女の子
いつものように昼食の時間。
いつものメンバーと集まって僕は昼食を食べていた。
いつものメンバーとは忍者の灰庭さん、
無口の氷見谷さん、
お嬢様の海城さん、
おしゃべりの芸林さん
巫女の神居さんだ。
いつもの昼食の過ごし方はだいたい彼女ら5人が勝手に会話を始め僕は黙って聞いていることが多い。
彼女たちは最初は僕を気遣ってか女子特有の話題は避けていたように見えるが今では僕にお構いなしに女子特有の話題を話している。
いい加減僕に今の生活に慣れなさいよと言っているみたいに。
話題も女子のファッションやスイーツなど結構幅広い。
僕も今時の女子はこういうことに興味があるんだなと静かに聞いている。
でもたまに僕に会話の矢が飛んでくることがある。
そんなときは僕はいつも会話に窮するのだ。
女子としての会話の正解が分からないのだ。
どう答えていいのか。
性転換してから僕はいろいろと苦労をしているのだ。
そんな今日この頃、まさに今予想外の質問に困っていたのだ。
いつものように昼食のひととき、そんな女子たちの会話から芸林さんが突然
「いつも思うんだけど、師匠(僕)の声ってとてもかわいいよね。とても元男の子だなんて思えない。なんていうか、アニ声ていうか美少女声ていうか女の私でもキュンときちゃうんだよね。」
性転換してから1年以上経つがこんなこと言われたのは初めてだ。
僕は慌てて他のメンバーに聞き返してみると一様に同じ反応が返ってきた。
その反応を見て僕は思わず
「いやいや、そんなはずはない。僕は確かに性転換したけど声まで変わった自覚なんてない。確かに最初はどうにかして高い声を出そうとしたけど周りから不自然だと言われ今は地声で喋っているはず。どちらかというと僕の声はアニ声と言っても少年声に近いはず、美少女声の訳がない。」
と反論をした。
そうすると海城さんは
「なんでそんなことおっしゃるの。あなたは中身はともかく見た目、出で立ち、仕草、声どこからどう見たって美少女なんです。もっと自分に自信をお持ちなさい。」
確かに性転換してから女性として生きられるようにまじめにリハビリしてきたがなんか複雑な気分だ。
続けて海城さんは
「そんなに自分の声に自信が無いようでしたら自分の声をお聞きになったら。」
と言い、僕にスマホを差し出した。
どうやらこれで僕の声を録音をし聞けと言うことらしい。
僕は適当に言葉を喋り自分の声を聞いてみた。
そのときの僕の声の衝撃はたまったものではなかった。
確かに女の子のしかも声の高い美少女アニ声だったのだ。
僕がその驚きに浸っているとまた芸林さんが(僕にとって)またとんでもないことを言い出した。
「師匠(僕)って未だに男の子の時の癖が抜けないよね。未だに男の子に戻りたいと言っているしさ。男の子に戻ることは絶対に無理なのにね。」
僕はそこまで言わなくても良いと思って聞いていた。
芸林さんは続けて
「でも男の子の真似は出来るんだよね、男装とか。でも師匠(僕)の男装とか見たことないし、ましてや師匠(僕)は髪の毛は綺麗なストレートのロング、切ろうとは思わないの。」
僕はその疑問に丁寧に答えた。
「まず男装の件なんだけど、僕は性転換したことでどうやら男性恐怖症になってしまったらしい。男っぽい格好をしようものなら全身にじんましんが出て下手をすると失神してしまう。だからしょうが無く女の子の服を着ている。まぁ、呪いみたいなものさ。あと、髪の毛の件なんだけどじゃあ逆に聞くけどみんな髪の毛長いけど何で切らないの?」
僕がそう聞くとみんなが意外そうな顔をした。
僕はかまわず続けて
「性転換して分かったことなんだけど、女の子って髪の毛にも神経があるんだね。だから僕は女の子は髪の毛を切らないんだと思ったよ。でもおかげでこのようにかの毛を動かすように出来るようになったんだ。」
僕は髪の毛で水筒を持ち上げて見せた。
「でも、僕以外に髪の毛を自由に扱う女の人を見たことがないんだよな。もしかして人前では髪の毛を動かしたらいけないのかな。」
そう言い終わるといつものメンバーが一斉に
「それは普通の女の子じゃない!!」
と一斉にツッコまれた。
どうやら髪の毛の件に関しては普通ではないらしい。
多分、僕が男の子に戻らないための呪いの1つみたいなものだろう。
そんなこんなで自分自身の新たな一面が見えた今日この頃でした。




