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親切

 最近、僕は困ったことがある。


 先日、昼食の時間に購買に寄った。

僕が来るのが遅かったのかすでに購買には3つのパンしか残っていなかった。

メロンパンとカレーパン、そして揚げあんパンだ。

僕は残っているパンを全部買った。

そうしたら、僕より遅く来た女生徒がいた。

僕と同じクラスの生徒だ。

彼女は僕が残りのパンを買い占めたことを知って恨めしそうに言った。

そして、彼女はぼそっと

「私はあまりお金を持っていないから、1日1食なのに。」

と言った。

僕はどきっとして彼女に

「ごめんね。これあげるから。」

と彼女が一番欲しそうにしていたメロンパンをあげた。

彼女は昼食の時間にメロンパンを食べているのをよく見ているからだ。

そうすると彼女はぼそっと

「冗談だったのに。でもありがとう。」

と言った。


 それから一週間、なぜか僕にいてくる。

放課(休み時間)はもちろん、昼食の時間やトイレにも。

特にトイレが困りものだ。

僕は普段使っていないトイレ、誰も入ってこないトイレを探して入っている。

そこにも彼女がいてくるのだ。

僕はまだ、この姿(性転換して女性に)になってからトイレを女子と共有するという感覚がない。

何よりも背徳感があるのだ。

それにトイレぐらいはリラックスをしたい。

女子が入ってくると落ち着かないのだ。

それにも関わらず彼女はいてくる。

ほとほと困っているのだ。


 今日も僕は3人で囲んで昼食を食べていた。

その内訳は先ほどから話している女の子と先日友達(仲間)になった忍者の灰庭はいにわさんと僕の3人だ。

灰庭はいにわさんは

「最近、遠山さん(僕)はその娘と仲、良いよね。私は嬉しいよ。早速、女友達を作るなんて。立派な女性としての第一歩を踏み出したみたいで本当に嬉しいよ。」

と感慨深げに語った。

僕は慌てて

「そうじゃないんだよ。この前、パンをあげてからずっといてくるんだよ。僕は女の子の扱い方が分からないからどうしたらいいか分からないんだよ。」

と答えた。

そうすると例の彼女がぼそっと

「自分だって女の子じゃん。」

と言った。

僕は聞こえないふりをしてそのことには答えなかった。

灰庭はいにわさんは

「失礼だけど、あなたのことを私はあまり知らないの。自己紹介してくれるとありがたいわ。」

と例の彼女に自己紹介を促した。

例の彼女はぼそっと

「私は氷見谷ひみや 凍里こごり。」

と名前だけを言った。

それ以上は何も語らず沈黙の時が流れた。

どうやら彼女はあまりしゃべるのが得意ではないようだ。


 放課後、僕たちが女子寮に帰るとき、氷見谷ひみやさんが灰庭はいにわさんに声をかけていた。

氷見谷ひみやさんが

「昼食の時にずっと気にしていたんだけど、足痛めていない?」

と聞いていた。

灰庭はいにわさんは

「あ〜、この前のトレーニングの時に痛めちゃって。でも、気にしないで。良くあることだから。」

と答えていた。

そうすると氷見谷ひみやさんが真剣な表情で

「いいから、見せて!!」

と言った。

灰庭はいにわさんは慌てて靴下を脱いで氷見谷ひみやさんに足首を見せた。

そうすると氷見谷ひみやさんは不思議なことを言い出した。

「私、冷え性だから手がとても冷たいの。湿布とか持っていないから手でしばらく冷やしててあげる。」

僕はエッと思った。

この娘は何を言っているのだろうか。

しかし、彼女を良く見ていると次第に両手が冷気を帯びていくのが分かった。

灰庭はいにわさんも驚いているようだった。

僕は慌てて自分のコップを取り出し水をくんで彼女(氷見谷ひみやさん)の目の前に差し出した。

氷見谷ひみやさんは不思議そうな顔をしてそのコップを眺めていた。

僕は

氷見谷ひみやさん、このコップの水を凍らせてみて。」

と言った。

氷見谷ひみやさんは笑って

「私がいくら冷え性だからって、コップの水を凍らせることなんて出来るわけがないじゃない。」

答えた。

僕は真剣に

氷見谷ひみやさんなら出来るはずだよ。氷見谷ひみやさんは能力者なんだから。」

と言った。氷見谷ひみやさんはキョトンとしていた。

その様子を見ていた灰庭はいにわさんは

「遠山さん(僕)、このクラスは能力者が多いと言っても、全員が能力者のことを知っているわけじゃないんですよ。」

と耳打ちしてきた。

僕は気を取り直して氷見谷ひみやさんに言った。

「いい、これから僕の言うとおりにして。まずコップ手にとって。それを両手で包むようにして持つんだ。そして精神を統一するんだ。え〜と、目を瞑って、深呼吸をして。そう。手に自分のエネルギーを集中させるイメージを持つんだ。そして、だんだんコップが冷たくなるイメージをするんだ。そう、そのまま続けて。」

僕のレクチャー通りに彼女は従った。

そして、数分後彼女はコップの中の氷を見て驚いていた。

それと同時に僕に2人目の友達(仲間)が誕生した瞬間でもあった。




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