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告白

 僕が告白し損ねてから1ヶ月。

僕はいろんなところでイジられた。

僕だって告白するつもりだったんだ。

でもその相手が色々と質問してくるものだからうっかり告白するのを忘れてしまった。

彼女にとって僕はよっぽど不思議な存在らしい。

まぁ、僕も彼女の立場だったらめちゃくちゃ聞きたいことがあるかも。

僕自身、自分のことがよく分かってないから。


 冷静に自分のスペックについて考えてみよう。

大体、性転換する前は能力者がいることすら考えたことがなかった。

能力を持つことは男子の憧れ。

僕も幼い頃は不思議な力を持ちたいと思っていたことがある。

余計な話だけど。

でも女子だけが不思議な力を持つ権利があるなんて知りもしなかった。

まぁ、多くの人がそうなんだけど。

何せこの不思議な力は国から秘匿とされている。

だからその事を知るのは当事者かその関係者ぐらいだ。

しかも僕はチートな能力を授かった。

炎、氷、水、風、雷の全属性を持っている。

僕はその5大属性全てにおいてチートらしい。

ちなみに5大属性以外の属性もあるらしいがそれらはごく少数らしい。

それらの能力も覚えて欲しいと師匠たちは言っていた。

でも僕は今の属性を使いこなすのに精一杯。

姉貴にも勝てたことがないし。

ちなみに能力的には僕の方が勝っているらしい。

師匠は経験の差だと言っていた。

今のところ、全ての属性を使い切っても姉貴には勝てないでいる。


 そんなこんなで僕は日常に励んでいる。

僕が告白し損ねたことで最近は「ヘタレ姫」という陰口を言われるようになった。

いや、陰口ならまだいい。

それが普通に渾名あだなとして定着し始めてきている。

思えば入学仕立ての頃はなぜか「姫さま」という渾名が付いた。

僕はそれをよしとしていなかったがなぜか定着した。

姉貴が「王子さま」という渾名で統一されているので双子である僕はそれと対をなす渾名が相応しいとの理由らしい。

納得いかないが。

とか言う僕も女子の体に慣れていつしか受け入れていた。

何せ休日は部屋着としてワンピースを着用しているぐらい。

一応は女子としての生活を満喫し始めてきている。

もうどうせ男子には戻れないという諦めの境地からだけど。

そんな「姫さま」という渾名にも慣れてきた頃に例の告白事件が起きた。

性格には告白未遂事件だけど。

そこから「ヘタレ姫」という陰口が生まれ「ヘタ姫」、「ヘタ様」へと変化していった。

正直嫌なんだけど、いつの間にか定着していき、僕も気にしなくなりそれが日常へと変化していった。


 そして今日も通常運転で授業が始まった。

相も変わらず小難しい授業だ。

恐らくだけどもう高校の範囲は脱している。

大学レベルだろうか。

僕の周りは正直、ついて行けてないレベルだ。

僕は一応能力の助けもあってついて行けてはいる。


 そして、昼休みの時間。

僕はいつもにメンバーと集まって昼食を食べていた。

だけどいつもと何かが違う。

僕以外のメンバーが一言もしゃべらないのだ。

いつもはうるさいぐらいガールズトークが繰り広げられるのに。

僕は気を遣って何か質問したのだがぶっきらぼうに答えが返ってくるだけ。

まるで喧嘩をしているみたいに静かだった。


 そういえば今日はクラスメイトが何か変だ。

僕に対してよそよそしい態度というか。

何か僕が粗相をしたのだろうか。

いや、そんな訳はない。

僕には完全記憶能力がある。

それはボーッとしていても自然と発動する。

その完全記憶を辿ってもクラスメートが嫌がるようなことは思い当たらない。

ちなみに僕はこの学校に入る前に大学レベル以上の専門書を覚えさせられた。

それもかなりの数。

だから今の授業レベルでもついて行けるのだ。


 そんな余計な話はどうでもいい。

僕はそんな異様な中、全ての授業を終えた。


 放課後、僕は三条橋先生の部屋に行った。

三条橋先生は普通の教師の中ではかなり優遇されていて学校内に自分の部屋を持っている。

僕らはそこを修行の場として使っている。


 でも今日は少し様子が違う。

いつも修行は2,3時間掛けて行う。

ところが今日は1時間も経っていないうちに修行が終わった。

そして三条橋先生は

信桜しのざくらと遠山(僕)は残って自主練。

私は用事があるから戻ってくるまで好きにしていなさい」

と凄く矛盾のある言葉を残して去って行った。

当然、この部屋には僕と信桜さんの2人だけが残った。


 しばらく無言のと気が進んだ。

なんとなく気まずい。

そして唐突に信桜さんが僕に話しかけた。

「私はこの1ヶ月間、あなたのことが気になってとことん調べたわ。

そしていろんなあなたのことが知れた。

1ヶ月前、あなたに呼びつけられたときなぜ呼ばれたか分からなかった。

でも、いろんな人から話を聞くとどうやら私に告白をするためだったと分かったの。

恋愛をしたことが無い私にはその事が初めはピンとこなかった。

でもあなたのことを知る度にもっと知りたいとも思った。

あなたが「ヘタレ姫」でも構いません。

私にはあなたがかっこいい「姫」で有ることには変わらないから。

流石に男には見えないけど。

どうか私と付き合ってください」

僕は突然の告白に驚いて言葉も出なかった。

でも断る理由はない。

だって好きだから。


 「あれからこんなに期間が空いてからの告白。

虫が良すぎますよね」

僕は彼女が次の言葉を発する前に急いで

「はい、僕からもお願いします」

と早口で答えた。


  次の瞬間、パチパチと拍手が沸き起こった。

さっきまで修行をしていた仲間たちからだ。

三条橋先生がケーキを持って入ってきた。

どうやら歓迎されているみたい。


 次の日、クラスメートからも祝福された。

昨日、みんなの様子がおかしかったのは僕の告白が成功するか心配だったかららしい。

結果として逆告白になったけど。

しかしクラスメートからの

「女の子になってからの初めての彼女おめでとう」

という祝福にはどう理解していいのか少し混乱した。

もちろん、嬉しかったけど。



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