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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
第1章 組織加入編
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第1話

早く投稿出来そうだったので、投稿しました!



「それでは、今年度の役職を発表します」


 各家の当主たちは、それほど緊張した様子ではない。なぜなら、昨年度と同じ役職になるのがほとんどだからだ。役職を変えたところで、組織の利益にはならない。

 紫苑は、自分が何番目に呼ばれるかドキドキしていた。組織の中の序列が上の方から呼ばれていく。新米ならおそらくかなり下の方だろう。紫苑は、そう思っていた。


「九条グループ代表、九条家現当主、九条真美様。代表補佐は私、鷹司家現当主、鷹司千冬」


 紫苑は、かなり驚いた。代表が叔母上なのは当然だが、姉さんがNo.2の代表補佐とはびっくりだ。

 容姿端麗、文武両道な姉さんが組織内でも活躍していたことは知っていたが、ここまでとはーー少し癪だが見直した。組織の人事を担当していたことも頷ける。


 だが、次の瞬間この場が凍りつく。


「武闘派代表、一条家次期当主、一条紫苑」


 はい?今なんと?

 紫苑は、何が起きたのかわからない状態だ。周りの当主たちも、唖然としている。会場内が騒めく。その間も、千冬は淡々と発表を続ける。

 数十秒後、ようやく誰かが声を上げた。


「千冬お嬢様、お待ちください」


 声を上げたのは、昨年度武闘派代表の澤登家現当主、澤登純一だった。55歳の彼は、落ち着いた雰囲気で貫禄がある。さすが組織のNo.3にいた男だ。だが、若干声に焦りがあるだろうか。


「純一さん、どうしましたか?まだ発表の途中です」


 姉さんは、年上相手に凛とした声で応える。


「ご無礼お許しください。ですが、武闘派代表に一条君を任命されるのは、どのようなお考えなのでしょうか」


 これは紫苑自身も知りたいことだ。いきなり組織のNo.3になるなど聞いたことがない。


「それについては、後でお話しします」


 千冬は、見えない圧力のある口調で言った。

その後も、発表は続いた。その間紫苑には、おびただしい殺気が注がれていた。紫苑のところを除けば、役職に大きな変化はなかったようだ。


「先ほど質問がありましたが、今年度は一条紫苑に武闘派代表を任せたいと思います。これは、次世代のグループを担う若手の育成のためです」


 分からなくもないが、いきなり自分を武闘派代表にするのはどうかと思う、と紫苑は思った。この決定は非常に危険だ。組織の内部分裂を引き起こすかもしれない。

 反対派は、澤登県だけではないようだ。 反対派の人間が異議を唱える。


「ですが、いきなり代表はかなり厳しいでしょう。澤登殿を代表に、その下で経験を積んでからの方が良いのでは?」


 反対派の提案に頷く者、表情を変えない者、様々だ。だが、千冬ははっきりと応えた。


「これは決定事項です。九条真美様もご了承しております。異論は認めません」


 強い口調で言われ、各当主たちは何も言えなくなってしまった。

 美人の姉さんが言うと迫力あるな〜と呑気なことを考えている時ではない。紫苑自らもこれには賛同出来ない。いきなり自分には重過ぎる役職だ。丁重にお断りしようと思ったが、


「紫苑、貴方なら立派にやりとげられますね?」


 千冬に先手を打たれた。美しい微笑を浮かべているが、プレッシャーが半端ではない。間違いなく「はい」以外の答えは無い。紫苑は、固まり千冬から目をそらすことが出来なかった。いつもは、優しい姉さんなのに時々怖い。


「は、はい」


 声が完全に上ずってしまっていただろう。


「よろしい。では頑張ってくださいね」


 いつもの優しい笑顔で、言った。それにつられ、紫苑もぎこちない笑みを浮かべたに違いない。

 問題はこれからだ。先ほどよりさらに増した殺気が、紫苑を貫く。澤登純一は他の役職を与えられたが、降格したのは間違いない。きっと、紫苑たちを憎んでいるだろう。

 紫苑は、未来に不安を覚えた。それよりまず、姉さんを捕まえて尋問しようと心に決めたのだった。

 紫苑は式が終わり、会場を後にしようとしてそれこそ沢山の嫌味もどきを言われた。各当主たちからは、一条殿と呼ばれるようになった。


◆◇◆◇◆


「はぁ……」


 思わずため息が出る。そこに問題の原因を作った人が現れた。


「紫苑、何ため息なんかついてるのよ」

「姉さん、一体誰のせいでしょうか?」

「いいじゃない。組織のNo.3よ?嬉しくないの?」

「嬉しいわけないでしょう。寿命が縮みました」

「大丈夫よ。貴方ならできるわ。お姉ちゃん、信じてるからね」


 太陽のように屈託のない笑顔で言われるとドキッとするからやめてほしいです。


「あ、でももしピンチになったらお姉ちゃんを頼ってね!」

「もちろんです」


 笑顔で紫苑も応える。本当に優しい人だ。こんなに良い姉のような存在が身近にいて幸せだと感じながら、質問した。


「俺を武闘派代表にした本当の理由は何ですか?」


 若手育成のためなどというのは、建前だとわかっている。幼馴染の勘を舐めちゃいけません。


「あら?バレてた?」

「もちろんです」

「知りたい?」

「はい」


 当然、正当な理由がなければ到底受け入れられないことだ。


「そうね〜強いて言うなら、面白そうだったから?」

「は?」

「あと、No.3だからお姉ちゃんの側で仕事できるよ!」


 え?それが理由?

 面白そうだったのと、俺を側に置きたかったから?

 この義姉は……少しお説教が必要みたいです。

 姉さんを睨みつけていると姉さんが、慌てた様子で口を開いた。


「ほら、もう決まっちゃったことだし?どうにもならないから、そんな怖い顔しないで〜」

「姉さん、今日はお説教です」


 紫苑は、低く冷たい声で言った。


「え〜許してよ〜」


 涙目になりながら、許しを請う。普段大人っぽい姉さんが、可愛く見えたのでゆるしてしまいそうになるが、今回はそうはいかない。今宵の夜は長くなりそうです。


〜続く〜


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!組織加入早々に問題発生です。その他の役職や、幹部たちも追々出てくる予定ですので、お楽しみに。

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