第4話
現在紫苑は玄関で片桐の怒りに触れていた。滅多に怒らない片桐が、怒ると怖い。
「紫苑様はご自分の非をおわかりにならないのですか」
冷たい視線と共に紫苑にぶつけてくる。
「えっと……遅くなったことか?」
「違います。紫苑様は高校生です。帰りが遅くなることもあるでしょう」
「じゃあ……あ!」
紫苑はようやく気が付いた。
自分のスマホを見る。
メール18件。着信4件。
全て片桐からだ。
紫苑は片桐への連絡を忘れてしまったのだ。
「ご、ごめん! 気がつかなかったんだ」
「私の連絡に気がつかなかったくらい何をしていらしたのですか?」
片桐の言葉がトゲトゲしてる。
「友達の買い物に付き合ってた」
「女性ですか?」
「……うん」
ピシッと空気が張り詰めたような気がした。
「そうですか。さぞかし楽しかったでしょう」
グサッと紫苑の心に刺さる。
「い、いや本当にごめん」
片桐は、プイッとリビングに行ってしまった。
リビングには二人分の夕食があった。
「……片桐まだ食べてなかったのか」
「夕食はもう冷めてしまいましたよ」
紫苑をこの上ない罪悪感が襲う。
「……温め直します」
食事中は気まずかった。
紫苑も「いつも通り美味しい」と言っても、「ありがとうございます。ですか、作りたてのを食べて頂きたかったです」と棘のある返事を返してきた。
◆◇◆◇◆
その後、紫苑は何度か片桐の機嫌をとろうとしたがダメだった。そのうち、片桐は「今日は疲れたのでもう休みます」と言って部屋に行ってしまった。
どうして、片桐への連絡を忘れてしまったのか。
どうして、片桐の連絡に気付けなかったのか。
紫苑は後悔に苛まれる。
だが、片桐とこのまま微妙な関係が続くのは避けたかった。
紫苑は思いきって、片桐の部屋に行くことを決意した。
紫苑はコンコンと遠慮がちにドアを叩く。
「片桐? もう寝ちゃった? 話がしたい」
それから数十秒。何の返事もなかった。
紫苑は諦めて、自分の部屋に行こうとしたとき
「お入りください」
と小さいが透き通る声が聞こえた。
紫苑は勇気を出して入る。別にこれまで何回も片桐の部屋にお邪魔した。だが、こんな夜遅くにこんな状況で入るのは初めてだ。
片桐は、ベッドに座っていた。薄手のネグリジェの上にガウンを羽織っている。前が開いており、かなり艶かしい。
「紫苑様、何ですか?」
拗ねた声で言う。
「今回のことは本当にすまないと思っている。でも、片桐とこのまま微妙な感じなのは嫌だ」
紫苑は、素直に思いを口にした。
「紫苑様、私がどれだけ心配したかおわかりですか?」
「ああ、すまない」
「紫苑様、私は紫苑様に干渉し過ぎでしょうか? 私を煩わしく思っておりませんか?」
「そんなことはない! 一度もそんなことを思ったことはない」
「そうですか。よかったです」
片桐がニッコリと微笑んだ。
よかった。許してくれたようだ。
「ですが、放課後に女性とデートですか」
あれ? 許してくれてない?
「私より、他の女性を優先させたのですね」
「いや、違うぞ」
「別に私は紫苑様が誰といようとも気にしませんけど」
ツンっとしてそっぽを向いてしまう。
「片桐? ただの友達だよ」
愛梨は片桐を当然知らない。それと同様、片桐も愛梨のことは知らないはずだ。
「……」
片桐は紫苑の言葉を無視する。
「片桐、どうしたら許してくれる?」
「……」
「何でもするから」
ピクっ
「……何でもですか?」
あ……失敗したかも。
「……まぁ俺に出来ることなら」
「……では、今週末私とデートしてください」
……今週末か。愛梨とも約束している。土日に分ければ可能だが。
「紫苑様? ダメですか?」
片桐は上目遣いで迫ってくる。破壊力抜群だ。
「い、いや大丈夫だ」
「そうですか! それと〜」
「まだあるの⁉︎」
「当然です」
やはり簡単には許してくれない。
「……あとは何をすれば?」
「……その……今夜はずっと一緒に……いてください……」
は?
〜続く〜




