間は過ごしているみたいね。

生活感もあるし。

でもミニカーとぬいぐるみがないと寝れないなんてなんかおかしい」


 確かに僕はベッドにミニカーを置いて寝ている。

ぬいぐるみと一緒に。

なんでそこまで知っているのか。

少し疑問だったが気にしないようにした。


 「さて、ここからは姉妹の時間。

今までずっと離れ離れだったから色々と話したいでしょう。

私も色々と話してあげる。

どういう人生を歩んできたか。

たくさん話しましょう」


 そこからいろんな話を姉とした。

そしてたくさんの思い出が一瞬で出来たような気がした。

少し涙が出たような気もしている。


 会話の最後に僕は姉にある疑問をぶつけた。

「姉貴、いや、あえてお姉ちゃんと呼ぶね。

お姉ちゃんはなんで髪が白いの?」


 「あ〜、これね。

好きで髪を白くしている訳ではないの?

能力の影響っていうか。

私は教育実習の期間中、24時間属性である氷の能力を解いてはいけないことになっているの?

ていうか、自分では解けないようになっている。

いわゆる雪女状態ね。

でも環境に影響を与えないように私の周囲1ミリにしか能力が及ばない。

通常状態だと。

気付いてないと思うけど実は私の体床から1ミリ浮いているの。

物を掴むのも直接ではなく超電導みたいな感じでやっている。

まぁ2週間そんな感じよ」


 その後、姉と一緒に食事をし、テレビを見た。

なんかそんな普通のことが幸せに思えた。


 そして、嫌がる僕を無理やりお風呂に入れ一緒にお風呂に入った。

そして寝る時は一緒のベッドで寝た。

はたから見ると仲良し姉妹ように。

僕は寝る時も結構抵抗したのだが。


 そして一緒に寝る前に姉は

「臨時雇用の先生には気をつけて。

あの先生普通じゃないから。

一応臨時雇用の職員ってことになっているけど教育実習期間だけ臨時雇用っておかしいと思わない。

私は期間中あの先生に監視されているの。

そしてしばらくするとその正体が分かるわ。

その時があなたの試練の時だからね」

そう言い残して姉は眠りに着いた。

そんな事言われると僕は寝れないんだけど。

そんなモヤモヤした気分でいつの間にか僕は眠ってしまったようだ。

とにかく明日からが不安だ。




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