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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
学園騒乱編
63/66

第4話

遅くなりましたm(__)m


 白雪の様子がおかしい。

 夕食時も紫苑と目を合わせようとしなかった。先刻のことをまだ怒っているのかとおもったが、そうではないようだ。

 明らかに、紫苑を避けていた。


「片桐、白雪の様子がおかしくなかったか?」

「白雪お嬢様ですか? 確かに元気がなかったような気もしますが……紫苑様、何かされたのですか?」

「いや、俺は何もしてない……と思う」

「白雪お嬢様に直接お聞きになったらどうですか?」

「……そうだな」


◆◇◆◇◆


「白雪がいない?」

「はい。夕食後、一人にしてほしいとおっしゃり、その後は見ておりません」


 紫苑は白雪の部屋を訪れたのだが、彼女は不在だった。白雪の筆頭部下の桐生も居場所を知らないようだ。


「そうか……白雪が戻ったら教えてくれ」

「はい」


 このとき、紫苑は少しだけ嫌な予感がした。



「……はぁ」


 暗くなりかけている空の下、白雪は学園の敷地内にある庭園を散歩していた。

 夏なので夜でも暑いが、時折吹く風が心地よい。


「異性から見て、私は魅力がないのかしら……」


 片桐のような抱擁力のある優しさや千冬のような天才的能力もない。

 私はお兄様の役に立つ存在なのか。そう考えたことは何度もあった。

 ただ彼に甘えているだけなのではないかと。

 そんな自分に紫苑が振り向いてくれるはずがない。彼にとって、あくまで自分は義妹でしかないのだ。

 私はこんなにも彼を愛しているのに。


「うぅ……」


 苦しい。

 自分ではない、他の誰かが紫苑と結ばれることなんて考えたくない。

 自分が紫苑と距離を置こうとする度、紫苑に対する想いがさらに強まる。


「……部屋に戻って寝よう」


 このままでは、自分が壊れてしまいそうだった。


「その前に、お兄様に会おう」


 何故か、紫苑に会いたくなったのだ。


◆◇◆◇◆


 コンコンとノックする。

 返事はない。

 紫苑はいないのだろうかと思って、ドアノブを回すと簡単に開いた。

 紫苑が部屋に鍵を掛けずに出ることはまずない。

 白雪は不思議に思いながら、部屋を覗いてみた。


 部屋は暗い。だが、影が見えた。

 この角度では部屋の奥、つまりベッドの方は見えない。おそらく、唯一の枕元の灯りがベッドの上を影として映し出しているのだ。

 その影を見ると、ベッドの上には二人いる。

 一人がベッドに寝そべり、もう一人がその人に覆いかぶさっている。


「片桐、少し緊張してる?」

「そんなことはーーんっ!」


 中にいたのは、紫苑と片桐だ。白雪のノックには気づかなかったようだ。

 白雪はホッとした反面、二人は何をしているのだろうと思った。


「ここはどう?」

「はあっ! そ、そこはっ……やめ、あっっ!!」

「大丈夫、すぐに良くなるから。片桐、だいぶ溜まってるみたい」

「はあっ、んっ……はぁああぁ……っ」


 片桐の気持ちよさそうな、嬌声が聞こえる。


 バタンッとドアを閉め、白雪は逃げるように自分の部屋に戻った。

 部屋に入った瞬間、膝から崩れ落ちる。

 ショックすぎて、言葉が出ない。涙だけが、ポロポロとこぼれ落ちる。


 やはり、紫苑と片桐はそういう関係だったのだ。

 前々からそういった噂はあった。主従関係にしては、仲が良すぎる。内縁関係にあるのではないのかと。

 白雪は、そのような噂を信じていなかったが、もしかしたらと思ったこともある。


 だが、先ほど噂が現実だと確信させられた。

 すでに、紫苑の心は片桐のもとにあったのだ。

 部屋には白雪の啜り泣く声だけが、一晩中響いていた。


〜続く〜



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