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チョコレート

 もうすぐバレンタインだ。

去年はバタバタしてて忘れたけどもうすぐバレンタインなのだ。


 実は僕、今までバレンタインで女の子からチョコをもらったことがない。

去年、初めてクラスメートや弟子たちからチョコレートをもらった。

「友チョコ」とか言っていたっけ。

最近では女の子同士でもチョコを手渡しするのが流行っているらしい。

そんな説明をされても僕はピンとこなかった。


 実は去年チョコをもらったのもバレンタインを過ぎた後だった。

まぁ、それは去年が単純に忙しく授業どころではなかったこと。

何せ「チャイルズ」が急に2人現れたことが原因だった。

そして姉から「チャイルズ」になった2人の面倒を厳命された。

そしてその2人がチャイルズとしての基礎的知識、体力、能力を身につけるまでは学校に来なくていいと言われた。

だから僕は2人を「時の掛け軸」に入れてみっちり指導した。

結果、僕は3月になってやっと登校できたのだ。

だから女の子たちからチョコをもらったのも3月になってから。

その時はホワイトデーも近かったからかなり違和感があったっけ。


 僕はなぜかバレンタイン当日に体調を崩す傾向にある。

小学校も中学校も熱を出して学校を休んだ。

そして次の日、登校すると女子からなぜか好奇な目で見られた。

その理由は今でも分からない。


 でも、今年は違う。

姉から

「今年からバレンタイン当日に体調を崩すことはないからね」

と言われている。

なぜ姉は僕がバレンタイン当日に体調を崩すのを知っているのかは分からないが、なぜ、今年からなのかも分からない。


  でもなぜかそんな気がする。

バレンタイン当日に登校できることを心待ちにしていた。

何せ今年は必ず1個は本命チョコが来るから。

生まれて初めての恋人。

その娘から必ずもらえるから。


 ちなみに僕が性転換前にも1人恋人がいましたがその人からはもらっていない。

ていうか、その娘曰く僕がベタなイベントが苦手だとかチョコが苦手だとか言ってたからと言うけど心当たりが全くないんだけど。


 とにかく僕はバレンタインに待ちに待ち焦がれていた。

僕のそんな様子を見てさとうさんたちが話しかけてきた。

「あおいちゃん(僕)、去年は忙しそうだったから無理だったけど今年はチョコレート、作ったりなんかするの?」

僕はこの質問に面食らった。

チョコレートを僕が作るなんて考えもしなかったkらだ。

僕が戸惑っていると

「バレンタインは女の子にとって大事なイベントなのよ。

去年はクラス中でチョコレートの交換が行われたわ。

残念なのはここが女子校ってことね。

本命チョコが作れないから」


「え、それって僕も作らなくちゃいけないの?」

僕が慌てて聞き返すと

「あおいちゃん、あなた女の子って言う自覚有る?

さっきも言ったけどここ女子校だから。

それにあなたが着ているのも女子用の制服。

女の子になってから大分、つんだからそろそろ自覚持ちなさいよ」


さとうさんは

「そうだ、これからチョコを作りましょうよ。

どうせ作ったことないんでしょ」

と言って僕を無理矢理家庭科室に連れて行った。


さとうさん、すずきさん、たかはしさんは僕に勉強を教えてくれる大事な友達だ。

そして彼女たちは僕を真っ先に心配をしてくれる大事な友達。

この学校に着て初めて出来た友達でもある。

だから彼女たちの申し出には断れない。


 家庭科室に入ると委員長がやって来た。

「家庭科室使用の許可はちゃんと取ったから終わったらちゃんと鍵を返しといてね。

家庭科室の担当の三条橋先生にね」

そう言うと委員長は帰っていった。

会話には参加していないのになぜこうきが回るのかは疑問だ。

聞き耳を立てていたのだろうか。


 そんなことを気にする余裕がなく4人の料理教室が始まった。

すずきさんは

「そういえば好きな人が出来たんだっけ。

本命チョコを初めて作るんだ」

と僕をけしかけてくる。

たかはしさんは

「好きな人のことを思って作るの。

一生懸命心を込めてね」

さとうさんは

「これぞ女の子の醍醐味。

好きな男の子のために端正に作るの。

胸がキュンキュンするね。

ていうかあおいちゃんの相手は女の子だっけ」


 僕は冷やかされながら一生懸命作った。

僕は作りながら3人に

「本命チョコを作ったことはあるの?」

と聞いてみた。

3人の答えは即座にNOだった。

その答えに僕はずっこけかけた。


 3人の女の子たちはそれからいろんな恋バナに夢中だった。

それらの多くは妄想だ。

憧れの告白のシチュエーションやら彼氏が出来たら行きたいとこだとかいろいろと盛り上がり僕は置いてけぼり。

でも凄いのは3人とも手はちゃんと動いている。

話に夢中になりながらも正確に調理手順を踏んでいた。


 僕は追いつくのに必死だった。


 そして、料理は完成した。

ブラウニー、生チョコ、トリュフにケーキ、様々なチョコが完成した。

さながらお菓子屋さんのようだ。

「さぁ、食べるわよ」

そうかけ声が上がると一斉に食べ始めた。

僕は

「え、これを渡すんじゃないの」と聞き返した。

「何を言っているの?

今日は練習。

本当のものは前日に手作りするんでしょう。

それにどれだけの出来かは見ないと。

変な味だったりすると相手が可愛そうだしね」

そう言われて僕は自分のを試食した。

出来は思った以上に美味しかった。

これなら僕の彼女も喜ぶだろう、と僕は思った。


 バレンタイン当日、僕は彼女に手作りのチョコを初めて渡した。

彼女からもチョコをもらった。

そして僕たちは二人っきりで学校の秘密の場所で食べ合いっこをした。

久しぶりのイチャイチャに僕たちはたっぷり堪能した。


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