第1話
組織についてです。
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九条家の当主、九条真美の表向きの顔は大株主。
では、裏は?
そのことについて、一般の人々が問うことはない。
そもそも裏があることすら知らないのだ。一部を除いて。
彼女は資産家として、その分野では広く知られた顔だが、それも単なる表向きの顔にすぎない。
では、九条グループという組織は何なのか。
この組織は、厳密に言えば存在していない。政界にも企業界にも一般社会にも、その存在を知る者はほとんどいない。
なぜなら、九条グループに属する人間しか知らないからだ。
九条家は古くから由緒ある家だった。政治に携わり、国の中心部を担っていたとされている。
だが、200年ほど前、突然九条家は政界から退いた。詳しい理由を知る者はいない。
それでも、九条家の影響力は強かった。
ここ数十年では莫大な資産を糧に、投資や起業に乗り出していた。
そこには当然、九条家以外の家も関わっていた。主な例として、鷹司家や一条家がそれだ。
これらの家は昔から九条家と交流があったり、分家であったりする。
これらの家は九条家の役割の一翼を担う。例えば、紫苑が代表である武闘派というものは、九条家の裏実行部隊だ。
多くの家は、九条家の息のかかる会社の役員などだ。
また、一旦は政界から退いたものの、再び政界との接触があるとの噂もある。
このように、九条グループのもとにある家はそれぞれ表の顔がある。各家の当主は会社役員だったり公務員だったり……と様々だが、彼らの目的は九条グループの繁栄にある。
九条グループが繁栄することにより、そこに属する各家も繁栄するのだ。
それゆえ、紫苑を始めとする各家の当主たちは組織の繁栄に尽力する。
だが、それだけではない。
九条グループの力を大きくすることにより、各当主たちもいろいろと動きやすいのだ。
だが、必ずしも九条グループに尽くさなければならないわけではない。例えば、紫苑が九条グループから脱退してもいいのだ。その場合、紫苑は一般の人々と同じように生活をすることができる。組織のことを考えなくてよいのだ。
しかし、そうする者はいない。なぜなら、九条グループのもとにいる方が安泰だからだ。仕事もお金も貰える。
いわば、九条グループという会社に当主たちが雇われているようなものだ。
そうして、各当主たちはこぞって組織の繁栄を求め、尽力する。中には、内部抗争があったこともある。
このような仕組みで九条グループが成り立っていることを一般人は知らない。
知っているのは、九条グループの人間だけ。
そして、幸運にもその主要家に生まれた紫苑や千冬、片桐などは普通とは異なった生活を強いられるのである。
〜続く〜