第3話
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますm(_ _)m
◆◇◆◇◆
「はぁ〜疲れた」
学校が終わり、やっと心のオアシスである自宅に着いた。凛花の不可解な行動や愛梨の怒りのおかげでクタクタだ。
「ただいま〜」
「お帰りなさい紫苑様。……あら? お疲れですか?」
片桐は、今日も律儀にリビングから玄関まで顔を出し、出迎えてくれる。
「さすが……よくわかったね」
「ふふっ、紫苑様のことなら何でもお見通しですよ?」
「……片桐には敵わないな」
片桐との会話や彼女の笑顔は、紫苑にとって癒しだった。
しかしーー
「……あら? お弁当……」
片桐が紫苑のために今朝作ったお弁当が残っているのを見て、驚き悲しそうな表情になる。
「……紫苑様、今日のお弁当はお口に合いませんでしたか?」
片桐の目は少し潤んでいた。
早起きして一生懸命作ったお弁当が残っているというのは悲しいのだろう。
紫苑も仕方がなかったとはいえ、片桐を悲しませてしまった。
そして、昼にあった出来事を話した。
「……そうでしたか。凛花さんのお弁当を……」
「本当にごめん。まさかあんなことになるとは思いもよらなかった」
片桐の声にはいつもの精彩がない。
「紫苑様、凛花さんのお弁当は美味しかったですか?」
「美味しかったけど、片桐には及ばないよ」
これは本心だ。片桐の料理は店で出せるレベル。
「……紫苑様、明日からはお弁当は作らない方がよろしいですか?」
「え!?」
「もともと学食がありますし、紫苑様にお弁当を作ってきてくれる女性もいらっしゃるようですし……」
「いや、片桐のお弁当の方がいいよ」
「……本当に?」
「本当だ」
「そう言って頂けて嬉しいです。
ですが、紫苑様がますます私から離れていってしまう気がします」
「そんなことないよ」
「……紫苑様がそうおっしゃるなら」
片桐はいつでも紫苑を信じているのだ。
◆◇◆◇◆
凛花が編入してしばらく経ち、紫苑も彼女に対しフレンドリーに接している。
一方凛花は、女友達はたくさんできたようだが、紫苑以外の男子とはあまり接していないようだった。
紫苑から凛花に話しかけるのは少ないが、彼女からよく声をかけてくれる。
そのことをよく思わない男子や一部の女子がいたが。
「ねぇ、紫苑てさ一人暮らしなんでしょう?
大変じゃない?」
「まぁそうだね」
実際は違うので、曖昧な応えになってしまった。
「今度遊びに行ってもいい?」
「え!?」
突然、紫苑の隣の席から凄まじい殺気が送られてくる。
愛梨にはダメだと言ったのに、凛花に許可するわけにはいかない。
「うちはダメだ」
「えーなんで? 久しぶりに行ってみたかったのに」
「うちにはナゾの生物がいるから」
ナゾの生物じゃなくて、いかがわしいものでしょうと愛梨が目で訴えてくる。
「じゃあ、今日の放課後少し付き合ってくれない?」
「……どこに行くんだ?」
今までこんなお誘いはなかったので、もしかしたら、拉致られるのではないかと身構えてしまう。
「アクセサリー見に」
「……女物のアクセサリーのことなんて知らないんだが」
「選んでくれればいいの。男の人の意見も参考にしたいから」
「……わかった」
この時、紫苑は凛花に対する警戒心を少し緩めていた。彼女を『普通』の女子高校生だと認識してしまったのだ。
◆◇◆◇◆
放課後、紫苑は片桐に帰りが遅くなると伝え、凛花と買い物に出かけた。
「同年代の男の人とこうやって歩いたの初めて」
「そうなのか?」
「……男女共学の学校は初めてだから」
「……そうか」
一瞬、凛花の表情が曇った気がした。
「でも、女の子のお友達と遊ぶのも楽しいけど、男の子でも楽しいね。紫苑といると楽しい」
「そりゃよかった」
凛花は純粋な笑顔で微笑む。本当にこの時間を楽しんでいるようだった。
「あ! そこのお店で少しお茶してかない?」
そう言って愛梨が示したのは、大手コーヒーチェーン店だった。
紫苑は特に断る理由もなかったので、二人で店に入っていった。
〜続く〜




