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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
来校者編
55/66

第7話


◆◇◆◇◆


〜鷹司家〜


「何ですって!? 紫苑が拉致された!? 無事なの?」

「はい。敵も全員捕らえたとのことです」


 今回の出来事は、鷹司家にも九条本家にも伝えられた。


「そう、よかったわ。

 さて、伊達グループをどうしてやろうかしら。紫苑に手を出すなんて絶対に許せない」

「それなのですが、首謀者である伊達凛花の処遇は紫苑様がお決めになると」

「紫苑が? ……あの子は優しいから、罰は与えないでしょうね」

「伊達グループから彼女を引き渡せと要求されるでしょう」

「そんなこと許せないわ。こっちが被害にあったのだから。伊達グループとの交渉は叔母様にお任せしましょう」

「かしこまりました」


 千冬の筆頭部下である聖沢からの報告を終え、彼女は小さくため息をつく。


「紫苑が無事でよかった……」



「何ですって! お兄様が拉致!? ご無事なの!?」

「はい。ご無事です」


 白雪の方も部下である桐生から報告を受けていた。


「お兄様に手を出した不届き者は誰!?」

「それが、伊達家の御令嬢だとか」

「……許せない」


 白雪は普段は可愛らしい顔を、怒りに染めた。


「今回のことは、九条様が介入するでしょう」

「それならいいわ。でも、お兄様が心配だわ。会いたい」

「お嬢様、夏休みまでお待ちください」

「……わかった」


 そうは言ったものの、白雪の不安は拭いきれない。


「お兄様、早くお会いしたいです……」


◆◇◆◇◆


 拉致事件があったものの、それを公にすることなどできない。

 次の日から、普通に紫苑と凛花は学校に登校した。

 何もなかったように。

 そう振る舞わなければならない。

 紫苑はいつも通りだったが、凛花は少し精彩を欠いていた。


 数日後、予想通り伊達グループから凛花を引き渡せとの要求が届いた。

 もちろん、九条グループはその要求を退けた。

 しかし、それで引き下がる伊達グループではない。しつこく食い下がってくる。

 

「凛花、伊達グループの人間がお前を連れて行く可能性がある。だから、凛花に護衛をつける」


 これは、紫苑が九条家から命じられたことだった。


「……私に?」

「……拉致した人間を守るなんて奇妙だけど、今凛花が伊達家に戻られたら困るからな」


 九条グループにとって、大きな交渉カードを失ってしまうからだ。


「それに、凛花も伊達に戻りたくないんでしょう?」

「……うん。でも、いつまでもここにいられないでしょう?」

「……戻るのが怖いか?」

「怖いわ。失敗した罰も怖いけれど、またあの檻の中にいるような生活が怖い」


◆◇◆◇◆

 

 ここ数日、伊達グループの動きがさらに活発になってきた。というのも、とうとう山梨に人を送り込んできたのだ。

 凛花に付いている護衛によれば、尾行のような動きがあったらしい。

 いつ凛花が連れて行かれてもおかしくない。そんな状況になっていた。


 このままでは、本当に武力衝突になりかねない。もし、そうなったらお互いの力が低下する。九条グループはもちろん、伊達グループもそんなことは望んでいない。

 そこで、伊達グループと九条グループのトップ同士で直接会談することになった。


 紫苑と凛花はその会談に同席するよう命じられた。当事者もいた方がいいということになったらしい。


「紫苑、私怖い。自分の親なのに、会いたくない」

「大丈夫だ。護衛もたくさんいるし、話をするだけだから」

「……これで、私はまた伊達に戻るのかな。私の親は残酷よ。手段を選ばない人だから」

「うちのトップも怖い人だ。そう簡単に折れないさ」


 紫苑は凛花を励ましたが、実際どうなるかはわからない。非があるのは伊達グループなのは確実だが、彼らがそれを認めるかはまた別の問題だ。凛花一人に責任を押し付けることすらあり得ることだった。


 

 会談の日時が決まった。都内のホテルの一室で行うらしい。

 紫苑や凛花、九条真美はそれぞれ会談の準備をした。


 そして、九条と伊達のトップ同士が会談する日を迎えた。


〜続く〜


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