第10話
エピローグです!
◆◇◆◇◆
伊達凛花の死亡が報告されたとき、彼女の両親は悲しんだだろうか。それとも、舌打ち程度だっただろうか。紫苑たちにはわからない。
車内で爆発物が爆発し、乗っていた人は木っ端微塵だった。事件は他殺だとされたが、真相は闇の中だ。目撃者もいなければ、生存者もいなかったのだから。
この事件を受けて、伊達グループの力は目に見えて弱体化した。かと言って、九条グループを責められない。車を運転していたのは、伊達グループなのだから。
「……本当にこれでよかったのかな」
「ええ、凛花さんは伊達グループに戻らなくて済んだのですから」
「……そうだね。でも、もう伊達凛花はこの世に存在しない」
彼女は死んでしまったのだ。永遠に。
「ところで、彼女は上手くやっているでしょうか?」
「大丈夫さ。彼女は気さくで優しいからな」
◆◇◆◇◆
数日前。
「叔母上、ありがとうございました」
「いいえ、気にしないでと言いたいところだけど、代わりの死体と新しい戸籍を準備するのは結構大変だったわ」
「あの案は叔母上が考えてくださったのですか?」
「ええ。でも、代わりの死体がなかったの。直前に調達できたのよ」
「まさか……」
「いやね。殺してなんかないわ。病死よ」
「そうですか」
「彼女はどうするの? 身寄りがないでしょう?」
「学園に編入する予定です」
「そう。あとは全てあなたに任せるわ」
「はい」
◎
京都の山奥にある学園。
ここは各地から孤児が集まる場所。衣食住はもちろん、教育や武術も習える。九条グループが慈善活動の一環として、建てたものだ。
先日、ある一人の少女が編入した。
彼女は最初の挨拶でこう言った。
「初めまして、この度編入することになりました『伊達凛花』と申します。よろしくお願いします」
彼女は儚げな印象を与える少女だが、とても生き生きとしていたらしい。
彼女が学園に編入して数日後。
彼女宛に荷物が届いた。
『そっちの生活はどうですか?
前にアクセサリーを選んでほしいと言われたことを思い出しました。あなたに似合うと思った物を贈ります。受け取って貰えると嬉しいです。
夏休みにそちらにお邪魔すると思います。そのときまた会いましょう。
あなたはこれから自由に生きてください』
要約するとこんな感じの手紙とともに、美しいエメラルドが施されたネックレスが送られてきた。
「ありがとう……本当にありがとう」
涙を流しながら呟く。もちろん嬉し涙だ。
「紫苑、また夏休みに……」
彼女は届いたばかりのネックレスをつけ、エメラルドの部分を優しく、大事に両手で抱え込んだ。
彼女は澄んだ青空を、籠から解き放たれた小鳥のように、希望を抱きながら見つめていた。
来校者編 完
次話から新章です!




