お嬢様
僕は今日も昼休みいつもの3人で集まって昼食を食べている。
いつもの3人とは僕と灰庭さんと氷見谷さんの3人だ。
この輪の中にたまに委員長も入ることがあるが今日は3人でのランチタイムです。
この中での僕らの話題は専ら僕に対するものがほとんどです。
女の子初心者である僕はとかく女の常識に疎い。
しかもその内容はかなり濃くとても男子には聞かせられない内容になっている。
僕も聞いてて恥ずかしくなることがほとんどです。
でも顔を赤らめていると周りの女子に冷やかされるので平静を装っています。
そしてそのうち僕に対するレクチャーからいつの間にか女の子の会話へとシフトしていきます。
今日も女の子の会話にシフトしていく中で灰庭さんがあることを言い出した。
「遠山さん(僕)は委員長から5人の友達(仲間)を作るように命令されているというのだけど進捗状況はどうなっているの?」
僕は
「全然ダメ。仲間(友達)を作るのってそう簡単なことじゃないよ。せっかく仲間を作るんだったらそれなりの実力者の方がいいし。1人1人の実力を見極めるのは結構難しいんだ。」
そう言うと灰庭さんは
「じゃぁ、候補者もいないの?」
と聞き返してきたので僕は
「候補者はいないわけじゃないんだ。先日やっと1人目星は付いたんだ。でもどうやって話しかけたらいいのか分からないんだよ。」
と言った。
灰庭さんは
「それじゃぁ、私たちが出会った頃を思い出せばいいんじゃない。」
と言ってきた。
僕は2人と出会った頃のことを思い出した。
灰庭さんは半ば脅しに似たような状況、もう1人の氷見谷さんに関しては完全にストーカーだ。
当然2人との出会いは参考にはならない。
考え込んでいると氷見谷さんがぼそっと
「何も考えずに声をかければいいんじゃない。」
と言ってきた。
僕は意を決してその女の子に声をかけることにした。
彼女は育ちがよく見えどこか金持ちのお嬢様のように見えた。
それにかなりプライドが高そうだ。
いつも1人で昼食を食べている。
僕は意を決して
「ヘイ、彼女、今からお茶を飲みに行かない?」
と声をかけた。
その瞬間、教室中がどっと笑いに包まれた。
灰庭さんがすかさず
「遠山さん、友達を作りたいんじゃないの?彼女を作りたいの?」
僕は首を横に振った。
灰庭さんは
「まだ、女の子を異性として見ちゃっているみたいね。いい、あなたは女の子なのよ。同性よ。自分が女の子だってことを理解して。それと話しかけるときは普通に同性に話しかける気持ちで話しかけて。変に異性として意識しないで。」
そんなこと言われてもと僕は思った。
その間、彼女はずっと笑っていた。
そして彼女は笑い終えると
「あなたが噂の元男の子?あなた、もしかして男の子時代女の子とつきあったことないんじゃないの?」
と聞いてきた。
僕がムッとすると彼女は
「ごめんなさい、悪気があって言ったわけじゃないの。でもあなた面白いわ。ところで私に何の用なの。」
と聞いてきた。
僕は率直にこう言った。
「あなたに僕の仲間になって欲しいんだ。決して損はさせない。僕は出来るだけ早く能力者を5人集めなければならない。それに僕はあなたの能力を向上させることが出来る。」
彼女は
「ごめんなさい、能力うんぬんというのはよく分からないの。だから、あなたの希望には添えないわ。」
と言ってきた。
僕は
「じゃぁ、あなたは不思議な力を持っているはず。それを僕に見せてみて。」
と言った。
彼女は驚いたような顔をしていた。
そして徐に右手を空中に差し出した。
そして右手を力一杯握り始めた。
そうすると右手から絞り始めたレモンのように水が滲み出てきた。
しばらくするといつの間にか下に置いてあったバケツをいっぱいにしていた。
その作業が終わって彼女は語り始めた。
「私はこの力のおかげで家族に気味悪がられたわ。それにいろんな研究機関に行ったわ。結局この力の謎は分からなかったけど。知人の伝でこの学校には変な力のある人が集まってくると聞いたの。だからこの学校に入学してきたの。まぁ、生活には苦労しなかったわ。自分で言うのも何だけど実家は金持ちだし。力のことは気味悪がられていたけどそれ以外は普通に愛情を持って育てられてきたから。それに欲しいものは何だって買ってくれたし。ちなみにバケツにたまった水は正真正銘真水よ。自分の体からは出ていないから安心して。」
僕は
「僕はこの力の有効な使い方を知っている。それに僕みたいな人間も珍しいでしょう。きっと仲間になっても損はさせないから。」
彼女はこくりと頷いた。
そして、
「自己紹介がまだだったわね。わたくしは海城 豊深。これからもよろしくね。」
と言い彼女は手を差し伸べた。
僕は彼女と固い握手をした。
これで3人目の仲間(友達)ができた。
目標はあと2人だ。
しかし、仲間を集めるのは大変だと熟熟思った。