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教育実習

 ゴールデンウィークも過ぎ、僕がこの学校に来て早2年が経つことに気づいた。

そういえば、2年前のこの時期に転校したんだっけ。

僕はもう3年生だ。

この学校に慣れたかというと未だになれていないが。


 なんてたってここは女子校。

性転換したからと言って心が男子の僕には未だに居心地が悪い。

女子としての生活にはすっかり慣れてしまったけど。


 しかもここは特殊能力を持つ女の子が集まっているクラス。

その特殊な女の子たちに囲まれて僕も一生懸命頑張っている。


 そして、今日、あることがあった。

教育実習生が僕たちのクラスにやって来たのだ。

この特殊なクラスにだ。


 しかもその実習生の顔を見てクラスはどよめいた。

僕自身も驚いたのだからなおさらだ。


 その実習生は僕と同じ顔をしていた。

具体的に言うと髪は僕と同じでロング、そして眼鏡まで掛けていた。

まるで僕とうり二つの顔。

クラスのみんなが実習生と僕とを見比べている。

クラス中が驚くのは当たり前だ。


 しばらくして担任の三条橋先生が

「はい、静かにして!!

驚くのはそこまで。

私だって驚いたんだから。

見分けるのは髪の色かな。

染めているわけではないけど訳あって彼女の髪は白だから」


 そう、僕と違って彼女はなぜか白髪なのだ。

理由は分からないが。

そして三条橋先生に促されて自己紹介を始めた。


 「私の名前は遠山とおやま 聖雪いぶ

そこにいる遠山とおやま 葵唯あおいの姉です。

去年までこの学校にいたから知っていると思うけど」


 道理で似ているはずだ。

なんてたって双子だから。

とは言っても学校にいた頃はもう少し差別化を図っていたんだけど。

僕にここまで似せる必要性はない。

と言っても双子だからまるで自分の鏡を見ているような感じだ。

でも雰囲気はまるで違う。

学校時代は凜々しい感じもしたけど優しさも感じていた。

今はただ単に冷たい。

まるで世間の冷たい感じに当たって何もかも希望を失ってしまったかのような感じだ。

とは言っても暗い感じではない。

ツンとした誰も信用してないような決して笑わないクールな感じだ。


 彼女は

「えっと、担当は物理になります。

とは言ってもこのクラスでは理科全般になりますが。

今、その他の分野を必死に勉強しています。

何せ他の分野は全く興味が無かったので。

とにかく頑張りますので2週間お付き合いください」

その時、彼女はニコッとしたが作り笑いが僕にとっては見え見えだった。

少し緊張しているのか。


 担任は

「早速授業をしてもらおうと思うの」

と言うと実習生は授業をやり始めた。


 「私の担当は物理学でも力学専門なんです。

力学の中でも解析力学。

それではまず解析力学の基礎からやっていきたいと思います」


 言い忘れていたがうちのクラスでは3年時は通常の大学院クラスのレベルの授業だ。

もちろん、僕には半分も理解できていない。

一応、完全記憶能力で教科書の全ては頭の中に入っているがただ単に頭に入っているのと理解できているのとは訳が違う。


 それでいて色々と質問を生徒に当ててくる。

僕以外もほとんどレベルが一緒なので質問されても答えに窮することがほとんどでなかなか授業が進まない。


 結果、僕に質問が集中する。

幸い、僕にはブレーンがいるのでその人に相談しながらなんとか答えられていた。


 ちなみにそのブレーンの1人が高梁たかはし 清理きよりさんだ。

彼女は理科の天才。

理科であるならばあらゆる事を知っている。

ていうか、彼女に直接当ててくれればいいのに。


 それに実習生は僕が答えに窮すると他の生徒以上にがっかりするような顔をする。

他の生徒には分からないようだが僕には分かる。

双子なのだから。


 一通り、授業が終わると彼女は僕の所にやって来た。

驚くことに足を動かさずスーッと僕の所にやって来たのだ。

僕が驚いていると

「こんなの能力を使えば簡単じゃない(肯定)」

と呆れて答えていた。

そして、

「授業中はごめんね。

厳しくしちゃって。

ところでお願いがあるのだけど。

私、もうここの生徒じゃないじゃない。

でも2週間はこの学校に止まらなきゃいけない。

寮にはもう私の部屋はないの。

そういうことであなたの部屋に居候させてもらうから」

と今までの態度とは真逆の甘えた声で僕にお願いしてきた。


 正直、こういった態度の姉は初めてだ。

戸惑っていると

「今まで姉妹で一緒に過ごしたことがないじゃない。

生き別れ状態だったし。

せっかくの家族なんだし一緒に楽しい時間を過ごしましょう」


 その途端クラス中に歓声が轟いた。

「これがいわゆるツンデレなのね。

テンプレのツンデレ、初めて見た!!」

「姉妹丼、しかも双子の姉妹丼、美少女の双子の姉妹丼、めっちゃ興奮する」


 あれ、ここ女子校だよなと思いつつ僕は姉の申し出を了承した。


 それにしても気がかりが1つだけある。

それはもう1人の実習生らしき人物。

ニコニコしていたが特に紹介も無かった。

どうやら実習生ではなさそう。

三条橋先生によると2週間だけの臨時雇用の人らしい。


 じゃぁ、何でみんなの前にいるのだろうか。

紹介もしないのならなおさらだ。

それに委員長だけが怯えていた。

僕がその理由を委員長に聞くと

「あなた、これから大変なことになるから。

こっちも人ごとじゃないけど」

臨時雇用の人に目をやりそう言っていた。


どうやらただ者ではなさそう。

あの人には出来るだけ関わらないようにしようと心に決めて僕は姉と寮に戻った


 

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