第6話
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「ねぇ、近くの山に洞窟があるの知ってる?」
紫苑は千冬や白雪とクーラーの効いた部屋でのんびり過ごしていた。
連日、視察やらでドタバタしていたが、やっと落ち着いた。
「洞窟ですか? 俺は聞いたことないですね」
ちらりと白雪に目をやると、彼女も知らないらしい。
「私がね、小さいときに探検してて見つけたの。今はどこにあるか忘れちゃったけど」
「……まさか、見つける気ですか?」
「えー、だって気になるじゃん! もしかしたら、お宝とかあったかも!」
「ないない」
「……嫌なの?」
少し涙目なところや上目遣いで迫ってくるところはやはりあざとい。
そして、紫苑もそれに弱いのだ。
「……嫌ではないですけど……白雪は?」
「私はお兄様が行くとおっしゃるなら」
「じゃあ決定ね!」
3人はそれぞれ部下たちに伝え、山へ向かった。
◆◇◆◇◆
学園の敷地がこんなに広いとは紫苑も思っていなかった。
草木が青々と茂る山道を、3人は少し胸を弾ませながら歩いていた。
「森林浴っていいわねー」
「俺はもっと蒸し暑いかと思っていたんですけど、そうでもないですね」
「そうですか? では腕を失礼します!」
「し、白雪⁈」
白雪は紫苑の腕に自分の腕を絡め、身体を密着させてきた。
「……このくらいいいですよね?」
「いや……思いっきり当たってるんだけど……」
同年代の女の子よりも発育がよく、柔らかい感触が紫苑の腕を包む。
「……お兄様のエッチ……でも、私は気にしませんよ?」
「俺が気にする……」
「お兄様が言ってくださったのですよ? ”私のことが好きだ”と。両想いなら何も問題ありませんよね?」
「確かに言ったけど……なんか白雪吹っ切れたね」
「はい! 義理の妹とか、そんなことはどうでもよくなってきました。私たちの愛の前では、肩書きなど些事に過ぎません」
もともと積極的だった白雪が、さらに積極的になった。それに加え、妖艶さが増している。
「ちょっと! 2人でなにいちゃいちゃしてんの!」
千冬が頬を膨らませ、白雪とは逆の腕をとる。
「白雪がいいなら私もいいよね? 私だって、紫苑のこと愛してるんだから!」
「ね、姉さんまで……少し暑い」
腕を包んだ豊満な双丘は、動く度にその形を変えるのが目に見えてわかる。
「お姉様、私とお兄様の絆は誰であろうと邪魔はできません。私達は心から繋がりあったのです」
なぜそんなに挑発するようなことを……と紫苑は思った。
「ぐぬぬ……余裕があるのが悔しい……でも、紫苑はすでに私の虜よね?」
ぐいぐいと身体を密着させてくる。
「ち、ちょっと、姉さん!」
「なぁに? 紫苑たら、顔が赤くなっちゃって可愛い!」
「……これは暑さのせいです」
「むぅ〜、お兄様! デレデレするなら私の身体でしてください!」
白雪も反対側からぐいぐいと迫る。
「ふふっ、私の勝ちね。大丈夫よ白雪。あなたはこれから成長するわ」
「クスッ、お兄様は若くてみずみずしい身体の方が好みなんです。私の勝ちです」
「なんですって〜! 私だってまだまだ若いわ!」
「私だって普通の女の子より、胸大きいです!」
2人が紫苑を挟んで言い争うことで、女の子特有の甘い香りや柔らかい感触でクラクラしてきそうだ。
「……ちょっと、2人とも落ち着いて。さっきから凄い恥ずかしいこと叫んでるよ?」
「はっ! 私ったら、ムキになってはしたないことを……」
「私も、見苦しいところを見せてしまいました……」
「あと、少し暑いから離してくれる?」
「「それはダメ!!!」」
◆◇◆◇◆
両サイドからのむにゅむにゅとした感触を意識の外へと追い出そうと必死になりながら、しばらく歩いていると、別れ道を発見した。
3方向に別れている。
「……どれ行きます?」
「……ここはやっぱり、3人でそれぞれ別の道を行こう」
「……お兄様と離れるのかぁ」
集合場所や時間を確認して、それぞれの道を進んでいった。
〜続く〜




