男嫌い
先日、委員長に5人仲間を作りなさいと言われた。
僕は混乱し、戸惑っていた。
言い方が悪いが僕は女の子とどうやってつきあったらいいか分からない。
(男だった)中学時代に1人の女の子と初めてつきあうことになったが、僕が女の子の気持ちが分からなかったからかいつの間にかお互いの連絡が滞り、自然消滅してしまった。
これから友達(仲間)を5人作れと言ったってここは女子校、女生徒しかいないのだ。
(元男だから)異性とつきあう(友達作り)ということはハードルが高すぎる
だいたい、どうやって話しかけたらいいのか分からない。
それよりも気になることがある。
転校してきてからずっと一日中にらみつけてくるクラスメイトがいるのだ。
あまりにもにらみつけてくるのではじめはそういう顔なのかとも思った。
しかしクラスメイトとと接するときは笑顔だ。
僕を見るときだけ明らかににらんでいるのだ。
僕が彼女に何か失礼なことをしたのかと考えても何も思い当たる節はない。
だいたい、話しかけてもいないしこちらから近づこうとしても彼女は離れてしまう。
接点がないのだ。
僕がこの学校に転校して一月ぐらい経つが、話したことのないクラスメイトは(にらみつけてくる)彼女だけだ。
僕は出自が特殊なため、興味を持って話しかけてくる娘が多かった。
何しろ、性転換をして女子校に転校してきたのだ。
興味を持たない方が嘘である。
僕も聞かれたことをその都度、(恥ずかしがりながら)馬鹿正直に答えていた。
クラスメイトからするとどうも話しかけられやすい存在だったようだ。
僕はそういう環境に戸惑っていた。
そんな中、(にらみつけてくる)彼女だけが教室の隅で傍観していた。
ある日、珍しくそんな彼女が僕に話しかけてきた。
「悪いけど、放課後校舎裏に来てくれる?」
委員長といい、この学校の生徒はよっぽど校舎裏が好きらしい。
そして、校舎裏に呼び出されると言うことは何か嫌な感じがした。
校舎裏に着くと彼女は突然僕に向かって(悪い意味での)壁ドンをした。
そして彼女は開口一番
「あのさぁ、なんで学校辞めないの?」
と聞いてきた。
僕はあまりの出来事に唖然としていると、彼女は続けて
「だいたい、何で女子校なの?共学じゃ駄目だったの?何で(元)男の子が女子校に転校してきたの?」
と聞いてきた。
その質問の仕方は恫喝にも聞こえる。
僕は仕方なく質問に答えた。
「僕だって好きで女子校に転校してきたわけじゃない。最初は猛烈に反対したよ。でも、詳しくは分からないけどこの学校じゃなきゃ駄目だって言われたよ。だいたい、君が聞いたことは僕が聞きたいことだよ。僕だってこの学校を今すぐ退学したいけど、いろんな事情が重なって簡単にはできないんだよ。ていうか、無理だから。」
そうすると彼女は
「よく分からないけど、あなたの事情は分かったわ。でも、よく分からないのは性転換してまで女子校に入ったのにあなたは何でイヤらしいことをしないの?もしかして、恋愛対象は男の子?」
僕はすかさず、
「そんなわけないでしょ!!僕は(体が女の子でも)心は男だから。恋愛対象は女性だよ。それと男は誰しもイヤらしいことはしない。それは偏見だよ。」
と強く反論した。
そうすると彼女は素直に
「ごめんなさい、私はあまり男の子というものを知らないの。私の生まれは忍びの里でその中でも女性だけが暮らす集落に住んでいました。その中で男はケダモノだと教わり育ってきました。だから、性転換までして女子校に潜入するような輩はとんでもないやつだと思いました。」
僕はその答えに反応して
「(転校してきた理由に)僕にイヤらしい気持ちはこれっぽちもないよ。そりゃぁ、女の子は好きだけど。だいたい、イヤらしい気持ちがあったとしても性を捨ててまで転校してくるやつはいない。僕はやむを得ない事情があったんだ。詳しくは言えないけど。」
そう言うと彼女は頷いた。
しかし、完全には信用していない目だ。
僕は困り果ててしまった。
ふと、彼女もカバンに目をやるとかわいいぬいぐるみがいっぱいついていた。
そこで僕は
「え〜と、カバンにぬいぐるみが沢山ついているけど、かわいいものが好きなの?」
と聞いてみた。
彼女は恥ずかしそうにうなずいた。
そこで僕は閃いた。
僕は能力者だ。
能力者は一定以上の力を内包すると(つまりレベルの高い能力者は)ある姿に変化します。
(男に戻るとか、他の動物に変化するわけではありません。だいたい、男に戻れたら女子校になんか転校しません!!)
女子高生は仮の姿だ。
彼女はかわいい物好きだ。
元の姿を見れば彼女は気に入ってくれるはずだ。
この姿は誰にも見せてはいけないと言われた。
でも、こうなったら仕方がない
さいわい、ここには誰もいない。
僕は意を決して元の姿を見せることにした。
結果は大成功だ。
彼女は気に入ってくれた。
「あなたを育てます。立派な女の子になるまで」
彼女は嬉しそうにそう言った。
しかし、こうも態度が豹変すると僕は戸惑ってしまう。
彼女は続けて
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。知っているかもしれませんが私は灰庭 忍葉と言います。私もあなたと同じ能力者です。それとこれでも忍びの里で育った本物の忍者ですのでよろしくお願いします。」
いろいろとあったけど、ようやく僕に友達(仲間)が出来ました。