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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
来校者編
49/66

第1話



 伊達凛花は編入早々、クラスの人気者になった。

 編入生が珍しいのか、彼女の周りには人が絶えなかった。そのほとんどは女子で男子は遠目に彼女のことを見ていた。


「凛花ちゃん、お嬢様みたいだけど気さくで優しい子だったよ」

「そうか。確かにお嬢様みたいだな」

「紫苑、見惚れてる」

「そ、そんなことないし」

「どうだかね。紫苑てああいうのが好み? 早苗さんも千冬さんもお嬢様みたいだったし」

「……おいおい、姉さんたちのことは関係ないだろ」


 伊達凛花と話をしてきた愛梨が、彼女について教えてくれた。

 紫苑は特に彼女に興味を持たなかった。

 しかし、


「……あの、一条君?」

「はい?」


 放課後突然、伊達凛花に声をかけられた紫苑は素っ頓狂な声になってしまった。


「あ、ごめんなさい。いきなり声をかけちゃって……」

「い、いや大丈夫だよ。何?」


 遠慮がちに喋る彼女は、触れればすぐに消えてしまいそうだ。


「あの……一条君て私のこと覚えてるかな」

「え?」

「昔、私たち会ったことあるんだけど」

「……マジで?」

「うん」

「……ごめん。思い出せない。それ本当に俺か?」

「……そっか、しょうがないねずっと昔だったし」

「どこで会ったんだ?」

「あなたのお家」


 そんなことを言われ、その後紫苑は部活にも集中できず、自宅でもずっと彼女のことを考えていた。


 そして、もしかしたらと思い片桐に彼女のことを聞いてみた。

 伊達凛花を知っているか、と


◆◇◆◇◆


 現在。


「紫苑様! 伊達家は伊達グループのトップです。伊達グループは九条グループのライバルです。絶対に何か企んでいます!」

「……まぁそうだろうね」


 伊達グループとは、九条グループのライバル的存在で、市場社会や政界において互いに睨み合っている。

 ここ最近の目立った衝突はないが、少なくとも味方ではない。


「紫苑様に近づいてきたとなれば、紫苑様に何かしてくるかもしれません」

「だが、伊達家の御令嬢がわざわざこんなところまで来て、俺に接触する意図がわからない」

「確かにそうですが、やはり危険です。せめて登下校時にはボディガードをつけるべきです!」

「いや、もし俺に何かしようとするなら、わざわざあっちから名乗る必要はないだろ」

「では、紫苑様に近づいて情報を盗む算段でしょうか?」

「その可能性はある」


 わざわざ伊達凛花から接触してきた理由がわからない。しかもこの時期に。


「伊達グループと九条グループは、今どんな関係なんだ?」

「少し昔には、陰で武力衝突も多少はあったようですが、今は牽制し合う程度でしょう」

「それじゃあ、今回のことは俺が武闘派代表になったからか?」

「そんな危険なことを伊達家の御令嬢にやらせるでしょうか?」

「だよなぁ〜」


 結局、伊達グループの意図は見えてこず様子を見ることにした。


「紫苑様、伊達凛花さんはどんな方でしたか?」

「うーん、俺もあまり話してないからよくわからないけど、皆が言うには気さくで優しいらしい。見た目も綺麗だし」

「紫苑様! まさか見惚れてなどいませんよね!?」

「いや、ないない」

「本当ですか?」

「本当だよ」

「はぁ、ますます紫苑様が心配になってきました」

「片桐は心配性だなぁ」

「紫苑様がデレデレしてるのがいけないんです!」

「しとらんわい!」


 愛梨だけでなく、片桐にまで難癖をつけられてしまった。


「紫苑様、くれぐれも気を付けてください。おそらく紫苑様を誘惑してくるでしょうから」

「そんな子には見えないんだけど……」

「いいえ、わかりません。もしかしたら、凄く野心家かもしれません」

「……わかった。気を付けるよ」


 ◎


 さらに、紫苑は千冬にも相談した。


「なんですって! 伊達家の御令嬢が!?」


 さすがの姉さんもいつもの余裕がない。


「はい。俺に接触してきました」

「まさか、美人?」

「ええ、まぁ」

「ちょっと! なにデレデレしてるの!」

「してません!」


 これで3人目だ。勘弁してほしい。デレデレなどしてない。多分。


「これは危険ね。叔母様には私から伝えておくわ。あなたも色香に惑わされないようにね!」

「……はい、気を付けます」



「紫苑様、千冬お嬢様は何と?」

「片桐と大体同じようなことを言ってた」

「やはりそうですか」

「やはりって……」

「ところで紫苑様、一緒に寝ましょう?」

「は!?」

「紫苑様が伊達凛花さんに惑わされないように、私ができるだけ紫苑様のお側にいます」

「いやいや、いいから。俺は大丈夫だから」

「いえ、私にできることはこれくらいです。私にしてほしいことがあったら何でもおっしゃってください」

「あ、ありがとう。でも、本当に大丈夫だから」

「……私は不安です。紫苑様が誘惑されて、

取られてしまうのが」

「俺はそんなに信用されてないのか……」

「違います! 紫苑様のことは誰より信用してます! ですが……」


 片桐は本気で心配しているようだ。


「……わかった。今日は一緒に寝ようか」


 こうして、紫苑と片桐は一緒に眠りについた。


〜続く〜


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