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 僕が2人に連れてこられたのは1階にあるとある空き教室だった。

僕は入学時に学校の隅々まで記憶していたがそれでもこの教室を知らなかった。


 ご丁寧にでもその教室はしっかりと施錠されていた。

2人は鍵を持っているようで どちらが明けるかちょっとした小競り合いが起きていた。

でも予想通り、背の低い気が強そうな方が鍵を開けていた。

背の高い方は結局はオドオドしているような感じ。

2人の上下関係は見て分かるほどだ。

そういえば背の低い方は

「あなたは私より強いんだからもっとしゃんとしてよね」

と背の高い方に発破を掛けていた。

背の高い方は相変わらずオドオドしていて僕には流石にそうは見えなかった。

主導権は背の低い方に有るらしい。


 先ほどもいったが僕はこの教室を知らない。

この学校の全ての教室を把握していたつもりだが記憶にもない。

中は普通の教室で机と椅子が整然と並んでいて黒板には何かしら授業の後のようなものが消さずに残されていた。


  後、不思議に思ったのは生徒たちのカバンがそれぞれの机の横にしっかりと残されており机の上には教科書とノート

と文房具が置いてある。

まるで授業中に教師や生徒が失踪したかのような状況だ。

ついさっきまで普通に授業をしていたように見える。


 僕がこの教室の状況に唖然としていると彼女たちは口々に

「全くあの先生やり過ぎよ。

確かに空き教室を1つ作ってとは言ったけど、こんなミステリーじみた教室なんて必要なかった。

大体、今日は入学式。

どこも授業なんてやってないじゃない。

ご丁寧に物理の授業か何か知らないけれども黒板に「光の性質について」の板書があるし、それぞれの生徒のノートには

板書を綺麗に書き写してあるし。

芸が細かすぎるのよ」

と小さい方が解説してくれた。

大きい方は僕に向かって静かに落ち着いた声で

「教室の状況は気にしないでください。

私たちも初めて来てビックリしているところですから。

ちなみにこの教室は誰も使っていない教室です。

ていうか三条橋先生が作った空間です。

多分あなたのことですからこの教室の存在自体に疑問符がついいることでしょう。

ここは実際に存在しない異空間だと思ってください。

この教室の状況は先生のサービスと言うことです」


 彼女がそう言い終わろうとするのを遮るように小さい方が生意気そうに

「これからこの教室で私たちと勝負しなさい。

もちろん1対1でね。

いわゆるタイマンね」

僕は小さく頷いた。

彼女は

「でも普通にやったら私たちが負けるのは目に見えている。

私たちが提案するそれぞれのゲームに勝ったらあなたの勝ちね。

早速私が提案するゲームは「鬼ごっこ」。

私が鬼ね。

これから1時間以内に私を捕まえることが出来たらあなたの勝ち。

それが出来なければ私の勝ち。

私はこの教室の外には一歩も出ないわ。

あ、それとあらゆる攻撃は禁止ね。

とてもじゃないけど敵う気がしないから。

さ、始めましょう」

彼女がそう言ったら教室に掛けてある時計がいつの間にかデジタル仕様になりカウントダウンを始めた。


 僕は否応なく始まったこのゲームに参加せざるを得なかった。

とりあえず目の前にいる彼女に触ろうとした。

そうしたら不思議と触れることが出来なかった。

鬼役の彼女は

「言い忘れたけど、私はあなたと同じ絶対防御能力の持ち主。

私に簡単に触ることは不可能よ」


 僕はそれに驚いた。

僕自身、その能力は唯一無二のものだと思っていたから。

それから30分、僕は無我夢中に彼女を追いかけた。

捕まえては消え、捕まえては消え、その連続だった。

彼女は既に飽きてきたのか欠伸をしながら耐えがたい暇な時間を我慢しているようだった。

僕は最初こそすぐ終わるものだと思って甘く見ていたが今は必死だ。

とにかく彼女の手品の種を探すのに必死だった。


 とにかくこの間に分かったのは彼女は決して僕と同じ能力では無いと言うこと。

たまに彼女の姿が(少し)ぼやけたりしていたから恐らく光関係の能力なのだろう。

黒板にも「光の性質」と題して反射や屈折について事細かく書いてあるし。

しかし、誰が書いたのだとうか。

とてもじゃないが黒板の内容は高校レベルのものではない。

恐らく最先端らしきものだ。

いろんな物理の本を読んでいる僕でも知らない事ばかりが書いてあった。


 まぁ、そんなことはどうでもいい。

問題は僕の目の前にいる彼女はあくまでも虚像。

実像はどこにいるのか分からないステルス状態。

恐らく、彼女は自分の周りの光を反射や屈折させてあさっての方向に自分の姿を投影しているのだろう。

彼女がどこにいるのか皆目見当も付かない。

恐らく動き回っているだろうけど。


(ここから視点が変わります)

私の名前は明岳あけだて 直央なお

この学校で1番強い能力者と聞いて対決しているのだけれども正直、がっかりだわ。

点で相手にもならない。

残り時間も10分を切ってきたしちょっとサービスしてやろうかしら。

「これじゃぁ、勝負にならないから攻撃はOKにしようかしら」

その時の彼女の顔は一生忘れないだろう。

彼女は一瞬にやっとした顔をした。

でもすぐに素に戻り何かに集中し始めた。

次第に彼女の長い髪は逆立ち初め異様な姿になっていた。

「一応フェアになるように言うけど僕の髪の毛1本1本は手のように動かせるんだ。

そして僕の髪の毛はビームを出せるんだ。

ビームの種類はその時の気分だけど。

今日は炎の気分かな。

幸い、ここは異空間らしいし、この教室を焼き尽くしても問題ないかな。

ちょうど苛立っていたし」

私はそれが最初ははったりだと思った。

でもよく見ていると髪の毛1本1本の毛先に火の玉らしきものが見えてきた。

しかもその1つ1つが大分離れている私にも熱さが伝わってくる。

その本気さが伝わってきて私は思わず

「ごめんなさい、降参します。今までの非礼をお許しください」

と土下座をしてしまった。

もちろん能力を解いて。

彼女は

「何だ、そこにいたのか。

正直、君が条件を変えなければ間違いなく君の勝ちだったと思うよ」

と私をねぎらってくれた。


 戦意を失った私を横に相方は気合いが充分入っていた。

「大丈夫、なおちゃんのかたきは私が討つから」

そう言うと私のゲームの余韻を楽しむでもなく次のゲームが始まった。

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