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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
来校者編
58/66

第10話

エピローグです!


◆◇◆◇◆


 伊達凛花の死亡が報告されたとき、彼女の両親は悲しんだだろうか。それとも、舌打ち程度だっただろうか。紫苑たちにはわからない。

 車内で爆発物が爆発し、乗っていた人は木っ端微塵だった。事件は他殺だとされたが、真相は闇の中だ。目撃者もいなければ、生存者もいなかったのだから。

 この事件を受けて、伊達グループの力は目に見えて弱体化した。かと言って、九条グループを責められない。車を運転していたのは、伊達グループなのだから。


「……本当にこれでよかったのかな」

「ええ、凛花さんは伊達グループに戻らなくて済んだのですから」

「……そうだね。でも、もう伊達凛花はこの世に存在しない」


 彼女は死んでしまったのだ。永遠に。


「ところで、彼女は上手くやっているでしょうか?」

「大丈夫さ。彼女は気さくで優しいからな」


◆◇◆◇◆


 数日前。


「叔母上、ありがとうございました」

「いいえ、気にしないでと言いたいところだけど、代わりの死体と新しい戸籍を準備するのは結構大変だったわ」

「あの案は叔母上が考えてくださったのですか?」

「ええ。でも、代わりの死体がなかったの。直前に調達できたのよ」

「まさか……」

「いやね。殺してなんかないわ。病死よ」

「そうですか」

「彼女はどうするの? 身寄りがないでしょう?」

「学園に編入する予定です」

「そう。あとは全てあなたに任せるわ」

「はい」


 ◎


 京都の山奥にある学園。

 ここは各地から孤児が集まる場所。衣食住はもちろん、教育や武術も習える。九条グループが慈善活動の一環として、建てたものだ。

 先日、ある一人の少女が編入した。

 彼女は最初の挨拶でこう言った。


「初めまして、この度編入することになりました『伊達凛花』と申します。よろしくお願いします」


 彼女は儚げな印象を与える少女だが、とても生き生きとしていたらしい。



 彼女が学園に編入して数日後。

 彼女宛に荷物が届いた。


『そっちの生活はどうですか? 

 前にアクセサリーを選んでほしいと言われたことを思い出しました。あなたに似合うと思った物を贈ります。受け取って貰えると嬉しいです。

 夏休みにそちらにお邪魔すると思います。そのときまた会いましょう。

 あなたはこれから自由に生きてください』


 要約するとこんな感じの手紙とともに、美しいエメラルドが施されたネックレスが送られてきた。

 

「ありがとう……本当にありがとう」


 涙を流しながら呟く。もちろん嬉し涙だ。


「紫苑、また夏休みに……」


 彼女は届いたばかりのネックレスをつけ、エメラルドの部分を優しく、大事に両手で抱え込んだ。


 彼女は澄んだ青空を、籠から解き放たれた小鳥のように、希望を抱きながら見つめていた。


 

 来校者編 完


次話から新章です!

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