女子
(前回の続きです)
性転換してからの僕は本当に大変だった。
とにかくある程度の能力が出そろった頃の僕の生活は多忙を極めた。
午前は能力や戦闘の訓練。
毎日、相手が違えど訓練は同じ。
そういえば1年生の時と同じ同じローテーションだっけ。
月曜日は火脚さん、
火曜日は冬室さん、
水曜日は波津さん、
木曜日は金時さん、
金曜日は吹原さんの順番だった様な。
もう分かっていると思うけど1年生の担任が僕の師匠なんだ。
最初のなんだけど。
それぞれやっていることは同じ。
属性は違うけど。
まずは能力の基礎訓練。
たとえば火脚さんだったら炎のたまを出来るだけ大きく出来るだけながく保持する訓練。
他の師匠も似た様なものだ。
それが1時間続き、次に能力を使った組み手。
これが正午まで続く。
僕は炎、氷、水、雷、風の全属性を持っている。
自慢じゃないけどそれ自体非常に珍しいらしい。
世界に数人しか良いないのだとか。
師匠たちはそのいずれの属性も均等に成長させたいと言っていた。
午後は専門書らしきものが毎日数十冊持ち込まれてそれをひたすら読む時間。
本の分野は多岐にわたる。
月曜日は体育。
火曜日は書道、古典
水曜日は地理。
木曜日は物理。
金曜日は地学。
これらは他の日より少し多めと言ったところ。
総記、哲学宗教、歴史地理、社会科学、自然科学、技術、産業、芸術、言語、文学
(日本十進分類法に準ずる)
が満遍なく網羅し数十冊読まされた。
しかも専門書なので意味が分からぬまま読まされる。
僕は完全記憶の持ち主なのでとにかく頭の中に詰め込むという形だ。
理解は後にすれば良いとも言われている。
そして、夜もやらなければいけないことが沢山ある。
僕が女子としては初心者なので女子高生向けのファッション誌や情報誌。
少女漫画などをひたすら読まされる。
そんな日が毎日続くと流石に心が安まらない。
でもそれだけではない。
残りの土日だって僕は気が休まらない。
土日は基本的にお出かけ。
女子としての行動を義務づけられる実地訓練だ。
とにかく口酸っぱく言われたことは自分が女子であることを決して忘れないこと。
女子トイレや女子更衣室など、女子しか入れない場所へ強制的に行かされる。
そして自分が男子ではないことを徹底的に植え付けさせる訓練だ。
この訓練で男子に戻れないことを徹底的に植え付けられた。
でも楽しかったことはなかったわけではない。
遊園地や動物園にも言ったし、野球場やサッカー場にも行った。
プールに行ったときは本当に大変だったけど。
夏の暑いとき、突然火脚さんがプールに行こうと言った。
僕は確かに行きたいけど水着に着替えるのが面倒いと答えた気がする。
そんな僕の答えを聞いてくれるはずもなく無理矢理連れて行かれた。
僕はもちろん女子用の水着なんて持っていない。
だから僕の面倒を見ている5人がそれぞれ用意をしていた。
つまり、彼女たちの選んだ5着のうち一着を着なければならない。
それはどれも可愛らしく到底僕が着るには無理なものばかりだった。
せめてセパレートではなく一体型が良いのだけれどもちろんそんなものは無い。
僕は仕方なく目を瞑って一つを指さした。
それでその女子たちはワーワーキャーキャー騒いでいたけど僕は耳に聞こえなかった。
なぜなら次はこれを着なければならない。
出来ればすぐ帰りたいんだけどそれは許されない。
そんな僕を知ってか知らずか無理矢理に女子更衣室に連れてかれた。
更衣室では
「あんまりじろじろ見ないでね。
普通にしてて良いから。
水着の付け方は私たちを観察して見よう見まねですれば良いわ。
大丈夫、あなたにはコピーの能力があるでしょう」
と言われた。
誰が言ったかは記憶が無い。
それぐらい僕は混乱していた。
正直、プールでの出来事は覚えていない。
それぐらい更衣室の出来事は僕にとって衝撃的だったから。
でも僕は女子としての生活はもう慣れてしまった。
今では普通の女子として自信が持てるぐらいに。
なにせ、毎日僕の面倒見ている女子の1人と風呂に入らされる。
女子の裸に慣れるためという名目で。
最初は気恥ずかしかったけど1週間もすれば全然気にしなくなった。
転校する1ヶ月前なんて毎日の様に銭湯に通った。
だから女子の裸なんて今ではなんとも思わなくなったよ。
僕はみんなの前で嘯いた。
みんなも忘れていると思うが今は旅館の一室。
クラスメイトと一緒の部屋だ。
すぐさまクラスメイトからは
「嘘だ!!
一緒にお風呂に入るのにあんなに拒んでたじゃん」
「師匠は嘘が下手ですね。
普段の学校での行動を見ていれば女子の裸どころか女子にすら未だ慣れてないじゃないですか」
と一斉にブーイングされた。
「まぁ、師匠は外面は良いですからね。
あ、これは悪口じゃなく。
仕草だけ見れば完璧な女子。
言動はあれだけど。
だから事情を知らない生徒たちは師匠のことを学園の姫って呼んでいるんですよ。
ちなみに(師匠の)お姉さんは学園の王子と呼ばれています」
僕は
「それが納得いかないんだよね。
何で逆じゃないのか」
と呟いた。
灰庭さんは
「師匠が完璧な女子を目指しているかどうかはともかくまずは私たちと一緒に寝れる様にならなくちゃね」
と言われた。
僕は布団をみんなからだいぶ離していることを指摘している様だ。
僕は一応反論を試みようと思ったが無理そうなので一応黙っていた。
その後は女子特有の恋バナとかコスメやファッションや(男性)アイドルの話で盛り上がっていた。
もちろん僕は蚊帳の外。
そして僕らは一睡もせず寮に帰ることになった。
理由はガールズトークが盛り上がりすぎて。
参加してない僕でもあの喧噪では眠ることは無理だ。
寮に帰って早く寝たい。




