修行(雷)
(注意;今回の話は主人公目線ではなく登場人物の1人、芸林 送愛の目線でお送りします。)
今日も修行の時間だ。
私はこの修行の時間が1番楽しい。
私の普段の修行の師匠は金時 美雷先生。
担当教科は理科(物理)
いつもムスッとしている。
私はともかく師匠(主人公)ですら笑った顔は見たことがないようだ。
本人も仕様だと言っている。
私の修行は60wの電球を10個点けるところから始まる。
もちろん自分の体内の電気でだ。
目標はそれら全てを1分以内でやり遂げること。
私はまだ1時間もかかってしまう。
いつになったら達成することやら。
それから本来の修行が始まる。
まずは右手から左手へ空中放電させる訓練。
いわゆる小さい雷を出す訓練。
これがかなり痛い。
1回、1回悲鳴を上げてしまう。
その度に金時先生から「手にバリアを張っていないからだ」とか「バリアが薄すぎるからだ」とか」注意される。
私にとっては拷問に近い修行だ。
だいたいバリアって何?
私自身教わってはいないけど!!
しかし修行が終わった後にはご褒美がある。
私の先生はリクエストしたものは全て叶えてくれる。
スイーツのお店、パスタのお店、そしてたまには先生の手料理。
見た目とは違いかなり優しいのだ。
雰囲気は近寄りがたいけど。
私は先生からおしゃべりだと言われている。
私自身には自覚がないのだがよく注意される。
今日も修行中に
「先生、近くにスイーツのお店が出来たんだって、行きたいな。
あそこのケーキ、評判だって言うし。
女の子には甘いものが必須だよ。
ねぇ、先生おごってよ。」
とか
「私のクラスの○○という娘、男の子とつきあっているらしいよ。
そういえば最近かわいくなってきたしね。
化粧も覚えたんだって。
先生、私も化粧したいな。」
とか
「師匠(主人公)は相変わらず女の子慣れしてないよね。
もっと堂々としていれば良いのに。
元々かわいいんだから。
元男の子だなんて聞きにしなければ良いのよ。
誰も気づかないレベルなんだから。
でも、女の子の裸を見て恥ずかしがる師匠もかわいいのよね。」
とかしゃべっていると先生は
「うるさい!!
もっとまじめに修行に集中しなさい!!
あなたは集中が足りないのよ」
と怒鳴ってくる。
まだ30分もしゃべってないのに。
私にとっては30分以内はおしゃべりに入らない。
先生が邪魔をしなければずっとしゃべっていたいのだ。
しかし、先生はあまりおしゃべりには関心が無いようだ。
まぁ、私がおしゃべりしたいのにも訳が有るのだけど。
最初の電球の修行はつまらないし、その後の拷問、正直しゃべらなきゃやってられないのです。
あぁ、そうそう、最近小さいながら雷を打つことに成功しました。
威力は爆竹程度でしたが。
先生が泣いて喜んでくれました。
私はさぞ嬉しかったのだろうと思っていたら大分違っていた。
先生曰く
「こんな出来の悪い弟子がようやく能力者としての第一歩を歩んでいくんだと思うと涙が出てきた。
だって、普通1ヶ月で出来ることを2ヶ月もかけて習得したんだもん。
感動だってするよ」
だそう。
どうやら私は出来の悪い弟子らしい。
今の私の目標は先生を笑わすこと。
具体的なことは言えないがいろんな事をした。
先生を笑わすために。
しかしその全てが失敗。
今思うと自分でも滑っていたと思う。
とにかく雷の修行よりも先生笑わすことが私の第一目標です。
それがまた、先生の怒りを買うのだけど。
先生はさっきも言ったように基本ムスッとしている。
だから私は先生の笑顔を見たい。
本当は優しい先生だと私は知っている。
しかし先生は学校では怖がられている存在だ。
でも、きっと先生は笑顔の似合う人だ。
少なくとも私はそう信じている。
確かに修行の師匠の発表の時、私が貧乏くじを引いたような感じになっていた。
メンバーからは
「かわいそう」
「なんかあったら気をつけてね」
「頑張ってね」
と言われた。
よっぽど怖い先生だと思われていたようだ。
それにしても「何かあったら気をつけてね」って何に気をつければ良いのか今でも疑問です。
でもこうやって向き合ってみると非常に優しい先生で気遣いも出来たまにジョークも言う、気の抜けたところもあるけどとても良い先生だと思います。
ちなみにバリアの張り方ですが習得するのに1ヶ月もかかりました。
だって最初から知らなかったし。
先生に聞いたら
「え〜、そんなことも知らないの!!」
とあきれられていました。
だって元々素人でしたから。
他の人たちと違い、師匠(主人公)に能力を見いだされ、それからしばらく独学でしたしね。
最初修行の時間が1番楽しいと言いましたがもちろんこれは本当のことです。
何より達成感があります。
出来なかったことが出来るようになる、それだけで楽しいのです。
目下の所は電球10個を1分以内とまでは行かなくとも30分以内に出来るようになることです。
これでも最初の頃よりかは大分速くなったんだから。
そういうことで今日も修行を頑張ります。




