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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
学園騒乱編
60/66

第1話

◆◇◆◇◆


 学園ーーそこは幼くして親に見捨てられた子どもや身寄りがない子どもを引き取る場所。

 一般の人々は、学園の存在を知らないだろう。

 京都の市街地の少し外れた、山奥にある学園は鷹司家が管理している。


 紫苑は昨日京都に到着して、観光を楽しんだ。

 今日、鷹司姉妹が京都に到着して、一緒に学園へ行く予定だ。

 旅館のロビーで彼女たちの到着を楽しみに待っていると、黒塗りの車が何台か入ってきた。どうやら、到着したらしい。

 二人は旅館の扉をくぐり、紫苑の姿を確認すると一目散に走ってくる。


「お兄様! お会いしたかったですぅ〜」


 白雪が紫苑に抱き着き、顔をスリスリと彼の胸に擦り付ける。満面の笑みだ。


「白雪ばかりずるい! 私も!」


 千冬は紫苑を背後から抱き締める。


 当の紫苑はというと、いきなり前と後ろから抱き着かれ、柔らかい感触と女性の匂いにクラクラとしていた。


「お兄様ぁ〜(スリスリ」

「紫苑……はぁ(ギュゥゥゥ」


 二人はいつまでも止めようとしない。


「あ、あの二人とも、会えて嬉しいけど学園に行かないと……」

「私はお兄様に会えただけでもう十分です……」

「私も、今日はずっとこのままでいい……」

「ダメだよ。早く学園に行こう」


 ネオムジ磁石のような二人をなんとか引き離し、学園に向かった。


◆◇◆◇◆


 道中、二人はぴったりと紫苑にくっ付いていた。特に、白雪は紫苑の膝に乗り、体を彼に預けていた。

 学園祭や拉致事件のこともあり、白雪はかなり不安だったらしい。

 そんな彼女が可愛くないはずがなく、紫苑も抱き締めて頭を撫でてあげた。


 学園に着いた。

 まず、紫苑たちは荷物を宿泊施設に置き、それぞれの部屋で少し休むことにした。

 部屋は一人にしては大きすぎるくらいだ。

今回は、片桐とも別の部屋で紫苑はゆっくりと体を休めていた。

 すると、コンコンとドアを叩く音が聞こえてきた。


「お兄様? 入ってもよろしいですか?」


 白雪の声だ。


「ああ、いいよ」


 特に断る理由もないので、部屋へ招き入れる。

 白雪は、嬉しそうに部屋に入ってきて、紫苑に抱き着く。

 そのまま、うっとりとした表情で体を紫苑に預けてくる。


「白雪? 何か用があったんじゃないのか?」

「いいえ、お兄様と二人きりの時間が欲しかったのです」

「そうか……」

「お兄様、学園祭のことや拉致事件のことを聞かせてくださいませんか?」

「いいよ」

「私だけ、お兄様にお会いすることができませんでしたので」

「仕方ないよ」

「……お兄様、私はお兄様にとって義妹ですか?」

「そうだよ? それがどうかしたの?」

「……いえ……お兄様、やっとお会い出来て嬉しいです」


 紫苑は白雪に学園祭や拉致事件のことを詳しく教えてあげた。

 一瞬、白雪の表情が悲しみに染まったことに、紫苑は気づいていた。


◆◇◆◇◆


「子どもたちは元気にしているかしら」

「さっき、校庭で元気よく遊んでいる子どもを見かけましたよ」


 紫苑たち3人は、学校を訪れていた。この学校には小学生から高校生までの孤児たちがいる。校舎は共同だ。


 紫苑たちが正面玄関をくぐると、小学生ほどの子どもたちが出迎えてくれた。


「千冬お姉様、紫苑お兄様、白雪お姉様、お久しぶりです!」


 この学園では、年上のことを〜お兄様とか、〜お姉様と呼ぶことになっている。

 ここに通う子どもたちは、みんな家族がいないので、学園全体で一つの家族にしてしまおうという千冬の考えによるものだった。

 紫苑たちは、無邪気な子どもたちに笑顔で対応していく。

 学園での躾はよくできている。学園のスタッフは、主に鷹司家の部下たちだ。 

 鷹司姉妹はもちろんだが、紫苑も何度か学園に来たことがあるので、名前と顔は覚えてもらえていた。


「お姉様方、わざわざお越し頂きありがとうございます。我々スタッフ一同、精一杯のおもてなしをさせて頂きます」


 恭しくそう言ってくれたのは、学園の現場責任者であり、学校の校長役であり、鷹司家の部下である人物だった。


「学園はいい雰囲気ね。子どもたちも元気そうだし、躾もしっかりしてるみたいだし」

「ありがとうございます」


 この後、千冬は校長と話があるらしく、部下を何人か連れてどこかへ行ってしまった。


「白雪、少し学校内を見てみるか?」

「はい!」


 紫苑と白雪は校内を見学することにした。生徒たちは当然夏休みだが、課外をやっていたりするのだ。現に、小学生の子どもたちがいたのも、何か学校でやっていたのだろう。


 二人は、校内見学を始めた。


〜続く〜


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