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信桜 雨音

  (信桜しのざくら 雨音あまねの視点でお送りします)


 遠山とおやま 葵唯あおいと言う人物に興味を持ってから数週間が経つ。

分かったことは彼女がかなり珍しい存在だと言うこと。

そして、どうやら私に好意を持っていること。


 私自身、恋愛というものをしたことがない。

もちろん男性を含めてだが。

いやいや、含めてと言うのはちょっと違うか。

男性を愛することは普通か。

私は女なんだから。

私は生きてきて今まで女性を愛したことがない。

もちろん、同性として。

自分でも言っていることがめちゃくちゃなのは分かる。

同性愛にも理解しているつもりだ。

自分自身BLが少し好きだったりするから。

余談だがBLとは男同士の恋愛を描いている作品のこと。

私は女だからBLとは訳が違うが。

私のこの状況は世間では百合と言うらしい。

まだ付き合ってないのだから厳密には違うのだが。


 私は先輩には感謝している。

長らく絶縁していた(神居) 天巫あみとの仲を取り持ってくれたし。

何かと後輩である私を気に掛けてくれる。


 先輩はさっきも言ったとおり少し変わっている。

先輩の心は男らしい。

確かにしゃべり方も男言葉だし最初の印象は少し変わった人だと思った。

でも、先輩の立ち居振る舞いは洗練されたお嬢様にしか見えない。

だから先輩のしゃべり方はかなり違和感があった。

でもその違和感は先輩の自分自身のキャラ付けだと思った。

でもいろんな人の話としてそれが先輩の本質だと気づかされた。

そして先輩が男として女で有る私を好きなことも。

正直、戸惑っている。


 それでも日常は止まらない。

最近はそんなことを自問自答しながら毎日を過ごしている。


 朝、いつも私は自分で朝食を作っている。

いつものようにおき、いつものように着替え身支度をする。

そして、それから調理を始める。

調理と言っても既成のパンをトースターで焼くだけの簡単な作業。

焼いたパンに苺ジャムを塗りココアを飲んで登校する。

たまたま今日は苺ジャムだったけど実はいろんなジャムを取り揃えている。

大体十種類ぐらいか。

苺、林檎、葡萄、蜜柑、白桃、鳳梨パイナップル檬果マンゴー羊桃キウイ葡萄柚グレープフルーツ甘橙オレンジスモモなど。

一応全部手作りです。(一部既製品が混じりますが)

私はジャムが大好き。

だからこだわっています。

(あと、かっこつけて果物全てを漢字で書きました。調べるのが大変でしたが)


 そして登校するといつものように友達と会い、いつものように授業を受けます。

でもこのクラス、授業の内容が半端なく難しいです。

半分も理解できません。

そういう時は頭の良いクラスメートにいつも聞きに行きます。

さっきの漢字もクラスメートから教わりました。


 クラスも最初は大変でした。

クラスメートは私がチャイルズ、つまり上位の能力者だという事を知っています。

そして自分自身のコミュ障も重なり馴染むのが酷く苦労しました。

でもそれは時が解決してくれました。

今ではクラスでもそれなりに溶け込んでいます。

友達も出来ましたし。


 思えば私のコミュ障は幼い頃に遡る。

私はこの学校に来るまで師匠と二人三脚で全国行脚をしてきた。

もちろん、学校というものはここが初めてだ。

同い年の同級生と会ったこともない。

ずっと孤独だった。

だから友達作りには苦労した。

普通の人生を送りたかったなと今でも思う。

だから今は生き直しているようなもの。

毎日が楽しい!!


 そして授業が終わると三条橋先生の指導の下、チャイルズの修行。

つまり高度な能力の修行だ。

ちなみに三条橋先生が私の師匠。

普段は家庭科の授業を担当している。

一緒に暮らしているときはずぼらな性格で家事一切を子供で有る私に任せていた人が家庭科の教師とは笑いぐさだ。

それでいて炊事、洗濯、裁縫、掃除、料理の腕はプロ級。

全国を放浪していたときはその腕で身銭を稼いでいたらしい。

しかも結構なお金をもらっていたとのこと。

確かに生活には苦労した覚えがなかったけれども。

それを私の目の前でも見せてくれたら良かったのに。


 そして、チャイルズの修行が終わると個人レッスン。

しかも何度はかなり上がる。

私は三条橋先生を鬼と呼んでいる。(もちろん心の中でだが)

そのぐらいハードな修行が繰り広げられる。


 小さい頃、師匠は年の近いお姉さんだと思っていた。

見た目がどう見ても小学生だから。

でも、いつの間にか師匠の背を追い抜き私の方がお姉さんみたいになっていた。

師匠も年を聞くとお姉さんというよりおばあさんぐらいの年齢でビックリした。

いわゆるロリババアと言う奴。

年齢はご想像に任せます。


 師匠の昔話はとても面白い。

何でもこの国で3番目の実力者らしい。

もちろん能力のことだが。

そして能力者ならではのいろんな話を聞いた。

どれも現実離れした話だが今では本当のことだと実感している。

何せ師匠の実力は本物だから。


 そんな人生経験の豊富な師匠に先輩のことを相談してみた。

「あなたはどう思っているの?

まだ恋愛経験が無いから戸惑っているの?

私たち能力者の世界は女社会だからね。

女同士のカップルなんて腐るほど見てきたさ。

あなたも色々と 遠山とおやま 葵唯あおいのことを調べたのでしょう。

気になって。

そして付き合うかどうか悩んでいるのでしょう。

でもそれって答えが出ているんじゃないかしら。

嫌いな相手だったらそんなに詳しく調べもしないしましてや困ることもない。

興味の無い相手でも同様ね。

付き合うかどうか悩んでいると言うことは相手に好意を持っていることに同義だわ。

付き合うという選択肢があるのだから。

相手も好意を持っているのなら断る理由なんて無いんじゃないかしら」


 どうやら私は答えを最初から持っているようだ。

でも修行をしながら答えてくれるのは非常にきつい。

多分、半分も聞こえていない。

真剣な話なのだからせめて修行を止めて話して欲しかった。



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