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 (信桜しのざくら 雨音あまねの視点でお送りします)


  先輩の昔の話を聞いてから一週間が経つ。

先輩とは遠山とおやま 葵唯あおいのこと。

彼女はチャイルズの1人。

チャイルズとは一般の能力者とは違いレベルがかなり上の人物たち。

恥ずかしながら私もその一員だ。

でも彼女はそのチャイルズの中でも能力が突出している。

何せこの間まで素人だったというのが信じられないぐらい。

私は小さい頃から苦しい思いをしして修行をしてきた。

それも血のにじむ思いをして。


 私には親が居なかった。

確か、私が幼い頃に事故で死んだと聞かされた。

私は覚えていないが。

だから私は親代わりの人物がいた。

三条橋さんじょうばし 温奈あつなだ。

そしてその人が師匠でもあった。

私が物心つく前から一緒に暮らしている。

小さい頃は師匠と一緒に全国行脚をしていたっけ。

師匠は親としても師匠としても厳しい人だった。

やっと解放されると思ったら今度はこの学校の教師になっていた。

本当に熟熟つくずく運がない。


 話を戻そう。

遠山とおやま 葵唯あおいはそういった苦労は一切していないらしい。

チャイルズになるのはめちゃくちゃ大変なはずなのに。

しかも自称元男、本当に変な人だ。


 この間の元カノさんの話を私は整理するのに一週間かかってしまった。

今日は生徒会室に行こうと思う。

生徒会室には先輩のお姉さんが居る。

私は意を決して入った。


 「遅かったわね。

待ちくたびれたわ」

私が入ってくるなり彼女はそう言った。

そして彼女は

「悪いけれど私1人にしてくれる。

彼女とサシで話したいから」

そう言って彼女は生徒会室にいた他の人たちを追い払った。


 「改めて自己紹介するわ。

私の名前は遠山とおやま 聖雪いぶ

ここの学校で生徒会長をやっています。

チャイルズの合同練習で会っているはずだけど」

私は静かに頷いた。

彼女は

「聞きたいのは妹のことでしょ。

いいわよ。

何でも聞きなさい」

そういった彼女の姿はとても凜々しかった。

なるほど王子と呼ばれているわけだ。

私は納得した。


 まず私は

「あなたの妹さんが元男だというのは本当ですか?」

と聞いてみた。

彼女は

「その通りだし、その時の写真を私は持ってるわ」

と言い、目の前に差し出してくれた。

私は

「妹さんは本当に男子だったんですね。

なんか面影があります。

学生服も似合ってますし、なんかイケメンですし」

「でしょ、でしょ。

私の妹は女子にモテモテだったんだから」

彼女は私の言葉に食い気味にしゃべった。

あれ、何かさっきと違う。

そういう違和感に囚われた瞬間にさっきの彼女に戻っていた。

彼女は

「私の妹は元男子というのは実は不正確なの。

本人もそこの所あまり理解していないみたいだけどね。

妹は男子と思い込まされて生活していただけだから。

あ、思い込ませていたというのは表現としては正しくないわ。

何せ本当の男子の体で生活していたから。

妹は生まれたときは女の子だったんだけど、あまりにも力が強すぎたの。

このままでは容器(体)が崩壊してしまうぐらいに。

だから力の封印が必要だったの。

それに必要だったのが男子の体。

私たちの仲間にはあらゆるものを作り出せる人がいるの。

それこそ人間の体だってね。

さずがに命は作れないけど。

これは緊急避難だったの。

妹にそういう措置をほどかさないと妹どころか私の命でさえ危なかったから」


 私は思わず「えっ!!」と答えてしまった。

「言い忘れていたけど私と妹は双子なの。

でも生まれてすぐ離ればなれで生活していたけどね。

だから妹が私の存在に気づいたのはこの学校に入ってから。

私は妹の存在は小さい頃から知っていたけどね」

「でも学年が」

私そう言うと

「そこの所話すと面倒めんどいのよ。

とにかく妹はいきなり女子として生活しなければならなかったから。

そのリハビリ期間が1年って事」


 彼女がそう言い終わると私はもう1つの質問をした。

先輩が男子時代モテていたことに無自覚だったことを。

そう聞くと彼女は突然関係ない話をし始めた。

「双子って昔から不思議な力が有るって言うじゃない。

お互い通じ合うって言うか。

私の場合、能力者って言うのもあってそれが強いみたいで」

何でこんな話をするのか分からずにキョトンとしていると

「私はどうも妹の5感を感じやすいらしいの。

5感というのは視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。

最初は不思議な感覚だった。

でも慣れてくるごとに上手に使えるようになってきた。

意識すれば今でも妹の5感と直結できるわ」

私は「はぁ」と相槌を打った。

「私は昔から妹を監視し続けていたの。

妹が自分が女だと感づかないように。

場合によっては妹の学校に潜入したりもしたわ。

もちろん男装してだけど。

そして妹の恋愛フラグは私が全部へし折ってやった。

1人を除いてだけど。

その1人って言うのがあなたの会ったあの娘。

だって、あの娘は告白する素振りを見せなかったから。

迂闊だったわ」

私は

「なんでそんなことをしたんですか」

と聞いてみた。

彼女は

「だって、妹が女になったときに女の子とつきあったことがあるって重荷にならない。

偏見はないんだけど事実上女の子同士の恋愛になる訳じゃん。

そういった娘たちを否定するわけじゃないんだけど妹がそうなることを想像が付かなくてね。

でも、事実そうなってるんだけど。

だって妹はあなたに告白したんでしょ」

私は

「いえいえ、告白なんてされてませんから。

監視しているのならそんなことぐらい分かるんじゃありません?」

と慌てて聞き返した。

「今は監視しているわけじゃないから。

それに妹は今では私よりも能力が強くて繋がるだけでも精神的に疲弊してしまうの。

だから今はよっぽどじゃ無い限り繋がることはない。

あ、このことは妹には内緒ね。

知られると色々とややこしいことになるから。

でも、妹があなたを好きだというのは本当。

この前だって告白するつもりだったのは間違いないんだから。

でもできなかったところが「ヘタレ姫」と言われる由縁ね。

それであなたは妹のことをどう思っているの?」


 私は

「とてもかっこいい方だとは思います。

考えがあれの方だとは思っていましてけど誤解が解けました。

でも私自身、女の子とそういった形でつきあうこと自体、考えたこともなくて。

もう少し考えさせてください」

彼女は

「考えることは良いことだと思うの。

私自身、あなたの立場になったらどういった判断をすべきかとことん悩むと思う。

でもね、妹は私にとって最高の嫁、じゃなくて妹なの。

妹を傷つけないでね。

出来れば付き合って欲しくはないけど、じゃなくてあなたにとって良い答えを待っているわ」


 私たちの話し合いは終わった。

そしてとても疲れた。


 そして1つ分かった。

生徒会長は重度のシスコンだと言うこと。

そして生徒会長が王子と言われる由縁は恐らく男装の経験から。

そして先輩が姫と言われているのも心が男だからかと。

なぜなら完璧な男子、女子というのは同性から見るのではなく異性からしか見えないのだと思う。

それぞれが異性を演じることで完璧な男性、女性が生まれるのだと思う。

私の個人的意見だが。




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