物理教師
(今回のお話は金時 美雷の視点でお送りします)
初めまして、わたくし金時 美雷と申します。
私は他の人とは違い最初に自己紹介しときますね。
私はとある学校で教師をやっています。
簡単に言えば高校教師です。
去年まではクラス担任もしていましたが今はしていません。
大体、曜日によって担任が違う制度なんて聞いたことがありません。
前代未聞です。
案の定、今年になってその制度は廃止となり私たちとは違う先生が担任になったのですが。
そうそう、その担任は三条橋 温奈先生。
見た目小学生でしかも委員長タイプの先生。
とても可愛らしい先生です。
いつも上から目線の言動なんですがそれが無理して大人を演じているみたいでカワイイ。
本人曰く私たちよりだいぶ年上なのだそう。
でもそんなことは誰も気にしていません。
彼女は今や我が校のアイドル的存在でマスコット的存在です。
コホン、少々脱線してしまいました。
私は何せカワイイものに目が無いですから。
話を戻します。
私の担当教科は物理です。
特に私は力学が専門です。
力学は物理学の基本中の基本。
自然界におけるあらゆる力またはエネルギーがどのように作用するのかを研究する学問です。
ちょっと難しい話ですが。
私はこの手の話がとても好きです。
でも専門的すぎて誰も話しについて来れない。
教師仲間ですら。
正直それに腹が立ちます。
私が専門とする物理は他にも役に立つことがあるんですよ。
それは後々話します。
話は変わりますが私は常に怒っていると言われます。
私自身自覚がありませんが。
言葉がきついのでしょうか。
確かに感情的になりやすいかも知れません。
でも多くは叱咤激励で怒ると言うことはありません。
大げさに思われるかも知れませんが私は生まれてこの方怒ったことは一度もありません。
この学校の教師になってからも。
確かに私の授業は高度なのかも知れません。
好きな分野だとめちゃくちゃ滔々(とうとう)と語ります。
気がつけばクラスの半分はポカンとしていることもあります。
その時は少々いらだちますが。
大体、私は授業内容の何処が難しいのか分かりません。
だから生徒が質問してくるとき、その意図が分からなかったりします。
なぜこんな簡単なところで生徒がつまずくのか理解ができないのです。
そういう生徒は私がいくら説明しても理解ができません。
終いにはその生徒は全く関係の無い先生に聞きに行き問題を解決するのです。
ちょっと腹が立ちませんか。
教師仲間が言うには私は教えるのが下手らしい。
自慢では無いが物理に関しては小学校で大学の内容を理解していた私はできない生徒のことを理解できないのだと言われた。
だから理解するように努力しろとも言われてきた。
でもできないものはできない。
私は開き直って今でもいつものように授業をしている。
しかし、困っているのは生徒から怖いと言われていること。
最近は教師仲間にも言われる。
理由は分からないがどうにかして治さないと行けないとは思っている。
思い当たる節はないが。
ちなみに私は他の先生と同じく能力者だ。
能力者のクラスで授業を受け持っている先生は大体、自身も能力者らしい。
但し全員ではないが。
私の能力は雷だ。
そしてこの能力は私の専門とする力学にとても相性が良い。
どのように力を加えれば私の雷がどのように動くのか簡単に計算ができる。
一応言っておきますが暗算は得意です。
10桁掛ける10桁までは簡単にできます。
一時期は人間計算機とまで言われましたから。
私には弟子がいます。
その娘はとてもおしゃべりでとても困ります。
暇さえあればしゃべっている。
でも彼女は色々と物知りなのでたまに有意義な情報もくれる。
その時は有り難いのですが99パーセントは無駄話。
本当に鬱陶しい。
そして彼女は時々、私の話を聞いていない。
自分のおしゃべりに夢中すぎて。
いや、本当は聞いているのだが理解できていないのか。
それはよく分からない。
その時は言い合いになったりもする。
それでも収拾が付かないときは私の師匠を呼ぶ。
そして師匠はいつも
「それは君が悪い。
教え方が下手すぎるから。
もっと簡単な言葉で教えられないのか」
といつも私を悪者にする。
いつも私は納得できないのだが矛を収めるために我慢をしている。
私だって本当は分かっている。
理解もしている。
でも簡単な言葉で伝えるってとても難しいことだ。
しかも私は何が簡単な言葉で何が難しい言葉なのかを理解できない。
私にとってはみんな平易なことだから。
しかも私の能力を口伝で伝えるためには私の感覚を理解してもらう必要性がある。
どうやって教えるべきかいつも思案中だ。
と言っても最近では弟子との口げんかも少なくなってきた。
月に1回ぐらいだろうか。
師匠の仲裁も必要なくなってきている。
恐らく弟子である彼女は私の性格を理解し始めてきたのだろうか。
私も弟子の性格を把握してきた。
最近では私の弟子は私の授業の仕方まで口を出すようになってきた。
私もそのアドバイスに基づき授業をしている。
そして授業の評判もだいぶ良くなってきているようだ。
とにかく物理の授業と能力の修行に毎日を費やしている。
一番最後にもう一回言っておくが私は感情的になるにせよ一度も怒ったことはない。
叱ることはあるけれども。
怒ると叱るは全く違う。
ま、言い訳なんだけど。




