転校前
ゴールデンウィークの終わった5月、僕はお嬢様学校で知られる全国でも名だたる名門女子校の前に立っていった。
僕は何でこんなことになってしまったのか自問自答をしていた。
僕は今日、この名門女子校に転校するのだ。
女子高生として転校するのだ。
なぜこんなことになってしまったのかを説明するのに4月の話をしなければならない。
4月、僕は普通の共学の高校に男子高校生として入学した。
その学校はごく普通の高校で、僕もごく普通の高校生として学生生活を送っていた。
半月が過ぎた頃、ある女子のグループが気になるようになった。
その女子のグループは気がつくと僕を監視しているような気がした。
そして、僕が気がつくそぶりをするとごまかすように視線を動かしたり、こそこそ話し合ったりしていた。
高校に入学して出来たばかりの男友達にそのことを相談してみても自意識過剰なんじゃないかと一蹴されてしまう。
まあ、そう言われてしまうのにも理由があるのだが。
その女子のグループというのはクラスの中でも飛び抜けて美人のグループ。
僕みたいな何の取り柄もない男子高校生に興味がある訳はないと当時は思っていた。
それから一週間が過ぎた頃、いつものように授業が終わり帰路に立った。
家の玄関を開けたとき、目の前にセーラー服姿の女子高生が5人立っていた。
5人は一斉に
「お帰りなさいませ」
と言った。
僕は思わず家を間違えたのかと思い表札を見た。
間違いない、自分の家だ。
だいたい、自分の鍵でドアを開けたのだから間違いようのないことだ。
じゃあ、自分の家にいる女子高生たちは何者なんだと今度は勢いよくドアを開けた。
すると、女子高生たちは
「だから、こういうことは止めろと言ったのよ。」
「だって、サプライズ感があって面白いって言ったじゃない。」
と言い合っていた。
よく見ると、その女子高生たちは同じクラスの僕を監視していたグループじゃないか。
僕は意を決して
「君たちは僕の家で何をやっているの?だいたい僕の家にどうやって入ったの?」
と聞いてみた。
そうすると一人の女の子が僕の目の前に出てきてこう言い放った。
「あなたを拉致しに来ました。親御さんの許可は取ってあります。」
「!?」
僕は理解できなかった。
そもそも親の許可は取ってありますってどういうことなんだろうか。
意味が分からない。
続けてその女の子は
「これは国家プロジェクトなんです。あなたに拒否する権利はありません。」
と言い放った。
ずいぶんと無茶な話だ。
僕がそう戸惑っていると別の女の子が
「すぐにあなたを元の姿に戻しますね。時間がありませんから、すぐにあなたにかけられている魔法を解除します。あなたの命に関わることですから。」
そう言うと、よく分からない魔方陣のようなものが僕の足下に浮かび上がり、その彼女はよく分からない呪文のようなものを唱えていた。
ほかの4人女子高生はどうやら僕が動かないように拘束魔法みたいなものを発動しているみたいでおかげで僕はピクリとも動かない。
呪文が唱え終わった頃、拘束魔法も解けた。
そして、一瞬で僕は女の子になっていた。
そして一人の女子高生が語り始めた。
「あなたは元々、女の子としてこの世に生まれました。そして、ある能力を授かりました。この世界では女性にしかその能力を授かりません。しかし、あなたの能力はあまりにも強大だったのです。そして能力に比べてあなたの身を守るための力はとても弱かったのです。そこで、魔法を使ってあなたを男の子として育てることにしたのです。あなたが男の子として違和感を持たなかったのはその魔法のおかげです。しかし、その魔法も限界を迎えつつあったのです。おそらく、もうすぐあなたはその魔法の呪いに殺される寸前だったのです。よくここまで持ちこたえたものだと感心していたのですが、もう限界だと私たちは判断しました。」
いや、ここまで話を聞いても何一つ理解できない。
まあ、事実僕の体は女の子になっているのだからって理解するのは無理すぎる。
そして、女子高生の一人は
「女の子として生活に慣れるためにこれからリハビリ施設に入院してもらいます。」
と言った。
ここまでが僕の回想だ。
そして今、僕は名門女子校に転校することになったのだ。