海水浴
ようやくの夏休み。
僕たちは長かった一学期を終えた。
僕たちは一応約束事としてあることを決めている。
それは夏休みなどの長期の休みは自主練。
お互いの修行には口を出さないと言うこと。
だから、長期の休みに僕は弟子に会うことはない。
と言ってもそれは師匠と弟子の関係での話。
弟子は僕の女友達でもあるからたまに遊びに行くこともある。
夏休み前、
送愛は
「ねぇねぇ、夏休み6人で遊びに行かない?
師匠とは毎日会っているけど忍葉や天巫とは放課後全然会ってないし。
久しぶりに6人で。
そうだ、海なんてどう?」
そう言うと5人はあっさりと了承した。
僕の意見も聞かずに。
その後、担任の三条橋先生が夏休みの注意喚起をした。
「みなさんは能力者でもある。
半分は違うけれど。
特に能力者は一般の遊び場には行けません。
いつ能力が暴発するか分からないし。
能力者でもある生徒たちは指定の遊び場で遊んでもらいます。
去年も同じような注意喚起があったはずです。
幸い、我が校の敷地内に海水浴場や遊園地など娯楽施設も充実しています。
どうかそこで遊ぶように。
そしてたがを外さないように」
相変わらず小っこくてカワイイ三条橋先生にみんなはメロメロ。
当然話は聞いていません。
三条橋先生はまるで大人ぶっている子供のよう。
そこがまたたまらないのだとか。
と言うことで僕たち6人は海に来ています。
でも海に入る前に監視員に止められてしまいました。
監視員のお姉さんは
「ごめんね。
ここは普通の海水浴場ではないんだ。
一応、能力者以外は立ち入り禁止。
でも、時々一般の娘も入ってきちゃうこともあるんだ。
だから、君たちに能力があるかどうか一応たし目召させてね」
と言ってどこからともなく水晶玉を出してきた。
と言うのもその水晶玉を持っているお姉さんは当然水着姿。
水晶玉なんて隠せる所なんて無い。
僕たちが呆気にとられていると監視員のお姉さんは
「この水晶玉に手をかざしてみて。
決して触らないでね」
と言って僕たちを順番通りに回って水晶玉を近づけた。
3人の女の子を鑑定した後、僕たちはあっさりと通された。
残りの3人の鑑定をなぜしないのかと聞いてみると
「僕だって残りの人たちが「チャイルズ」だって事は分かるさ。
それに鑑定しなくてもオーラがダダ漏れだしね」
と言って笑っていた。
最後に監視員のお姉さんは
「取りあえず自己紹介しとくね。
僕の名前は海野 渡。
男の子っぽい名前でしょう。
本名ではないんだ。
僕は一応、アイドルとしても活動している。
女ばかりの能力者の世界。
とにかく僕たちの世界には華がない。
そこで僕のようなものが男装して女社会に花を添えることが必要だと思う。
夜には僕のライブもあるから見に来てね。
それとこの海水浴場は当然ながら男子禁制だから安心して羽を伸ばしてね」
さて、ここからが問題だ。
スク水は着たことがあるが当然、それ以外の水着を着たことがない。
だから水着は友達が選んでくれた。
その水着は僕が思っているよりもだいぶカワイイものだった。
何せ性転換してから初めての海水浴。
しかもこの海水浴場は男子禁制。
当然僕の体も女子なのだがとても居心地が悪い。
何せ見渡す限り女子の水着姿。
当然ながら男子など見当たらない。
まだ心が男子の僕はここにいて良いのか不安でもある。
「葵唯ちゃん、一緒に遊ぼうよ」
友達が声をかけてくるがどうにも調子が狂っている。
「葵唯ちゃん、水着とっても似合っているよ。
自信を持って
とにかくめちゃくちゃカワイイんだから」
その水着のせいで調子が狂っている面もある。
水着は僕に気を遣ったのか僕の好きな青色がベースだ。
そして、花柄のデザインでトップスとボトムスのワンポイントにリボンが付いている。
とても僕が選びそうにないデザイン。
大体、僕はスク水みたいに上から下までひとつなぎの水着を期待していた。
それがビキニなんて恥ずかしいもいいとこだ。
そういえば体育の着替え中にこういったことがある。
「女子って面倒くさいよな。
下着の数って、男子の時と比べれば圧倒的に多い。
朝起きたときに服着る前に疲れるっちゅうの。
大体、胸を隠す意味が分からない。
水着だって下だけで充分だと思うけど」
僕がそう言うと
「あなた、痴女なの?
それともまだ男だったときの感覚が残っているの。
男の時必要なくても女の時必要なものは沢山あるの。
大体、あなたも胸に立派なものが付いているんだから自覚しなさいよね」
とクラスメートたちは怒って説教してきた。
僕はその説教にタジタジになりながら納得した。
海水浴場に来て1時間ぐらい経つとそんな僕でもなんとなく慣れてきた。
普段体育の授業に碌に出ていないのでそれから一生懸命はしゃいだ。
我ながら恥ずかしいぐらいに。
自分が女だという自覚は無いがそんなことは気にせず1日中遊んだ。
今更ながらだいぶストレスがたまっていたのだなと後になって思った。
夜の7時ぐらいになると男装アイドルのライブが始まった。
それは監視員のお姉さんだった。
彼女は見事な男装でそんじょそこらの男性アイドルよりも格好良かった。
まぁ、声はどうしようもないが仕草は男性そのもの。
男に興味の無い僕でもかっこいいと思ったほど。
そして周りの声援も凄かった。
僕たちはこの後男子禁制の旅館に泊まって次の日寮に戻った。
しかし、男子禁制と聞く度にドキッとする。
僕がその場所にいても良いのかと不安になる。
その様子を見て周りの友達がフォローしたりしてるが。
僕は性転換してからだいぶ経っているのだが、僕はまだ性転換した現実を受け止められないようだ。




