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入学式

 4月早々、僕らは生徒会室に呼びつけられた。

と言うのも昨日姉貴から来いと命じられたからだ。


 姉貴は生徒会長 遠山とおやま 聖雪いぶだ。

僕はなぜか姉貴には逆らえない。

この高校で初めて会ったのだけど。

つまり生き別れの姉。

しかもかなりの能力者だった。

そして驚いたのが僕についての情報力。

小中と僕の友達やクラスメイトの名前、僕との親密度。

僕が誰と付き合ったことがあるか、そして僕の好みのタイプまでしっかりと当てて見せた。

彼女は(僕と)双子だからとうそぶいていたが何らかの秘密があるはず。

それにしても詳しすぎる。


 もちろん姉は僕の弱みも知っている。

だから逆らえない訳じゃないんだけど。

なぜか姉は僕の全てを見透かしているような気がする。


 春休み中は僕は自主訓練、そして姉との組み手。

新しくチャイルズの仲間になった2人とも組み手をしたりした。

そういえば新しく担任になる女の子の訓練は地獄だった。

本当に容赦が無い。

彼女は僕よりもだいぶ年上らしいが見た目や言動から女の子としか表現しようがない。

彼女に慣れるまでだいぶ時間を要しそうだ。


 そんなことを考えながら僕はあと2人を連れて生徒会室に入った。

あと2人とはくのいちの忍葉しのは巫女みこ天巫あみだ。

2人ともつい最近チャイルズに昇格した。

ちなみに「チャイルズ」とは能力者の上の方の事らしい。

僕らはつまり幹部見習いらしい。


 生徒会室に入ると生徒会役員が勢揃いしていた。

その中には僕の元カノや僕たちクラスの委員長もいた。

彼女たちは僕の姉の能力者仲間でもある。

全員氷の能力者だったっけ。

生徒会長(姉)は

「よくぞ来てくれましたね。

生徒会はあなたたちを歓迎します。

と言ってもあなたたちは生徒会見習いですけど」

僕たちはキョトンとしていた。

姉は続けて

「コホン、あなたたちには拒否権はありません。

このことは三条橋先生の命令でもあります。

あの方は私たちの世界ではかなりの地位の方ですから。

つまり三条橋先生の言うことは絶対なのです。

今度新任される見た目幼女の先生だからって甘く見ないように」

三条橋先生が聞いたらめちゃくちゃキレる所だと思うが。

「そういうことであなたたちに初仕事を命じます。

私たちと一緒に入学式の準備をして下さい。

何せ人手が足りないのですから。

それにあなた(僕)はこの学校の入学式を味わったことがないでしょう。

存分に味わいなさい」


 そういえば僕はこの学校に去年の5月転校してきた。

しかもしっかりと性転換をしてから。

女子高生として高校生活を一からやり直しもうすぐ1年。

(と言っても男子高校生だったのは1ヶ月だけだったけど)

色々と苦労した。

奥手だった僕は周りに女子がいることすら非日常の出来事だった。

そんな僕がよくぞ1年女子高生としての生活が出来たものだと少し感動した。

ほんの束の間の感情だったけど。


 そしてその日から入学式の準備の奔走した。

この学校のしきたりとして入学式は生徒自身の手で行うとのこと。

つまり教師たちは手伝ってはくれない。

なるほど人手が足りないはずだ。

しかもこの学校は入学式が2回あるとのこと。

どういったことだろうか。


 入学式当日。

一般の学生の入学式が滞りなく行われた。

生徒会長が祝辞を行い僕たちが入学生を祝う。

教師が直接入らない分ちょっと不思議な入学式。

そして何事もなく終わった。


 昼食後、生徒会長は

「これからが本番。

昼から特殊科の入学式を行います。

特殊科は文字通り特殊なことから一般の生徒からは秘密にされてます。

そうよね、桃映ももえさん?」

桃映は一般の学科から特殊科に移った生徒だ。

ちなみに僕の元カノでもある。

桃映は

「はい、こんな学科があるなんて知りませんでした。

私も能力を発芽させなければ気づかないと思います」

ちなみに発芽とは特殊な能力が出始めること。

会長は

「2人は特殊科の入学式は初めてよね。

だから新入生と同じ気持ちになって楽しんでね。

あ、もちろん生徒会の仕事はしてもらうけど」


 そして特殊科の入学式が始まった。

生徒会長がまず祝辞を述べた。

「皆様、ご入学おめでとうございます。

そして特殊科へようこそ。

この中の半分は既に特殊な能力を授かっていると思います。

私たちはこの国の防衛のためにその特殊な能力を捧げなければなりません。

この国の平和のために。

もちろん他の国々にも私たちと同じ部隊、同じ学校を有しています。

それらの国々にも負けないように頑張りましょう。

そして残りの半分ですがあなたたちはかなり優秀な頭脳を持っています。

私たちのサポートをよろしくお願いします。

さて、この特殊科の説明をします。

1年生の段階で高校レベルの授業を全て習得してもらいます。

2年生では大学レベル、3年生では(大学)院レベルを習得してもらいます。

と言っても半数の人たちは楽勝だと思います。

私たち能力者は苦戦しますが。

とにかくお互い頑張りましょう。

ちなみに余談ですがご紹介したい人がいます。

葵唯あおい(僕)、ちょっとこっちに来て」

僕は言われるがままに登壇した。

会長は

「紹介します。

私の妹です。

どう、双子みたいに似ているでしょう」

会場がかなりざわついた。

「この娘はかなり変わった経歴を持ちます。

まずは元男の子だと言うこと。

でも安心して元々中身は女の子だったから」

おいおい、嘘をつくなよ。

今でも中身は男だって言うのに。

会長は続けて

「この娘はまだ女の子になりたてで右も左も分からない状態なの。

この娘が女子高生として全う出来るように皆様にもサポートして欲しいの。

よろしくお願いします」

そう言うと会場で拍手が起こった。

概ね寛容なようでほっとした。

それでも1人の女子が僕をにらみ付けていたけど。

そりゃそうだよね。

僕を理解出来ない女子がいても不思議はない。

と思っていたらどうやら僕の隣を睨んでいるようだ。

なぜか天巫あみの顔が青ざめていた。

どうやら知り合いのようだ。

しかも会いたくない仲らしい。

彼女の様子を見て思った。


 それにしてもあの睨み付けている娘はめちゃめちゃかわいい。

きっと笑顔も可愛いのだろうなと僕は思った。

あの凜々しい顔にどうやら僕は一目惚れをしたみたいだった。




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