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迷子

 三学期もそろそろ終わる。

思えば長い一年だった。


 最初は僕に女子高生なんて務まるだろうかと思った。

ついこの間まで男子だったから。

しかも能力者の集まる女子校だったなんて。


 と言ってももちろんこの学校に転校する前から聞かされていたこと。

それでも僕はよく頑張ったと思う。


 突然もらったチートな能力。

それと引き換えに僕は男を失った。

最初の頃は自暴自棄になってた気がする。

と言っても周りはよく適応出来たと関心していたが。


 終業式がもうすぐ控えていた頃、僕は感慨にふけっていた。


 そうして歩いていると校舎内で何やら困っている女の子がいた。

年は小学生低学年ぐらいか。

メガネに三つ編みの女の子だ。

何か焦っているようにも見えた。


 僕は

「どうしたのお嬢ちゃん。

ここは高校だよ。

高校に何か用なの?

この学校にお姉ちゃんでもいるのかな?

よかったらお姉ちゃん(僕)と一緒に探そうか?」

と声をかけた。

その娘は

「何がお姉ちゃんよ。

カマトトぶっちゃって。

私は訳もなくうろついている訳じゃないの。

とにかく私を職員室に案内しなさい」

と悪態をついてきた。


 僕は子供の言うことだからと少し我慢しながらその娘を職員室に連れて行った。

大体僕も自分のことをお姉ちゃんと言いたくなかった。

でもここは女子校。

これでも無理して言っていたのだが。

その娘は

「大体、私はあなたよりも年上よ。

しかもだいぶね。

敬いなさい。

私があなたたちと同い年だった頃はもう少し謙虚だったわよ」


 僕はこの娘の言っていることが理解出来なかった。


 職員室に着くと大変なことになっていた。

職員室の先生たちが

「お待ちしておりました」

「これからもよろしくお願いします」

とその娘に向かって敬い始めたからだ。

僕はそばにいた火脚ひあし先生に聞いてみたら

「何を言っているんだ。

この人は能力者の幹部クラスの1人なんだぜ」

と僕に教えてくれた。

そしてその娘は

「急いでチャイルズの生徒たちを呼んでくれるかしら。

会議室に。

そこにいる遠山さん(僕)も含めて全員ね」

彼女はなぜか僕の名前を知っていたようだ。

そういえば僕を初めから知っていたような。


 会議室に僕たちが集まると彼女は話し始めた。

「まずは自己紹介をするわ。

私の名前は三条橋さんじょうばし 温奈あつな

今度の4月からここに教師として赴任するの」

そう聞いてみんな驚いた。

「こう見えてあなたたちよりだいぶ年上よ。

恐らくこの学校で一番の年上。

もちろん年齢は秘密だけど。

見た目の秘密は私もチャイルズだから。

でも私ぐらいの能力者になると幻術も効かないの。

だからこの見た目なんだけど」

彼女は自分の事を説明した。

「改めてチャイルズの説明をするわね。

チャイルズとは能力者の最高峰。

あまりに能力が高すぎて見た目にも影響するの。

なぜ背が小さくなるかは分からないのだけど」

彼女は一呼吸おいた。

「それでなぜ私がここの教師になるのかというと。

今この学校でチャイルズのフィーバーが起きているの。

こんなこと今まで聞いたことないわ。

この学校に5人も集まるなんて」


 え!?僕が知っている限り4人しかいないのだが。

彼女は

「生徒会長の遠山とおやま 聖雪いぶさん。

その妹の遠山とおやま 葵唯あおいさん(僕)。

まぁ、彼女に対しては純粋に妹と言えるかどうかなんだけど」

いらないことは言わなくていい。

「そして彼女か彼か分からないけどその弟子にあたる灰庭はいにわ 忍葉しのはさんと神居かみい 天巫あみさん。

現在はこの4人しかいないけど4月から1人入学してきます。

私が目をかけてきた弟子でもあるのですが。

とりあえずその5人がチャイルズになります」

5人とはそういうことなのかと僕は納得した。


 彼女は続けて

「まずは私の立ち位置ですが遠山とおやま 葵唯あおいさんたちの担任になります。

大体、日替わりの担任なんて無理があったのです。

私が直々に担任になります。

担当は現代文です。

これでも作家を目指していたんですよ。

昔の話ですが」

彼女は少し顔を赤らめて自慢した。

「さて、4月からの課題ですがまずは灰庭はいにわさんと神居さんは葵唯あおいさん(僕)の弟子をやめてもらいます。

遠山さんは2人いるから名前で呼ばせてもらうわね」

だったら妹でいいような気がするがと僕は思った。

灰庭はいにわさんと神居さんには新たに弟子を作ってもらいます。

その上で自身の能力を上げていって下さい。

弟子は同学年でも新入生でも先輩でも構いません。

とにかく最低5人作って下さい。

葵唯あおいさん(僕)は抜けた2人を穴埋めするために新たに2人弟子を作って下さい。

年齢はいといません。

聖雪いぶさん(姉)は今まで通りで構いません。

たまに私が直に指導するぐらいでしょうか。

あなたたちはいわばチャイルズの卵。

私はあなたたちを指導するためにこの学校に赴任してきました。

もちろん、あなたたちの経歴を全て頭の中に入れてきたわ。

これからビシバシ指導するからよろしくね。

あと、言い忘れたけど葵唯あおいさん(僕)、道案内してくれてありがとう。

私、この学校に来るの初めてだから迷っていたの。

そのお礼も込めてあなたには他のみんなよりも厳しくするからよろしくね」

と彼女は冗談ぽく笑った。


 いや、お礼になっていないのだが。

4月になったら彼女が担任になるのかと僕は思いふけった。

明日は終業式。

僕は4月から2年生になるのだと新たに決意を持った。

それと同時にこれからの女子生活、ちゃんと出来るのかと不安にも思った。








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